
非営利組織評価基準検討会が提案する「エクセレントNPO」とはどのようなものなのか。検討会主査である田中弥生氏(言論NPO監事、大学評価・学位授与機構准教授)が、そのポイントを解説します。
NPO法(特定非営利活動促進法)が施行されたのは、1998年です。その3年前に発生した、阪神・淡路大震災での国際協力NGOやボランティア団体の活躍、そしてふだん、ボランティアとかかわりのなかった多くの人々が救援活動のために行動を起こしたことが、法律制定の大きな引き金となりました。NPO法人は、日本社会において、人々との絆や相互扶助の関係を再構築しながら豊かな市民社会をつくっていくための重要なアクターとなることを期待されたのです。
この10年あまりで、NPO法人の数は約4万団体にまで急増しました。地方の中間支援組織が様々な支援策を打ち出したこと、あるいは政府により認定NPO法人制度がつくられたことや、NPO法の認証条件のハードルを比較的低くし、法人制度を利用しやすくしたことで、法人数の増加を後押ししたのです。活動範囲も、医療福祉から経済活動の活性化までおおよそ想定し得る公共的な分野をほぼ網羅するほど多様になりました。活動規模や収入規模も様々です。また、政府の雇用政策や行政改革が、NPOをその実行手段として位置づけたことにより、ビジネス・チャンスを求めて、多様な主体がNPOセクターに参入するようになりました。
もちろん、多様化そのものは否定されるものではありません。しかし問題なのは、何がNPOの本質なのか、その支柱になるべきものがよく見えなくなってきてしまっているということなのです。多様化と混迷を続けるNPOセクターには、「市民との距離が縮まっていない」という、ひとつの共通点があります。NPO法制定後10年を見てみても、寄付とボランティアの数はほとんど増えていないことがわかります。つまり、法人数は増えたけれども、日本の寄付やボランティアの底上げには寄与していないということなのです。
しかし、NPO法が目指したのは豊かな市民社会だったはずではないでしょうか。そうだとすれば、NPOとは何のために存在しているのでしょうか。
では、NPO・NGOは何をすべきなのでしょうか。非営利組織が本来求められた役割を果たすためには、課題を解決し、社会を変えていくという「社会変革」の役割と、「市民性創造」のための参加の機会提供が、車の両輪として機能していく必要があります。
正当な手続きのもとで、課題解決に向かって成果を出そうとする組織だからこそ、市民は寄付者やボランティアとして参加することを希望します。つまり、優れた組織だからこそ、市民を引きつけけることができるのです。
そして社会変革と市民性の両輪に機能させるためには、母体である組織を維持する必要があります。今のNPOの現状を考えれば、安定性の確保が急務ですが、しかし、それだけでなく、常に課題解決に向かって前進しているような刷新性を内蔵している必要があります。
国内外の第一線で活躍するNPO・NGOの実践者や研究者によって結成された非営利組織評価基準検討会では、これまで2年にわたって議論を重ねてきました。議論の中で私たちはまず、優れたNPOを定義する際には「市民性」「社会変革性」「組織の安定性」の3つが重要なテーマになると考え、そのうえで以下のような優れたNPOつまり「エクセレントNPO」の定義を提案するに至ったのです。
明確な使命を持ち、それを組織の構成員のみならずボランティアや寄付者とも共有しようとする姿勢が重要です。また、自らの意思で使命を全うすべく、活動を運営するためには、自発性とともに独立性が重要となります。活動の政治的な中立性に加え、資金源についても、単一の資金源に依存しすぎないようにする工夫が必要です。
目の前で起きている問題だけではなく、背後にある原因や、そこから派生して起こる問題をも視野に入れ、課題として向き合う姿勢が肝要です。
まず、ボランティアや寄付など、組織の活動に参加する機会を広く開いていることが重要です。さらに、ボランティアや寄付者を単なる労働力、資金源として扱うのではなく、組織の使命と目的を理解し、課題解決に向けて、ともに前進していることを実感してもらうように努めなければなりません。そのような実感や共感があるからこそ、ボランティアや寄付者は組織が取り組む課題をより深く理解し、組織の支持者となっていくことができるのです。また、受益者が参加者、さらには貢献者に転じていくこともあります。「広く市民の参加を得る」ことの先にあるのは、受益者が貢献者になり、貢献者が受益者になるような、持ちつ持たれつの関係が自然に育まれるような社会ではないでしょうか。
この場合の「成果」とは、サービスの対象者数や物品の配布数、さらには入館料(売上)のようなアウトプットを意味するものではありません。社会のしくみや制度の改善、あるいは政策づくりをも視野に入れて、課題を解決しようとすることもあります。課題に挑み、その解決に向けて成果を出すということは、対象者への影響(短期的なアウトカム)、さらには社会のしくみの改善(中長期のアウトカム)を実現することを指しています。このようなアウトカムを出すためには、中長期的な活動計画を持ち、その達成状況を確認するための評価を行う必要もあります。
合法的に活動を営んでいることはもちろんのこと、より積極的に情報開示をすることも、公益的な活動に従事する組織には求められます。また、倫理観や道徳観に裏打ちされた規律の問題も重要です。透明性を持って意思決定機関の構成員を選出し、それを機能させることができているかという、ガバナンスの問題もあります。
組織の使命に基づき目的を達成するためには、一定の持続性が必要です。持続性を担保するために最大の課題になるのは、安定した資金の確保ですが、事業収入など単一の資金源に依存するよりも、寄付や会費などを組み合わせて収入の多様性を保っているほうが、財務的な持続性は高まります。
また、組織を漫然と持続させているのでは不十分であり、活動上の課題を発見し、それを活動計画や活動方法に反映していく力、つまり「刷新力」を強化していかなければなりません。組織のリーダーは、職員やボランティアなどの意見に耳を傾け、フィードバックしながら、刺激し合う文化としくみをつくることが求められます。
この「エクセレントNPO」の定義は唯一絶対のものではなく、一部の特別な人たちにしか実現できないことでもありません。私たちも、完璧な組織などないということは自覚しています。重要なのはそれを目指して努力することなのです。「エクセレントNPO」が一部の特殊な人たちの占有物に留まっているのでは意味がありません。検討会が求めているのは、「エクセレントNPO」がひとつの触媒となって、日本の非営利セクターがより自信と信頼に満ちたものになるような循環が起こっていくことなのです。
では、優秀で力強いNPOつまり「エクセレントNPO」が牽引役となって、この国のNPOセクター全体の信用力を高めていくには何が必要なのかということですが、まずは、「エクセレントNPO」に人々が魅力を感じ、人々の参加や支援が集まること。そして人々の支援を集めることのできたNPOは、より大きなエネルギーを得ることで、課題解決に向けて成果を出すことができるようになります。すると、そのような姿を目指して他のNPOも頑張るようになるのです。このように、互いに課題の解決を競って切磋琢磨するような循環が生まれる必要であるのです。
このような循環が生まれるためには、いくつかの課題を克服していかねばならないわけですが、まず、「エクセレントNPO」による活動や議論を「見える化」していくことが重要です。そのために検討会が策定を進めているのが、「エクセレントNPO」の評価基準なのです。私たちは、4月にもその基準を公表する記者会見を行い、この提案を世に問いたいと考えています。皆さんからのご意見もお待ちしております。
文責:田中弥生(言論NPO監事)
言論NPOの活動は、皆様の参加・支援によって成り立っています。
寄付をする「エクセレントnpo」理解できました。
劇的な変化もまた表層的な変革に終ってしまいそうな現状だ。
しかし諦めない持続可能な市民運動を育て上げることが肝要と考える。
言論NPOが掲げる「理念」に期待する。「挑戦と応戦」の激闘の中から、市民を覚醒願いたい。
最後の結論にまったく同感です。
私の短期間でのNPO経験から申し上げると、やはり最終的にはいかに優秀な人をひきつけられるかどうかにかかっていると思います。それは社会全体の問題で、日本では、労働の流動性がなく、いい大学、大企業というルートがベストという社会環境の中で、NGOで2-3年がんばろうという気持ちになれないところが根本的な問題です。
解決策は簡単には見つかりませんが、やはり根元には教育の問題、そして、短期的には、Communication(広報)の問題でしょうか?
今所属する、アメリカのNPOにはVolunteerのみならず、多くの人がどんどん集まってきて、優秀な人材の多さにびっくりしています。彼らは、ここでの経験を元に、また社会に飛び立っていきます。日本では自分の為になることと、社会の為になることとのバランスを失っているほど心の余裕がなくなっているように見受けられます。
スマート・スリム・シャープ・強靭・筋骨隆々・筋肉質・剛と柔・三島由紀夫美学・オスカーワイルド美学・法隆寺の壁画グラマラス女性・エレガンス・ミロビーナス・モナリザ・ミケランジェロダヴィデ・運慶快慶像。個人自然人の追う理想形はこんなものか。さてでは法人は。田中弥生先生はそれをエクセレンスに求められました。エクセレントカムパニーたいへんよい響きです。*何を申し上げたいか結論を急ごう。
上からの目線でやっていては限界。topdown
を超えてbottomupをどう引き出し当たり前のこととするか。自分たちでいわゆる新5人組?制度(ニューコミュニテイー政策と呼ぼう)を創り脱落防止共存共生する自治組織を。自分たちが当事者という当事者意識に目覚め。普通の人、向日三軒両隣にチラチラする普通の人が勝利?する世の中。もう一度正座して「憲法」を読み、自分たちが主役。基本的人権と民主主義に目覚め議会と行政・内閣と司法裁判を監視する。使命感などという観念ではなく
実践第1主義でこの浮世を変革してゆく。
キーワード、「グローバル思考・ローカル実践、
足元から良くする。食う寝る遊ぶ・衣食住を再考再構築するこれが課題。家族の絆を考える。身近なむら自治体から考える。そして国会。健全自治体とは。安全な食をどうつくりあげるか。崩壊しつつある環境教育医療介護。どう再構築するのだ。真っ赤な太陽ならぬ、真っ赤な赤字国日本国。夕張・ギリシャの比ではない危機的な倒産寸前の財政。税金をどう集めるのか。どう配分するのか。普通の人が黙っていないで声を出す必要があるのだ。日本国沈没の前に動かねばならない。工藤さん田中さんにおおいに期待したい。
言論NPOは2001年に設立、2005年6月1日から34番目の認定NPO法人として認定を受けています。(継続中)
また言論NPOの活動が「非政治性・非宗教性」を満たすものであることを示すため、米国IRS(内国歳入庁)作成のガイドラインに基づいて作成した「ネガティブチェックリスト」による客観的評価を行なっています。評価結果の詳細はこちらから。
© Genron NPO 2001-2011. All rights reserved.