世界の課題に挑む

「東京会議」で岸田大臣が特別講演
~外交政策のキーワードは「バランス」~

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 「東京会議」公開フォーラムの第2セッション終了後、2日間にわたる議論の成果として、日本政府および2017年のG7議長国であるイタリア政府に提出する「イタリアでのG7首脳会議に向けた緊急メッセージ」を発表し、言論NPO代表の工藤泰志より岸田文雄外務大臣に手渡しました。

 これを受けて特別講演を行った岸田大臣は、東京会議の取り組みに敬意を表した上で、会議のテーマとなった自由や民主主義、自由経済、法の支配といった基本的な価値観について「不透明な国際社会における羅針盤」と表現し、こうした価値を共有する国々の集まりであるG7の連携を日本がリードしていくことへの決意を語りました。

グローバル化の負の側面に真剣に対処することが必要

MHI_5064.jpg 岸田大臣はまず、自由や民主主義、自由貿易、法の支配といった基本的な価値に基づく国際協力体制が、戦前の保護主義が世界恐慌を背景として台頭し、二度の世界大戦を防げなかったことの反省から生まれたという経緯に言及。そして、先進国での反グローバリズム、保護主義、ポピュリズムや大国による一方的な現状変更の動きがどうあっても、「こうした価値観が揺らぐことはない。グローバル化への逆行や保護主義が新たな原則になるとは考えられない」と主張しました。

 こうした価値観を大事にしていくためにも、格差の問題などグローバル化経済における負の側面に真剣に対処することが必要だと強調し、各国における社会保障や教育の整備に加え、国際社会でも持続可能な開発目標(SDGs)をはじめとする様々な議論や取り組みが重要だと訴えました。


外交における羅針盤は「自由、民主主義、法の支配」

 続いて岸田大臣は、こうした大局的な認識に基づき、「アジアにおいては北朝鮮の核実験、ミサイルの脅威が新たな段階になっており、東シナ海、南シナ海では国際法に基づかない一方的な現状変更が見られる。2017年はアメリカでは新政権がスタートし、フランス、韓国、イランで大統領選、オランダ、ドイツで国政選挙が行われ、また中国においても5年に1度の共産党大会が予定されている」と国際情勢の様々な動きに言及。これらと合わせて、例えばトランプ政権とロシアとの関係いかんで中東情勢が、トランプ政権と中国との関係いかんでは、アジアの安全保障環境が大きく変化する可能性を指摘し、「今年、国際社会は変化の可能性を秘めた1年といえる」との認識を示しました。

 そして、岸田大臣は「不透明な時代だからこそ、外交政策における羅針盤が必要だ。この基本的な羅針盤が、自由や民主主義、自由貿易、法の支配といった基本的な価値観」と主張。同時に、「具体的な課題についてはしっかりとした舵取りを行っていかなければいけない」として、そのキーワードとして「バランス」を挙げました。具体的には以下の通り。

「国民の生命を守るための安全保障の取り組みと政治対話、外交努力とのバランス」
「自国の国益の最大化とグローバル課題への取り組みとのバランス」
「短期的な雇用・経済の取り組みと世界経済に対する中長期的な取り組みとのバランス」「『地球儀を俯瞰する外交』における各地域間のバランス」

 そして「不透明な時代であるからこそ、バランスの取れた外交を進め、しっかりとした舵取りをしていかなければいけない」と,決意を表明しました。


政治が安定している日本がG7をリードしていく

 次に、岸田大臣は、こうした考えで外交を進めるにあたっての三つの重点に言及しました。

 まず日米関係について、岸田大臣は「日米同盟は日本外交の基軸であり、日米は自由や民主主義、法の支配といった基本的な価値、戦略的利益を共有する同盟国同士だ。また、アジア太平洋地域の安定は日米共通の利益でもある」と発言しました。さらに、新ガイドライン(日米防衛協力のための指針)および平和安全法制による抑止力、対処力の強化といった最近の日米同盟強化の取り組みを説明。そして、「2月の日米首脳会談では、日米同盟は揺るぎないことを内外に示すことができ、トランプ政権下での日米同盟について様々な不安の声が上がっている中で、今回の首脳会談は良いスタートを切ることができた。これを基礎としながら、米国のこれからの政策過程において日本の考えをよく説明し、理解してもらうよう努力しなければいけない」とし、地域や国際社会に対する米国のコミットメントやリーダーシップが米国の利益にもつながることを説明していく考えを示しました。
 
 次に、自由貿易について岸田大臣は「世界で反グローバル化、保護主義が強まる中でますます経済外交が重要であり、その基盤は自由貿易だ」と述べました。また2月の日米首脳でも、自由で公正な通商の必要性では一致しているとして、アメリカのTPP離脱表明後も日本の求心力を活かして加盟各国の理解を維持し、早期の大枠合意を目指す姿勢を説明。「自由貿易の旗を、日本は引き続きしっかり振り続けていきたい」との決意を明らかにしました。

 三点目に、岸田大臣はG7の対話の枠組みについて、「自由や民主主義といった共通の価値に基づいて築かれたグローバルな枠組みが危機に直面している。G7は、こうした基本的な価値を共有する国の集まりと考えるとより大きな意義がある」と語りました。そして、G7の外相の中で岸田大臣が最古参となることに触れ、日本の政治が主要国の中で最も安定していると言われる中、安定勢力としてG7をリードしていく覚悟を示しました。

MHI_5042.jpg そして、岸田大臣は、世界が激動する中で思考停止は許されず、また各国間の違いが強調されるあまり対話が閉ざされることを恐れている、と述べました。そして、「不透明な時代 だからこそ、自由、民主主義、自由経済、法の支配という基本的な価値を羅針盤としながら様々な努力や対話を進めていく」と繰り返し、今後の外交の取り組みへの意気込みを語りました。そして、「世界から主要な10のシンクタンクが集まり、世界に対してしっかり発言していくことの重みは増している」と、東京会議の意義を強調し、特別講演を締めくくりました。

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