2007.6.15開催 アジア戦略会議 / テーマ「憲法9条」

2007年6月15日

070615アジア戦略会議
今回のアジア戦略会議では、朝日新聞社論説主幹の若宮啓文氏をお招きし、「憲法論議を通して、日本は一体何を目指そうとしているのか」について議論しました。

若宮啓文氏スピーカー:若宮啓文(朝日新聞社論説主幹)

 アジア戦略会議では、これまで日本の外交政策のあり方について議論を重ねてきました。今回の会合では、日本の根幹である日本国憲法の改正論議について、とりわけ9条をどうするかにつき、朝日新聞社論説主幹の若宮啓文氏をスピーカーとしてお招きして議論を行いました。

 若宮氏は、9条問題を出口議論と位置づけた上で、まずは日本の戦略を考え、そこから憲法のあり方を導くべきだと指摘しました。その上で、「改憲」ではなく「9条プラス自衛隊」という「平和ブランド」の維持の中で、日本の世界貢献を果たすという戦略を提示しました。また、世の中の改憲ムードの中であえて護憲を打ち出したのは、カウンターバランスという意味もあるとして、改憲一辺倒の風潮への危惧を示しました。

 その後自由討議に移ると、添谷教授から、現在の憲法改正の動きは「後ろ向きの衝動」に突き動かされたものである、との指摘がありました。"現状に問題があり、解決が必要だ"との思いから出てくる改憲論には、描くべき未来が欠如しており、日米安保条約の書き直しも含めた「改憲後」の日本の姿が見えないことが問題であるとした上で、未来の国家像を語りながらの憲法論議が望ましいと指摘しました。
他の参加者も、最近の安倍総理の従軍慰安婦や戦争責任に関する発言は、この「後ろ向きの衝動」が背景にあるからではないかと指摘し、そのような状況で進められる憲法改正は危ういものであるとの見方が示されました。

 日米安保条約と9条の整合性を考えるにあたっては、日本の戦争についての総括をきちんとすると同時に、テロなどの新たな脅威の出現を考慮していかねばならないとの意見が出されました。
また、戦時中のメディアの戦争責任の議論では、メディアが戦争に加担したことは間違いなく、現在はそれを教訓として、自分たちの使命への緊張感を持たねばならないとの認識が示されました。

 今後の日本の軸をどこにおくのかという議論では、日本が平和軸を打ち出すことが果たして可能かという議論が交わされました。日本が平和であったのは、憲法によって「軍」を戦争に出さずにすんだからではないか、その日本が平和軸を打ち出すことにどれだけ説得力があるのかとの見方がある一方で、9条の下での戦後日本の平和に対する「熱情」と「野心のなさ」は強みであるとの意見が出されました。また、自衛隊の派遣・安保が主だった「国際貢献」という言葉に、温暖化やエネルギー・食糧問題、環境、疫病などへの対応が含まれるようになったこと、日本はこの中での国際貢献を果たしていくべきであるとの指摘がなされました。

 今回の会議では、現在の憲法論議の問題点と、描くべき日本の戦略、日本の軸は何かということについて活発な議論が交わされました。言論NPOは、これらの議論を、来る参議院選挙の評価作業に反映させ、有権者の皆さんに提示していきます。


文責:インターン 弓岡美菜


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今回の出席者は以下の方々でした。(敬称略)

若宮啓文(朝日新聞社論説主幹)

福川伸次(機械産業記念事業団会長 元通産省次官)
会田弘継(共同通信社編集委員 論説委員)
安斎隆(セブン銀行社長 元日銀理事)
倉田秀也(杏林大学総合政策学部教授)
進和久(ANA総合研究所顧問)
添谷芳秀(慶應義塾大学法学部教授)
松田学(財務省〔東京医科歯科大学教授〕、言論NPO理事)
工藤泰志(言論NPO代表)

 アジア戦略会議では、これまで日本の外交政策のあり方について議論を重ねてきました。今回の会合では、日本の根幹である日本国憲法の改正論議について、とりわけ9条をどうするかにつき、朝日新聞社論説主幹の若宮啓文氏をスピーカーとしてお招きして議論を行いました。