言論スタジオ

地球規模課題座談会
「2020年、私たちは気候変動問題にどう向かい合うべきか」

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2020年1月28日(火)
出演者:
江守正多(国立環境研究所地球環境研究センター副センター長)
亀山康子(国立環境研究所社会環境システム研究センター副センター長)
藤野純一(地球環境戦略研究機関都市タスクフォースプログラムディレクター)

司会者:
工藤泰志(言論NPO代表)



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 言論NPOは1月30日に、「地球規模課題への国際協力の評価2020」の結果を発表するとともに、その発表を記念した公開フォーラムを開催します。これは、世界的な課題10分野に対する2019年の国際協力の進展に対する評価や、2020年におけるそれぞれの課題の重要度、解決に向けた見通しなどを明らかにするものです。この10分野のうち、気候変動、サイバー、経済・通商の重点3分野に関しては、公開フォーラムに先立って、世界の動きを評価するための座談会を開催します。今回のその第一弾として、気候変動について議論を行いました。


2019年の国際的な対応をどう評価するか

kudo.jpg まず、工藤がこの気候変動分野における2019年の国際的な取り組みに対する評価を尋ねると、藤野氏は「やや後退」と回答。COP25では、会期を延長したにもかかわらず結局、主要論点で各国の意見がまとまらなかったことをその理由として挙げました。一方で、「大きな後退」ではない理由として藤野氏は、2050年までにCO2排出ゼロとする目標設定をした国が増加していることを挙げました。また、環境や社会への貢献を重視するESG投資が世界的に拡大していることも好材料であるとしました。

kameyama.jpg 亀山氏は、「取り組み」が国家間の交渉を意味するのであれば、「前進も後退もない」と回答。確かに、COP25においては、CO2排出の削減目標の引き上げでは合意できなかったものの、「そもそも目標の数値だけ合意しても意味はない」ものであり、あくまで重要なのはその達成手段であると説明しました。一方で亀山氏は、市民や企業、自治体など、草の根レベルの取り組みの機運が高まってきたことをプラスの評価要素と指摘。米国でもトランプ大統領個人は後ろ向きでも、州レベルや民間レベルでは野心的な取り組みを始めているところは多いと説明し、決して米国全体が気候変動に消極的であるわけではないことを明らかにしました。

emori.jpg 江守氏は、「一定程度前進した」と評価。もっとも、それと同時に、「進展を上回るスピードでゴールが遠ざかっている」とも指摘。世界の炭素収支を報告している「グローバル・カーボン・プロジェクト(GCP)」によると、2019年も世界の排出量は増加したことを紹介しつつ、再生可能エネルギーの導入などは進んでいるものの、それは世界のエネルギー需要の増加に追い付いていないことなどをその要因としました。一方で江守氏は、相次ぐ大規模自然災害を受けて、人々が生活の中で気候変動の弊害を実感し、課題として捉え始めていることは、今後にとってプラスの要素であると語りました。


2020年の気候変動問題の優先度は

 続いて工藤は、2020年の地球規模課題における気候変動問題の優先度についての質問を投げかけました。

 これに対し藤野氏は、2019年には世界各地で熱波や水害など大規模自然災害が相次ぎ、人々の生命や暮らしを直接的に脅かし続けたことを念頭に、「人々の生活のファンダメンタルな部分に関わる問題である」と同時に、「世界中が一致協力しなければ成功しない問題だ」と述べ、きわめて優先度の高い課題であるとの認識を示しました。

 一方、江守氏は重要度の高い問題であるとしつつ、気候変動は、経済活動や持続可能な開発目標(SDGs)のような開発の問題など、多分野に多面的に関わってくる問題であるという性質のため、他の課題と比べて優先度が高いというよりも、他の課題解決が進むことで初めて解決に向けて動き出せる問題であると解説しました。


日本の課題は

 続いて工藤は、この気候変動問題における日本の対応や、今後国際社会の中でリーダーシップを発揮していく上での課題を尋ねました。

 これに対し藤野氏は、日本の電源構成における石炭火力発電の比率が比較的高いことから、「石炭への感度が弱い」と指摘。

 江守氏は、企業活動優先の観点から石炭火力発電の活用に積極的な経済産業省の姿勢を問題視しました。

 亀山氏は、日本では気候変動問題を「『環境問題』という狭い捉え方をされている」ことに対して問題提起。世界では、気候変動は経済リスクや難民問題、さらには紛争にまで結びつけて考えられていること、特にパリ合意以降は、国連安全保障理事会でカバーすべき問題と捉えられていることなどを紹介し、日本との意識の違いを浮き彫りにしました。


中国の取り組みをどうみるか

fujino.jpg 中国の取り組みについて話題が及ぶと、藤野氏は、深圳市の電気自動車(EV)化の急速な普及の様子を紹介。亀山氏は、中国のCOP25における行動を、「まだ様子を探りながら動いていた」と振り返りつつ、植林事業については積極的に展開していることを指摘。緑化に豪州やブラジルとは対照的であると評価しました。


2020年の展望は

 最後に、2020年における気候変動問題の展開について工藤は尋ねました。

 これに対し亀山氏は、解決に向けた進展は2019年と同様に草の根レベルの動きが鍵になるとの見方を示しました。同時に、企業の気候変動対策に積極的なマインドに切り替わるような仕組みを導入していくことも必要になるとの見方を示しました。

 江守氏は、秋に実施される米大統領選で、トランプ氏再選となれば「さらに一歩後退する」と懸念を示す一方で、民主党、とりわけ左派の候補者が当選した場合には進展する可能性があると期待を寄せました。

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 これに関連して、工藤が各氏に日本の取り組みを進展させるための"秘策"を尋ねると、藤野氏は、炭素税や排出量取引などにより炭素に価格を付けることを提言。亀山氏は、石炭火力発電からの脱却を宣言すれば、日本に対する国際的な見方が一変すると述べました。一方、江守氏は一風変わった秘策を提示。それは「街頭演説をしている政治家に対して、直接気候変動に対するスタンスを問い質すこと」で、自身も実践していると語りました。江守氏は、これは政治家に直接プレッシャーをかけられるし、さらにまだ選挙権を持たない将来世代も実行可能な方策である、とそのメリットを語りました。

 議論を受けて最後に工藤は、米中対立など主権国家が前面に出てきている世界の現状を踏まえた上で、グレタ・トゥンベリ氏のような草の根の市民からの動きは、地球規模課題におけるマルチステークホルダー・プロセスの重要性を思い起こさせる重要なメッセージとなっていると指摘。こうして国家だけでなく、世界中の一人ひとりが問題について考え、取り組んでいくことは、今後の国際秩序の安定にとっても必要となるとの見方を示し、議論を締めくくりました。

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