言論スタジオ

2015年の日本に何が問われているのか

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2015年2月10日(火)
出演者:
明石康(国際文化会館理事長)
川口順子(明治大学国際総合研究所特任教授)
宮本雄二(宮本アジア研究所代表)

司会者:
工藤泰志(言論NPO代表)


議論で使用したアンケートはこちら

工藤:最後は、「2015年、どうなるか」ということを踏まえて、私たち自身に何が問われているかという話に入っていきたいと思います。昨年の暮れの総選挙では安倍政権が基本的に信任されましたが、かなり低い投票率でした。選挙の意味に関する議論もありました。また、宮本さんがおっしゃったように、野党がなかなか機能していないという問題もある。そこで、アンケートでは「日本の政治に新しい変化を期待できますか」と聞いてみました。すると、「期待できない」という回答が64.5%でしたが、これをどう考えるか。そして、私たちはどのように変化を作るべきなのか、どのように今の政治を考えればいいのかを皆さんと議論してみたいと思います。


「社会のために何かをしたい」との思いを持つ人たちを繋いでいく仕組みづくりが必要に

川口:私は、いろいろな課題を前進させていくということが、政治がやるべき最大のことだと思います。私は自民党が野党の時代に議員をやっていましたが、震災など様々なことが起こった時、「政権よりも良い政策をつくろう」ということを旗印に政策の勉強を皆でやりました。この動きは、政策に造詣の深い議員をいろいろな分野で生み出しています。ですから、今の野党も、政権よりも良い政策をつくるために政策の勉強をして、国会の場で政策の議論をしていくということが望ましいと思います。

 日本の民主主義について、アメリカのピューセンターが世論調査をしています。そこでは、「日本は民主主義国家で、安定している国家だ」と高い評価を受けています。こういうことを自信にして、政治を進めていくということが大事なのだと思います。

工藤:宮本さんは今年、新しい変化が起こるという手応えは感じられますか。

宮本:政治そのものに関していえば、難しいと思います。野党が変わらなければ変わりません。もちろん、野党再編などがあれば与党である自民党にも厳しい緊張関係が生まれると言われています。しかしその見通しがおそらく今年はないだろうということで、アンケートでも「新しい変化は起こらない」との回答が64.5%という結果になったのではないでしょうか。もちろん、政治には本当に変わってほしいと思います。現在政治に携わっておられる方の最大の責任ですから、ここを一番頑張っていただかないといけないと思います。

 他方、国民レベルでも変わる必要があります。政治はすべて政治家にお任せすればいいということではありません。例えば、先ほど「カイゼン運動」に触れましたが、政治にすぐにすべてを任せるのではなく、自分の身の回りで社会をよくするために何かできることを探して実行してもらいたいと思います。川口さんからもお話がありましたが、東日本大震災でも見られたように、日本の社会には他人を思いやる気持ちは溢れています。しかし、社会の仕組みがそれを結びつけるようになっていないのです。昔の農村社会にはしがらみが強すぎるというマイナス面もありましたが、人々の思いやる気持ちを結ぶ仕組みがあったので、「古き良き時代」と言われます。しかし、そのような社会を取り戻すことは可能です。
例えば、身の回りで「子どもを見てもらう場所がもっとほしい」という問題に携わっているとすると、必ず政治に直面します。そうした時に、「政治を変えたい」という強い動きが出てくるのではないかと思います。そのように下から常に政治に対する監視に近い要求があれば、政治に携わっている方は、意識的に「いかに政治を良くするか」と考えることになります。この両者が相まって、日本の政治、民主主義がより成熟した良いものになるだろうと感じます。

 そうした場合に、マスコミの役割は大きいと思います。マスコミは、そういった民主主義の発展を助けるための発信をしなければなりません。そのための材料を、国民や政治家に提供して、実際の行動につなげていく必要があります。これはマスコミの大きな役割ですが、そのような動きが見られないので残念です。

工藤:「社会のために何かをしたい」という公共心がある人たちが日本の社会にかなりいる。しかし、それをつないで課題解決をできる仕組みを作っていく動きが弱い。だから、その仕組みをつくることが必要だし、その動きをメディアもきちんとバックアップすることが重要だ、ということですが、年明けに訪れたインドネシアとインドではその動きを感じました。様々な活動に参加してクオリティを上げつつ新しいものを作るという仕組みに携わる人たちが、かなりの数いました。大変なことながら、継続できればいろんな人たちが参加して、何か大きなものができていくのだろうと感じました。


若い世代も協力して課題に対処していく仕組みづくりを

工藤:インドネシアでは、若い人たちが作るメディアがかなり影響力を持ってきていましたが、若い世代が最も多いというインドネシアの人口構成が影響していると思います。一方で、日本は人口ピラミッドが逆三角形になっていて上の世代にかなりの数がいるので、若い世代が「自分たちが課題解決をやる役割を担っている」と思えないのではないでしょうか。人口構成が逆三角形の中で、若い世代が上の世代とも協力し合いながら課題に対処するというサイクルをつくらなければいけないと思います。

川口:このアンケート調査の回答者属性を見ると、30代までの若い人が10%もなく、それより上の世代の人がいらっしゃいます。日本の若い人は投票率も低いし、社会に貢献というか動かすことに関心を持つ人が少ないことについて我々は危機感を持つべきだろうと思います。どうすればいいかということは、いろいろあると思います。若い人であっても世の中で発言権を持ったり、仕事の場で活躍できたりする仕組みが必要です。

工藤:若い人たちの活力がなかなか感じられない原因はそこにあるという感じがしました。また国際交流基金でインドネシアに赴任している人も同様の意見で、「日本にあまりにも沈滞した雰囲気があるのは、人口構成・高齢化という問題が想像以上に大きいのではないか」と言っていました。

宮本:政治が国民の声に非常に敏感であれば、そういうことを上手に吸収して一つの政策にしていくことができます。古い世代の私たちは、政党には党綱領があり理念があり、さらに理念に基づいて「こういう政策をやります」と国民に約束して、国民は選挙でこれを選択して政権党が決まるという、オーソドックスな政党政治を想像します。インドネシアなど若い国では、それではもう割り切れない政治の世界になってきているのかもしれません。

 世の中の漠然とした問題を抽出して、そこに一つの理論的な枠組みを作ることが求められていると思いますが、これは、学者・研究者の方々の役割なのです。しかし、それを怠ってきたため、政治が漂ってしまい、答えを見つけられない、投票しないという状況をつくり上げてしまったのだと思います。そこを改善して、今の政治状況の中で望ましい政治の在り方を考えるのは、政治のプロだけではなく、政治学などを研究する有識者の責任でもあると思います。もちろん、マスコミで政治を一生懸命やっている人たちもそうだと思います。そういう政治のプロたちが、選択肢を国民に与える努力をしなければなりません。漫然と、「もっとしっかり考えなさい」と訴えても、答えはなかなか出てこないのだと思います。


市民一人ひとりが課題解決に向けて動き始めるために

工藤:メディアだけでなく広い意味での言論人の役割が問われてきている気がします。しかしながら、海外に行くと逆の話を良く聞きます。イシューに対処するために、単なる市民運動ではない、市民一人ひとりが本当に課題解決のために行動する、という動きが至るところで見られます。

川口:民主主義型の社会ではそうですし、そうあるべきだと思います。日本という社会を、議論して行動をすることを大切にする社会にしていきたいと思います。議論もして、そして実際にものを動かしていくという社会です。

宮本:世の中のことを考えれば考えるほど危機感が募ります。だからこそ、2015年やるべきことについてはしっかりと成果を出して、これから進むべき道についての議論を活発化させることが重要です。方向性の議論には時間がかかりますが、より議論を活発化させて、より多くの人に参加してもらうことが大切です。それが、2015年の一番大きな課題ではないかと思います。

明石:有権者も日本人であるだけではなくて、アジアの人間であり、世界の一因です。まさにグローバルな視点から、本当の意味での和解を私たちは築くことができるかどうかの境目に立たされている。単なるナショナリズムの衝突ではなくて、それを私たちが超えることができるかどうかが本当に問われていると思いますし、一人ひとりの決意と覚悟にかかっていると思います。

 私たちは、武力を行使する世界、こぶしを振り上げる世界ではなくて、理性的で冷静な対話によっていろいろな層の体質や問題などについて、誤解を解いていく義務があるし、その能力もあるはずです。日本人はあまり議論が好きではないようですが、声を荒立てることなく、こぶしを振り上げることなく、また相手を徹底的にやっつけて自分の意見を押し付けるのではなく、やはりお互いが歩み寄り、過去には不幸な時期があったことは認めざるを得ないけれども、どうしてこうしたことが起きたのか、ということをきちんと正面から考える。そして、我々の知っていることの全てがより良い未来、より平和な未来、相互理解に基づいた未来になり得るように、ありとあらゆる機会を利用して、未来に関する方向性を1つにすることが出来るはずだと思います。

工藤:今日は、「2015年の日本に何が問われているのか」という議論を行いました。私も、間違いなく今年は正念場だと考えています。そして、言論NPO自身も問われていると考えています。つまり、議論を大切にしていきながら、課題解決のための仕組みを作るために具体的な行動に移さなければなりません。こうした手間がかかる作業を行う必要があると思いましたし、各国でも同様の思いを持っている人たちがかなりいました。彼らを「世界にもこういう発言がある」と紹介するために日本に連れてきます。そして日本が実践するデモクラシーの動きの中で何が重要なのかを皆さんに感じてもらう企画もつくっていきたいと思っています。言論NPOの今年の挑戦にぜひ期待していただければと思います。皆さん、本日はどうもありがとうございました。



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