言論NPO、第5回日中共同世論調査の結果を公表  「日本人と中国人は、お互いをどう認識しているのか

2009年8月26日

 言論NPO(代表 工藤泰志)と中国4大メディアのひとつである中国日報社は、日中共同の世論調査を実施し、調査結果の内容を26日北京で公表しました。この調査は、日中両 国民の相互理解や相互認識を継続的に把握することを目的に、2005年より実施しているもので、今年で第5回目となります。

 調査では、両国民ともに相手国に対して未だにマイナスの印象を持っている人の割合が多く、半数の中国人が日本を未だに「軍国主義」と見るなど、お 互いの国に関する基本的な理解も不足していることが明らかになりました。ただ、両国民ともに直接的な交流はごく少なく、それぞれの認識を自国のメディア情 報に依存しているという構造は変わっていません。

 また、今後の日中関係に関しては両国民ともに楽観的な見方が多いものの、日米関係と米中関係との比較では両国民ともに「どちらも重要」との判断が 多く、近年の首脳会談については「具体的な成果がなく評価ができない」とする見方がそれぞれ4割程度あります。一方、経済発展に関しては、将来は中国が 「米国と並ぶ大国になり、影響力を競い合う」または「米国を追い抜く」と見ている人が両国でそれぞれ5割を超えており、日本ではこうした中国の経済発展を 「日本にとってもメリットであり必要」だと考える人が増えていることもわかりました。この調査結果は、言論NPOと中国日報社が今年11月以降に開催する 「第5回 北京‐東京フォーラム」での議論に反映されることになっています。

第5回 日中共同世論調査結果

お互いの国に対するイメージは改善せず

 相手国への印象を尋ねたところ、中国に対する印象が「どちらかといえば良くない」「良くない」と答えた日本人の割合は合わせて73.2%となり、 依然として7割を超えています。また、印象が良くない理由としては、81.0%の人が「食品の安全の問題などで見られた中国政府の対応に疑問があるから」 と答えています。一方、日本に対する印象が「どちらかといえば良くない」「良くない」と答えた人の割合は合わせて65.2%と、6割を超えています。その 理由としては「過去に戦争をしたことがあるから」を挙げた人が73.2%にのぼりました。

日中は依然、近くて遠い国―両国民の認識は自国のメディア報道に依存

 今回の調査でも、これまでの4回の調査と同様、両国民間での直接交流が極めて少なく、相手国に対する認識のほとんどは自国のニュースメディアから の情報に依存していることがわかりました。相手国への訪問経験がある人は日本人では14.5%、中国人ではわずか0.9%でした。相手国に関する情報源 は、日本人の92.5%、中国人の93.0%が「自国のニュースメディア」であると回答しています。

日本に対する認識は「軍国主義」

 中国で支配的な政治・社会思想に関し、日本人の認識として最も多いのは「社会主義・共産主義」(73.8%)ですが、中国人の48.2%が日本を「軍国主義」と見ています。

中国経済の先行きについては「米国と並んで影響力を競い合う」との認識が多い

 今回新たに設けた「2050年の中国経済をどう予測するか」との設問に対して、日本人の40.3%、中国人の52.7%が「経済成長を続け、米国 と並ぶ大国となって影響力を競い合う」と答えました。また「経済・金融危機後の世界で影響力を強める国」として、日本人の46.0%、中国人の実に 83.1%が「中国」を挙げています。
 調査結果の詳細については、こちらをご覧ください。

 

日中共同世論調査とは

 2005年の8月、言論NPOは、反日デモ直後の北京で両国の有識者が本音で議論を行う「北京-東京フォーラム」を立ち上げました。その際、私た ちが何度も中国側と交渉を重ね実現したのが、この共同世論調査です。世論調査の実現にこだわったのは、両国が最も深刻な時期での両国民の認識を明らかにし たかっただけではなく、この対話を両国民の意識を反映させながら進めることで、相互理解をより深めたいと考えたからです。

 

2009年調査概要

 
日本世論調査
中国世論調査
調査地域 日本全国 北京、上海、成都、瀋陽、西安の5都市
調査対象 18歳以上(高校生除く)の男女 18歳以上で当該都市に一年以上居住している男女
抽出方法 日本全国で50地点。1地点の標本数は20。性・年代別の回収構成比が、平成17年国勢調査の日本全国の構成比にあうように割り当てる 多層式無作為抽出方法 (メディア・広告関係者除く)
調査方法 訪問留置回収法: 1000有効回収標本 調査員による面接聴取法: 1589標本(5都市合計)
調査期間 5月19日から6月17日 6月10日から6月30日

 
日本有識者調査
中国学生調査
調査対象 言論NPOの活動にこれまで参加していただいた全国の有識者2000人 北京大学、清華大学、中国人民大学、国際関係学院、外交学院の学生
有効標本 500標本 1008標本
調査期間 5月中旬から6月中旬 6月上旬から下旬

 

「東京-北京フォーラム」とは

 本フォーラムは、2005年夏、反日デモ直後の北京で、非営利組織である言論NPO、中国4大メディアの一つ中国日報社及び北京大学が共同で立ち 上げました。フォーラムは、日中間で毎年行われる共同世論調査を軸に、両国民の意識を取り入れ、日中間の課題に正面から向き合い、本音で対話する議論の舞 台を民間で作り出すことを目的にしています。中国ではこれを「公共外交」の舞台とし、国務院新聞弁公室や対外友好協会が全面的にバックアップしています。 これは民間対話の舞台としての役割だけでなく、政府関係者なども加わり、共通の課題解決のために討議する場という意味でもあり、トラック1.5と位置付け られています。参加者は両国の有識者、政治家、メディア関係者など各界を代表するオピニオンリーダーです。


【認定特定非営利活動法人言論NPO概要】
所在地:〒103-0013 東京都中央区日本橋人形町3-7-6 LAUNCH日本橋人形町ビル5階
設立:2001年11月
代表者:工藤泰志

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担当:宮浦