言論スタジオ

東日本大震災から4年、東北の復興は進んでいるのか

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2015年3月27日(金)
出演者:
川崎興太(福島大学共生システム理工学類准教授)
新藤宗幸(後藤・安田記念東京都市研究所理事長)
寺島英弥(河北新報社編集局編集委員)

司会者:
工藤泰志(言論NPO代表)




工藤:ここで、さらに有識者アンケートを紹介します。「震災から4年が経ち、震災復興への関心はどのようになりましたか」と尋ねたところ、「強まっている」との回答は19.2%、「弱まっている」との回答は24.2%、そして「変わらない」は56.7%と6割近くになり安堵しています。ただ、政治の世界では被災地の復旧や復興に本気で取り組んでいるのか、という疑問が残ります。また、被災地の中で資材の高騰により復興が停滞するという状況もありますが、福島や被災地の問題への政治の現状についてどのように感じていますか。

被災地では、国家のイニシアチブが欠如している状態が続いている

新藤:例えば昨年の12月の総選挙では、被災地域の中でも論戦になっていませんでした。やはり、三陸沿岸、福島をどう復興するかは今の政治には全く議論がないと思います。

川崎:再び福島のことについて話をすると、放射能被害は長期的かつ広範囲なものです。今回の東日本大震災や福島原発事故後における復興の基本理念の一つには、復興の担い手に関して「被災地主義」、つまり被災市町村が中心となって復興の計画を立案し実現するというものがあると思います。

 ところがそもそも空間的に広範囲かつ長期的な問題に直面しているときに、市町村主義で対応するとどのようなことが起こるか?例えば双葉町について申し上げると、町の行政区域の96%が帰還困難区域に指定されていて、なおかつその96%の区域に96%の住民が住んでいました。双葉町では、自分の権限と守備範囲の中で一生懸命に復興を遂げる、つまり、帰還困難区域以外の4%の区域に復興の前線拠点を建設する計画を立案し、住宅を作ったり雇用を創出したりしようとしています。こうしたことが、程度の差はあれ、双葉町の周辺の市町村でもそれぞれに行われているわけですが、果たして、こうした事態が合理的と言えるのかという疑問があります。

 私は、ここでの問題は、広域性と長期性を特徴とする放射能被害の実態と復興まちづくりの空間的な単位がずれていることにあると思っています。国なのか県なのかという議論はあるとしても、いずれにせよ、市町村の行政区域を超えた広域的な単位で捉えなければ将来像は描けないはずなのに、それぞれの市町村が権限と守備範囲の中で復興を遂げようとしているわけです。冒頭のご質問に戻りますと、こうした決して合理的とは言えない状況をつくった要因としては、国家のイニシアチブが欠如していることが挙げられると思います。

寺島:震災から4年が経ち、莫大な予算を使って土を盛り、土木作業を行い、除染を機関の条件をつくるといったベース作りから、帰還してどのように生きられるかといった自立支援が、これからの段階のテーマだと思います。そのテーマに国が発想を変えられないでいる現状が感じられます。被災地から眺めると、政府は2020年の東京オリンピックに向けてアベノミクス景気をいかに盛り上げるか、というシナリオに頭が向いているように見える。それが、復興予算を被災地に一部負担させようという腰引けの姿勢に移っているのでは、とも。先ほど述べましたように、きめ細かく自立を支援する必要から、被災者とともに活動してくれているNPOへの予算を打ち切るようなことを、まずなくしてほしい。むしろ、被災地に多くの人を集まり、交流する人口が増えることが復興につながるのです。まさに地元のニーズ、自治体が必要としているところを、復興庁が連携役になって、パートナーになっていかないといけない状況だと思います。


「帰還が無理なところ」の範囲については、慎重な議論が必要

工藤:今のお話に繋がると思いますが、あと2つアンケートを行っています。まず、「あなたは福島が復興するために必要なことは何だと思いますか」と尋ねたところ、一番多かったのが「帰還が無理なところはそれを明示して、新生活の基盤づくりに向けた支援策」との回答が65.8%で最多となりました。次に多い回答が「汚染水対策など、原発事故の収束」で43.3%でした。

 もう1つの質問で「5年間の復興集中期間が2016年3月に終わりますが、次の5年間で何をやるべきか」を尋ねたところ、50.8%の人が「地域の事情も踏まえて多様な復興計画を認める」と回答し、「自治体の復興計画と国の直轄事業の相互の見直しをする」が16.7%で続きました。地域の中で色々な動きが見られるので、それに見合った形での復興支援策に変えるべきなのではないかという意見でした。つまり福島の復興に向けて、今私たちは何を課題として考えなければならないのでしょうか。

川崎:1つは、福島復興のために必要なこととして、65.8%の人が「帰還が無理なところはそれを明示して、新生活の基盤作りに向けて支援策を取って欲しい」と回答していますが、これに関して言いますと、問題は「帰還が無理なところはどこか」ということです。つまり、それは国が明示している帰還困難区域だけに限られるのかということです。2013年12月に新しい賠償の指針が出て、全員帰還の方針が一部改められ、帰還困難区域に住んでいた人たちについては、賠償を払うという方針転換がありました。避難指示の解除の一つの目安は20ミリシーベルトになっていますが、それではとても帰れないという状況の中で、「帰還が無理なところ」という範囲については慎重な議論が必要だと思います。

 それから、もう一つのアンケートに関する「地域の事情も踏まえて多様な復興計画を認める」というのもその通りだとは思いますが、先程申し上げた空間単位のずれが特に福島では大きいと考えています。先ほどは触れませんでしたが、実は、昨年の暮れに、12市町村の将来を考えるための会を国が立ち上げました。4年も経ってからというのはどうなのか、という問題点はありますが、今年の夏ぐらいに結論が出るということで、今後の帰趨を見守る必要があると思っています。


「どのような街づくりを行うのか」という計画がないまま進められる復興

新藤:「帰還が無理なところはそれを明示して、新生活の基盤作りに向けて支援策を取って欲しい」との回答が最多となったのは興味深い点です。いずれにしても双葉町等に帰還して生活することはできるかもしれませんが、一番の問題は雇用がないということです。結局は、職をどうするのかというのが重要な問題です。就業支援体制をきちんとしなければ、帰還を優先しても仕方がないと思います。かつてリーマンショック以降、様々な基金の創設があり、NPO等にも就労支援の活動を働きかけました。そうした施策をかなり広範囲にやる段階に来ていると思います。

 それから、「地域の事情も踏まえて多様な復興計画を認める」というのは、建前から言えば政府も既に行っていると言うでしょう。ですから大槌町でも山田町でも南三陸でも、住民を単位にした計画を作っています。もちろんそれがコンサルに適当にリードされている側面もあるようですが、問題はこうした計画に対して、どのように財政的に支えるかということだと思います。

 また、これまでは、高台への移転、盛り土するなどが進められていますが、盛り土をしてどのような街を作るのか、といったビジョンは明確ではありません。さらに、盛り土をして高台になっている場所は、高速道路や高規格道路が通るなど、大きな道路や堤防はどんどんできています。その中間の津波で流されたところも盛り土は進んでいますが、どんな街を作るのかまだ決まっていない。一方で、高台に高規格道路を作り、それを超えた沿岸から高いところに新住宅を作るという声もある。果たして、一体どれを重点的に実現しようとしているのか、全く見えません。

川崎:都市計画やまちづくりの分野では、今回の復興は、市町村主義であまり上手くいかないのではないかということが当初から言われていました。先ほどは福島の放射能被害について述べましたが、市町村主義の弊害というのは、形は違いますが津波被災地域でも生じている、あるいは、今後生じると思います。例えば、それぞれの被災市町村で事業計画が立てられ、高台移転が行われたり、区画整理が行われたりしていますが、数年かかって宅地を作ったのはいいけれども、できたころには、果たしてどれぐらいの人が戻ってくるのかという問題があります。もしかすると、空き地や空き家ばかりを作ることになって、土木工事の跡だけが残ってしまうということさえ危惧される状況だと思います。


希望の種がある限り、きめ細かく支援して行くことが重要だ

寺島:毎年、復興庁と避難指示を受けた地元自治体が一緒に、住民の「帰還」についての意向調査を行っています。最新のデータでは、浪江、富岡、大熊、双葉という原発周辺の町については、「いずれ帰りたい」との回答がいずれも1割台にとどまっています。年齢別でいうと中高年が多く、「帰らない」との回答は5割前後です。

 ただ、その中で「帰りたい」との回答が増えたのは飯舘村でした。1年前の調査では21.3%だった数字が、今回は29.4%になりました「帰らない」との回答も30.8%から26.5%に減っています。この結果に対して、飯舘村の村長は、除染が進んでの効果ではないかと話していました。小さな数字の変化かもしれませんが、地元の自治体に取っては大きな希望の種なのです。

 飯館村がこのほどまとめた第5版の「いいたて までいな復興計画」は、村に帰って住むという人と、村には直接は住まないが近くにいて繋がっていく、というネットワーク型の共同体で村を維持していきたいとの考え方を打ち出しています。また、帰りたい意向の人でも、ハウス園芸をやりたい人、地区の水田を北海道並みに広く繋げて放牧をしたいという人もおり、これからは、個々の住民も、自治体も、それぞれの生き方を選択していく気がします。言論NPOのアンケートでも多かった、「多様な選択の支援を認めるべきだ」という回答に全く同感するところです。

 一方でこうした生き方が認められないと、ただ人口流出が進むだけではないかと思います。昨年、増田寛也元総務相らの政策提言団体「日本創成会議」が、2040年までの「消滅可能性自治体」を挙げた地方消滅論を発表し、センセーショナルなニュースになりました。平成の大合併以来の自治体大再編を意図する総務省が背後にいるのでは、とも言われています。東北の被災地はいずれも、人口の流出、減少が止まらず、原発事故被災地の町村、震災後の減少率30%の女川町をはじめとして、自分たちの自治体が消滅するかのではないか、といった綱渡りのような危惧が生まれていると思います。その意味でも、希望の種を育てる、きめ細かな支援を続けることが必要ではないでしょうか。古里で再び、生業で自ら立って生きられることこそ、真の復興だと考えるからです。

工藤:まだまだ話を進めたいのですが、時間になってしまいました。今までの話を聞いていて、風化が一番怖いと思いました。政策課題はずっと続いているのにも拘らず、終わったと錯覚してしまうのは非常に良くないと思っています。今回の意見をご覧になった人は、まだまだ現在進行形で様々な問題が残っていると感じたと思います。そうした残っている課題を、どのように解決していくのかが問われていると感じました。私たちも、引き続き被災地の問題について定期的に議論や検証していきたいと思っています。その意味でも、今日は非常に大きな論点を提起していただきました。皆さん、どうもありがとうございました。

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