米外交問題評議会(CFR)主催の政策懇話会で討議

2012年3月15日

 ワシントン滞在3日目となる3月14日夕方、代表の工藤は米外交問題評議会(CFR)主催の政策懇話会にパネリストとして出席。日米関係の現状、中国との対話、日本の政治状況などについて熱弁をふるいました。

 この懇話会は、CFRが会員向けに定期的に開催しているもので、毎回内外の著名な人物を講師に招き、時事の話題について意見交換をする場となっています。


 今回のテーマは、「米国は世界でどのように見られているのか」で、パネリストには工藤の他にロシアの現代開発問題研究所イゴール・ユーゲンス会長、フランスの国際関係研究所のティエリー・ド・モンブリアル所長が登壇。米ドイツ問題協議会のウイリアム・ドロジャーク会長が司会役で討議が進められました。

 予想通り、ロシアとフランスのパネリストは喫緊の国際問題であるイラン核開発問題、シリア問題、対米世論動向の推移、さらには台頭する中国とどのような関係を構築するべきか、というテーマに関心が寄せられました。

 討論の冒頭、現在の日米関係をどう見ているか、という司会者の問いかけに工藤は「中国重視、日本軽視である」と強い口調で答える一方で、1年前の東日本大震災の折、米国が在日米兵を2万人以上被災地の救援活動に動員した事実にも言及。「日本国民の8割以上が米国を真の同盟国と高く評価している」とも付け加えました。
 この中で工藤は、民主党政権になって2年半も日本の首相の米国への公式訪問がないことを指摘し、日本と米国の間に政府だけでなく民間レベルの対話の空白があるとし、「米国のアジア重視の軍事展開の変更が進む中で、こうした対話の不足は問題であり、同盟関係の国民レベルの理解にも影響を与えかねない」と論じました。

 会場では米国務省、商務省、国防総省の幹部クラスを含む米政界、官界の有力者40名以上が熱心に議論に聞き入っていましたが、工藤の発言を受けて会場からは、「普天間問題の展開」や「中国の脅威」に関する質問がなされました。

 日中関係について工藤は、8年前から言論NPOが取り組んできた民間のハイレベルな対話である「東京-北京フォーラム」の経緯を説明。当初は本音で真剣な議論ができないのではないかと危惧しました。「しかし対話を重ねる中で、それが杞憂であったことがわかった。中国とも共通の土壌で話し合えることを確信している」と強調しました。

 その一例として、昨年の対話で尖閣列島に関する新華社の一方的な報道に対し、中国の多くのメディアが公然と批判するという展開があったことに触れ、体制の維持よりも住民の命が大切、という考え方が中国メディアにも芽生えてきていると指摘。「中国にも変化が起きてきている」と強調しました。

 そうした観点から、「日中よりも、対話のチャネルが細っている日米関係のほうが心配」と工藤は語りました。

 沖縄の普天間問題については、民主党政権に変わって鳩山首相が、16年間にわたり日米両国が積み重ねてきた普天間基地移転問題に関する合意を反故にしたことは「恥かしいことだった」と指摘。沖縄の基地問題に対する国民感情は否定できないが、米国のアジアの軍事転換そのものの議論よりも、在日米軍のグアム移転経費の日本側肩代わりを連日のように大きく報道する日本のマスコミの姿勢にも工藤は疑問を投げかけました。また工藤は、日本のオピニオン・リーダーの中には、ことの本質についてきちんと判断している人が少なからずいるとも語りました。

 ロシアの大統領選結果やフランスの総選挙、米大統領選の話題が関心を集めているワシントンだが、工藤は日本でも年内に総選挙が行われる可能性があることに触れ、「いま日本の政治でも大きな変化が起きつつある。その変化に期待していて欲しい」と述べて、この夜の懇話会での発言を結びました。