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「東京会議2019」の評価と、来年の会議に向けて何が必要か

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多様性を受け入れることで、健全な議論ができる

_DZB2156.jpgサンジョイ・ジョッシ
(インド/オブザーバー研究財団(ORF) 理事長)

工藤:今回、「東京会議」にご参加いただき、ありがとうございました。今回の「東京会議」を厳しく採点していただきたいのですが、いかがでしょうか。

ジョッシ:「東京会議」は3回を経て、成長してきていると思います。特に、トピックの質、ディスカッションのレベルは着実に伸びてきていると思います。この会議の鍵となるポイントは、非常に焦点の定まった会議だということです。グローバルな問題について、また、グローバルな問題の中でも、例えばグローバル化の問題、リベラルな世界秩序と言ったことで、非常に焦点が絞られていて、非常に価値あるものだと思います。これがG7やG20に繋がっていくと思います。

 世界の力のある国々がどうやって協調するか、そしてどのようにして世界の秩序を形成するか。今、そういったコンセンサスがありません。

工藤:まさに「東京会議」はそれを目的にしています。やはり、世界のシンクタンクも様々な対話をやっていて、ジョッシさんのところも非常に大きな世界的な対話をやっています。我々日本は、世界のリベラルオーダー、民主主義を守るという点にフォーカスしたいと思ったわけです。その意味で、今回の対話が設計されたわけです。

 今回は米中対立という問題と、リベラルオーダーということを我々は関連付けて問題提起したのですが、ジョッシさんから見て、大きな着眼点、納得できる論点だったでしょうか。

ジョッシ:スタートとしては良いテーマだと思います。ただ、今の段階というのは、リベラルというのは、一体どういう意味か、ということをもう一度考えるべきだと思います。リベラルというのはいろいろな意味があり、対立するようなこともリベラルと言っています。今、リベラルではないリベラリズムが台頭しつつあります。こういった人たちは議論したくないと。こうしたことは、両側にあり、両極化が社会に生まれつつあると思います。その結果、リベラルな社会がリベラルで無くなってきているということがあると思います。リベラルと言うものの、他のグループと議論しないということがあります。ですから、そろそろ考えなければいけないのは、本当に我々は何を求めているのか。リベラルという言葉が違う性格を帯びてきたように感じます。

 私が考えるのは、オープンで透明性のある考え方、他の意見や違いを受け入れられる、そうすると健全な議論ができると思います。今は、健全な議論がリベラルなところからも出てきていないのが問題だと思います。

工藤:非常に重要な指摘だと思いますし、私も同じ考えです。

 リベラル秩序とは言うものの、リベラルとは何なのか。しかし、今、ジョッシさんは手がかりを与えてくれたと思います。それは「多様性」です。つまり、色々な意見も理解できる。違いを受け止めながらも、オープンで議論ができるようにする。いずれにしても、リベラルという言葉は、タダ利用するだけではダメで、きちんとした原点を踏まえながら議論しなければいけない、ということはまさにその通りだと思います。

 この対話の次の展開です。来年、我々はG7に提案しますが、この形も私も悩みながらやっています。なぜかというと、G7の国だけではなく、インドやブラジルなど、民主主義を採用する国は沢山あります。しかし、問題意識を明確にした、民主主義やリベラルなどをやっている国の代表制というものがG7しかないためにこのような形態になっています。来年は、G7の議長国はアメリカですが、この会議のあり方も含めて、来年に向けて、どのような準備をしたらいいでしょうか。

ジョッシ:来年の会議に向けては、コアのテーマを決めるのはまだ時期尚早だと思います。これからいろいろなことが起こると思います。例えば、米中貿易対立は、来年の3月までには解決していると思いますが、しかし、より大きな紛争は終わっていないと思います。要するに、経済や技術戦争、あるいは技術の優位性などの紛争はまだまだ続くと思います。そういう意味で、米中は世界最大の国ですから、来年のテーマの大きな部分になると思います。しかし、米中間では貿易戦争ではなくて違うものを話し合っているのではないかと思います。

 私たちが概念的に議論しなければいけないことは、それぞれの国の国内政治です。アメリカ、日本、中国の国内政治が、私たちの国が他国とどうやってかかわり合うべきか、ということに対して、少しブレーキをかけていると思います。政治家が、より大きな視点で考える、そういう余裕がないのだと思います。特に、民主主義国家においてはそうだと思います。なぜなら民主主義というのはやはり選挙に当選しないといけないからです。民主主義というのは、政治家をより国内ばかりに目を向けるようにしてしまっていると思います。ということは、民主主義の問題も大事になってきます。例えば、国民が幸せでなければいけないし、社会が安定しなければいけない。それから移民や人口の問題もあると思います。国によっては人口が減少している問題があったり、出生率が下がっている問題もあるでしょう。あるいは、逆に人口が増えている国があるかもしれないし、一方で、平等ではない国もある。ですから、私の国の問題は私が解決しなければ、他国では解決できないのだ、という姿勢を政治家は持っていると思います。それが対立を生んでいると思いますし、多くの国の対立の根源になっているのだと思います。

工藤:我々が考えている会議のミッションは、まさに世界の秩序と民主主義の問題ですから、その枠組みは壊さないで、しかしテーマはこれからきちんと考えていきたいと思います。そういうことも踏まえながら、設計していきますので、また力を貸してください。

ジョッシ:ありがとうございます。

工藤:また来年もよろしくお願いします。

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