世界の課題に挑む

【座談会】アメリカ、ドイツ、中国、インドネシア4カ国、有識者約100氏との対話を振り返って
―言論NPOのミッションへの共感と対話の基盤ができた1カ月間の旅-

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IMG_9131.jpg参加者:
西村友穂 言論NPO国際部長
佐藤文  言論NPO国際部次長
司会:
工藤泰志 言論NPO代表

 4月半ばから、中国、ドイツ、インドネシア、アメリカの4カ国、約1カ月にわたった海外訪問も最後の日を迎えました。代表工藤の4カ国訪問を支えてきた国際部長の西村友穂と、次長の佐藤文が、今回の旅を振り返りました。2人に共通していたのは、15年前に掲げた「民主主義を強くする」という言論NPOのミッションに、世界各国のシンクタンクが共感し、問題意識や志を同じくし、連携できる基盤ができ始めているということでした。


問題意識や志を共有する人たちと出会えたアメリカ訪問

kudo.jpg工藤:皆さん、お疲れ様でした。今回は、北京、ベルリン、ジャカルタ、ワシントン、ニューヨークと1カ月にわたり4カ国を訪問し、多くの人たちと議論をしました。数えてみるとその数も100人に迫る強行軍でした。最後のアメリカは2週間という滞在期間でしたが、この間、毎日、毎晩、議論し続けました。

 我々は日米関係の対話の準備をしたいという狙いがあったのですが、その手応えはどのように感じていますか。まず、部長の西村さんからお願いします。

IMG_9131.jpg西村:今回の訪米で私は2つの意味で、有意義な成果を残すことができたと思っています。まず1つは、問題意識や志を共有するような財団やシンクタンクの方々と会うことができ、かつ、具体的なプロジェクトの今後の進め方についても話をすることができたことです。

 2つ目は、100日を過ぎたトランプ政権、それから日本でも大きな問題となっている北朝鮮の核ミサイル問題など、多岐にわたる分野において、専門家の方々と意見交換をすることができて、生の声を聞くことができたことは、大きな成果だと思っています。

IMG_9132.jpg佐藤:今回の訪米で感じたことは、言論NPOがいろいろな形でアメリカの人たちとコミュニケーションを継続してきている中で、アメリカの人たちが、どんどん言論NPOの方に近づいてきているということでした。特にトランプ政権の問題が大きく、シンクタンクが一般の人にどうリーチすべきなのか、民主主義について凄く悩んでいる中で、日本の民主主義や市民社会を強くすることをミッションに掲げて活動してきた言論NPOとの協力の可能性が広まってきているという感じを受けました。

工藤:今、西村さんも佐藤さんも同じことに言及されました。我々はこれまでにも何回もアメリカを訪れました。これまでは、言論NPOや事業の説明をして意見交換をするという形だったのですが、今回は確かに、間違いなく状況が異なっていました。

 西村さんは「志を共有している」と表現していましたが、至る所で真剣な議論になりました。そうした議論の中で、本気で、民主主義や平和の課題を言論NPOと一緒にやりたいという話が出てきました。しかも滞在中はトランプ政権の問題が連日話題となり、それに対する様々な対応が始まっていました。その中で、いろんな機関と連日話し合ったのですが、我々の活動に対する連携という点で、大きな変化があったと感じました。

 西村さんが特に印象に残っている点はどこにありますか。


アメリカのシンクタンクが民主主義における自身の役割を考え直し始めた

西村:印象に残ることは沢山あったのですが、1つ感じたのは、シンクタンク自身が、民主主義における自分たちの役割を考え直さなければいけない、と考えているということでした。先ほど、佐藤さんがおっしゃったように、なぜ発信を強化しているかというと、やはり市民に対して向き合わない限りは、民主主義の仕組みの中で、シンクタンクが何も役割を果たすことができないということを、アメリカのシンクタンクが感じ始めたということだと思います。

 例えば、誰も読まないような分厚いレポートを書いたり、シンクタンクのコミュニティの中で意見交換をすることが仕事ではない、ということを段々考え始めてきたからだと思います。そういう意味で、言論NPOは今まで、いろいろな形で日本の市民社会、そしてアジアの市民とも対話を続けてきたことは、アメリカの方々に非常に大きなインパクトを与えたと思っています。

工藤:確かに、今、西村さんが指摘した通りだと思います。今回の訪米で民主主義関連の団体にも会いしたのですが、率直に言って、私はあまり期待していませんでした。アメリカは上から目線で、民主主義を上から促進するというような印象があったからです。そのため、今、起こっている大きな民主主義のチャレンジというものに、アメリカの人たちと連携をして何かできるのか、という疑問がありました。

 ただ、西村さんがぜひ会うべきだということだったので会ったのですが、話をしていると本気の議論になり、時間を忘れました。具体的にいうと、民主主義がグローバルレベルでかなり後退している、新興国だけではなく、それぞれの先進国自体でも民主主義というものが問われている時に、我々の活動そのものをどう見直せばいいのか、という本気の議論でした。

西村:その団体とは、元々、新興国や途上国に対して民主化支援をする団体だったのですが、先進国自身の民主主義が問われているということに気付き始めて、いろいろな対話を始めているということをおっしゃっていました。

 ですから、問題意識としては、言論NPOが今まで掲げていたことについて、いろいろな形でアメリカでも同じ問題意識を持っている人たちが出てきているのだと感じました。

工藤:今の西村さんの発言は、私にとっても腑に落ちるものでした。少なくとも15年前に、日本で「民主主義を強くする」ということをミッションに掲げて、言論NPOを立ち上げた時には、ほとんどの人は「何だろう、この運動は」と思った人が多かったと思います。しかし、それに対して、今、的確に理解をして、一緒にやりたいという人が出てきたことは、非常に大きな驚きです。逆に言えば、民主主義はそれぐらい大きなチャレンジを、世界で受けているのだということも改めて感じたし、そうした危機感を持ち、頑張っている人が、アメリカにも多くいること、そしてその団体で日本人が活躍していたことにも驚きました。そうした人たちとどのような形で連携ができるのか、私も楽しみになっています。

 佐藤さんはどうですか。

佐藤:昨夜の会食で、(政治家に選挙資金に制限なく流す)スーパーパックのことが議論になりました。工藤節もかなり激しかったのですが、そうした議論に、皆さんが真剣な顔をして議論をしている姿に驚きました。本当に危機感を持って、いろいろな人たちが、民主主義を考え、取り組んでいるのだということが印象に残りました。

工藤:今回、私たちにとっては初めての経験になるのですが、アジア系の人たちが集まって、若い政治家を育てたり、いろいろな支援をするようなパーティーに、みんなで参加しましたね。国歌が流れ、多くのスピーチがあり、非常な熱気に包まれ、映画のワンシーンのように感じました。皆さんはどうでしたか。


APAICSが主催するパーティーで感じた、アメリカの民主主義の底力

西村:正確に言うと、APAICSというアジア系アメリカ人の政治参画とか、政治登用の機会を増やすための団体が主催するファンドレイジングレセプションだったのです。

IMG_3020.jpg 私が感じたのは、アメリカがいろいろな形で分断する中でも、マイノリティであるアジア系アメリカ人、アフリカ系アメリカ人の声をどう政治に反映させるかという形で、いろいろな動きをしている若手のアジア系の方々にお会いすることができ、本当に感銘を受けました。その中でも、メインのキーノートスピーカーとして参加されていた、IMG_3019.jpg民主党上院議員のコリー・ブッカーさんが、今、アメリカがこういう状況にある中で、「不寛容ではいけない。これを乗り越える力が必要だ。アメリカというのは多様性の上にこの国は成り立っているのだ」ということを力強く熱弁を振るっていらっしゃった姿が印象的でした。

 アメリカではトランプの言動だけがスキャンダラスに注目されるのですが、いろいろな形でアメリカの民主主義の底力みたいな形で動きがでていることは、本当に感動的でした。

工藤:確かに、私もなぜか感動しました。演出のうまさということだけではなく、真剣だったからです。私と同じテーブルの隣にいた人は、来年の中間選挙で下院選挙に出るというアジア系の若者でしたが、貧困と医療についてずっと話し合いました。少しだけ、嬉しかったのは今、西村さんが言ったコリー・ブッカーさん、彼はこれからの民主党の大統領候補と目されている人物だということですが、丁度タクシーに乗り込むときに捕まえて、握手して話をしました。

 他にも、アメリカの多くの政治家の人たちとも話をし、日本のことを語りました。アジア・太平洋系の人たちが、政治家に十何人もいて、アメリカという多様性ある社会の中で政治に参加して、責任を持っていろいろと発言している。演説も感動的でした。

 日本の政治家と単純に比較するわけにはいきませんが、ミッションや使命感、それに対する説得力、そして政治の課題解決の力というものは、アメリカの社会の中にあるのだということを改めて実感しました。
佐藤さんは、パーティーにで参加してどうでしたか。

佐藤:私もこのようなパーティーには初めて参加したのですが、こうした形で、アジア・太平洋地域のコミュニティがあって、いろいろな形で政治に参画しようとしていることは印象に残りました。

 また、私はコリー・ブッカーさんの秘書の方とお話をする機会があったのですが、その方は地元で、いかにIMG_2954.jpgアジアの繋がりが大切かというアウトリーチの活動をされている方で、アジアとアメリカとの重要性、またはその中にいるアジア系の人たちが果たす役割というところについて、きちんと広報して、その中でいろいろな形で活動や交流の場を作っているということで、非常に印象に残りました。

工藤:最後の質問になります。今日、ようやく1カ月にもわたる海外とのネットワークづくりが終わりを迎えます。北京、ドイツを訪問し、その後のジャカルタでは、フィリピン、マレーシア、シンガポール、インドネシアの国の有識者やジャーナリストと民主主義の議論をしました。西村さんはジャカルタからこのアメリカに合流し、佐藤さんはドイツに一緒に行ってくれました。それぞれ20日を超える海外出張だったわけです。

 言論NPOが世界と議論しながら、平和、民主主義に取り組む。そのために1カ月間チャレンジしてきたわけですが、次に向けて、私たちが得たものは何だったのでしょうか。


今回得たネットワークを活用しながら、言論NPOの活動も更なる高みに

西村:まさに4カ国を回る旅を1カ月にわたって続けてきたわけですが、1年間かと思うくらい長い旅だったと感じています。民主主義や世界の国際秩序がどうかわるか、というような話を続けていたのですが、これから、言論NPOが対話をしていく基盤はできたという手応えは感じています。各地で、同じ問題意識や志を共有するような方々と会うことができて、今後とも一緒に仕事を続けていきたいと思っています。

 今、ワシントンでトランプと並んで話題になっているのが、北朝鮮の核問題です。この問題を話すときに、アメリカの方々から、あまり日本という国の話は出てきません。大国のディールというか、パワーゲームになっているのですが、一方で、私たちがやっている北東アジアの日中、日韓の対話については、非常にいろいろな方々が過去12年にわたって行ってきた実績を評価してくださいました。日本の国としては、北東アジアの平和づくりに向けたビジョンはあまり見えないのですが、その基盤となるところで動いている私たち言論NPOの活動については、各地でいろいろと注目を浴びていたと思います。

 私たちは、7月末に東京で「日韓未来対話」を行います。まさに、北東アジアの平和に向けて、私たちも取り組みを開始しますので、今後ともよろしくお願いします。

工藤:その後、8月には西村さんが責任者となる「アジア言論人会議」も控えています。この会議には、東南アジアの人たちを東京に集めることになっています。かなりお忙しくなりますが、ぜひ頑張ってほしいと思います。

 佐藤さん、どうですか。

佐藤:私はドイツとアメリカに同行させていただきました。その中で感じたことは、やはりシンクタンクが自分たちのあり方について悩んでいるということでした。自分たちの足元で、特にEUですが、民主主義がぐらついていて、その中で国内の秩序もそうですし、アメリカのトランプ政権の誕生によって、今まで通りのアメリカに頼るような国際秩序が保てない中では、ドイツも動いていけないということで、いろいろな新しいパートナーシップを模索している。そうした中で、日本という可能性を考えていることを凄く感じました。

 そういった意味で、インドのジョシさん(インドのオブザーバー研究財団所長)と話をした時に、アジアの民主主義だけではなく、ヨーロッパも含めて民主主義の対話をやってはどうかという話が出てきました。私たちにとってはチャレンジになると思いますが、世界中で危機感が共有されて、同じ土俵で対話をするという土台ができてきているということを感じました。

工藤:言論NPOが立ち上がった15年前には、民主主義を強くするというミッションに、多くの人たちに「何なんだ」と思われていたと思いますが、今や、我々がその責任を果たして、本気で動かなければいけない局面にきている。その可能性が広がっているということを実感した旅になりました。

 日本にこれから戻りますが、我々が得たことを基に、次の展開に向かって歩きたいと思っています。皆さん、本当にご苦労様でした。

西村、佐藤: ありがとうございました。

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言論NPOは、世界各国が共有するグローバルな課題の解決に向け、世界の主要シンクタンクによる国際会議に参加して議論を行っています。こうしたネットワークを活用し、日本国内においても有識者と連携した議論形成を目指すと同時に、議論の内容を英語で公開し、日本の多様な意見を世界に発信しています。2016年には、国際シンポジウム「東京会議」を開催し、世界のシンクタンクと地球規模課題について議論を行います。

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