有識者217人が読む2016年の世界の課題

2016年1月09日

総論
 言論NPOは、2016年、地球規模的な課題に挑む議論を本格的に開始します。それに伴い、日本の有識者が地球規模課題の現状をどう考えているのか明らかにし、議論づくりに役立てるため、年頭に公表した有識者アンケート「2016年の日本を考える」の中で、地球規模課題に関する質問を設けました。  調査の結果、2016年、解決に向けた優先度が特に高い課題としては「国際テロ対策」を挙げた有識者が最も多く、また、2016年、解決に向けて具体的な進展が期待できる課題については、3割を超える有識者が「どの課題も困難だ」と考えていることが明らかになりました。


調査の概要

 今回の調査は、言論NPOの活動にこれまで参加していただいた全国の有識者約5200人を対象に、2015年12月26日から12月29日までの期間でメールの送付によって行われ、ご回答いただいた217人分のアンケート結果を集計し、分析しました。
 回答者の属性は、以下の通りとなっています。


2016年、解決の優先度が高い課題は「テロ対策」が過半数を超える

 世界が直面する課題10項目の中で、「2016年、特に解決に向けた優先度が高いもの」を2つまで選んでもらったところ、最も多かった回答は「国際テロ対策」で62.8%、2番目に「気候変動抑止及び気候変動による変化への適応」が36.9%で続きました。それぞれ、フランスの同時多発テロと、COP21におけるパリ協定の採択という、昨年の終わりにかけて大きな動きがあった課題が上位を占める結果となりました。

 この2項目に加え、「国際的暴力紛争の防止と対応」(27.7%)と「国際経済システムの管理」(23.5%)という4つの課題について、2割を超える有識者が、2016年、解決への優先度が高いと見ていることが明らかになりました。


3割以上の有識者が、2016年は「どの課題も解決への進展は困難」と認識

 「2016年、解決に向けて具体的な進展が期待できる世界的な課題」を1つだけ、「解決に向けた優先度」の設問と同じ10項目の中から選んでもらったところ、最も多かったのは「どの課題も困難だ」という回答で31.3%を占め、3割を超える有識者が、2016年において、地球規模課題の解決に総じて厳しい見通しを持っていることが分かりました。

 以下、「解決に向けた優先度」で上位を占めた「気候変動抑止及び気候変動による変化への適応」(15.2%)と「国際テロ対策」(14.8%)を挙げる有識者が多いという結果となりました。


Q: あなたが2016年、世界が直面する課題の中で、特に解決に向けた優先度が高いものは何だと思いますか。あなたの考えに最も近いものを【2つまで】選んでください。

「その他」の回答

パワーゲーム解消へ努力する(男性、60代、学者・研究者)
国際金融秩序の確立と国際間のマネーフローの明確化(男性、60代、NPO・NGO関係者)
新自由主義による行きすぎた貧富の格差解消(男性、50代、メディア関係者)
拡大する難民問題(男性、50代、NPO・NGO関係者)
中国経済のバランスシート不況(男性、30代、学者・研究者)
難民問題(男性、50代、各団体関係者)
原発を使わないエネルギー源の実用化(男性、70代、NPO・NGO関係者)
国際法秩序の回復(男性、60代、学者・研究者)
中露の封じ込め(男性、60代、企業経営者・幹部)
若年雇用問題の解決。これがテロの原因の一つでもあると思う。(男性、20代、国家公務員)
イスラム圏の安定(紛争対策から和平を齎す対策への変換)(女性、60代、自営業)
エネルギー問題(海水の水素化)と生活習慣病の抑制、貧困問題(男性、50代、メディア関係者)
国際社会の課題に対応する新たな枠組みの構築
上記にある「国際開発」は、2030年亜アジェンダを受けると「国際持続可能な開発」とすべきでしょう。(男性、40代、学者・研究者)
国際法秩序に基づく国家間紛争の解決(男性、50代、地方議員)
中国問題(男性、60代、企業経営者・幹部)
米中の協力体制の確立、米中共に謙虚になること。(男性、70代、学者・研究者)


 今後、言論NPOでは、地球規模的な課題に関しての議論を定期的に行っていきます。
 昨年行った地球規模的な課題に関する議論は下記からご覧ください。

⇒世界的な課題に対する日本の発信力はなぜ弱いのか
⇒現在の日本に地球規模課題の解決力があるのか