2006.1.20開催 アジア戦略会議 / テーマ「アジア外交」

2006年1月20日

060120アジア戦略会議
 今回は、元アジア開発銀行総裁、現野村総合研究所顧問の千野忠男氏をゲストスピーカーとしてお呼びし、言論NPOが2005年に発表した「2030年の将来に向けた日本の選択肢」のうちのアジア外交に関する意見を中心としたお話を伺い、活発な議論が行われました。

千野忠男スピーカー:千野忠男(野村総合研究所顧問・元アジア開発銀行総裁)

 アジア戦略会議(座長:福川伸次)は、既に4年度目の議論形成を進めていますが、1月20日には、前アジア開発銀行総裁の千野忠男氏(野村総合研究所顧問、元大蔵省財務官)を招いて開催しました。
 この日は、これまでこの会議が戦略形成の方法論に従って進めてきた議論が到達した仮説、すなわち、昨年2月の国際シンポジウムで言論NPOが提示した、「世界のソウトリーダー」(←日本が追求するアイデンティティー)、あるいは「アジアにおける知の創出のプラットフォーム」(←日本が目指す国家像)といった一連の仮説や選択肢などについて、それを再検証し、見直していく議論をスタートさせました。

 こういった仮説に関して、千野氏はスピーチで、アジア開発銀行総裁としてのご経験なども踏まえ、以下のような内容を熱く語りました。

 「アジアは上昇志向の強い勤勉で貯蓄率も高い地域であり、そこでは統合がスピーディーに粛々と進んでおり、今後ますますアジアの発言力が増大し、世界に受容されていくだろう。こうしたアジア全体のアドバイザーとしての日本の役割は一層増大していくことになる。アジア地域の最大の課題は貧困の削減であり、貧困という問題についてアジアは世界の中で大きなウェイトを占めている。格差是正・貧困の解決は、平和と表裏一体の関係にある。失業の問題、インフラ投資の不足などもアジアの課題である。このアジアで今、大きく進展しているのは地域協力であり、それは、地域的な広がりも協力分野の広がりも、ともに著しいものがある。地域協力の延長線上にアジア共同体が見えてくるだろう。日本の将来はアジアとの共生にあり、こうしたアジアの課題を日本の課題としていくことが重要である。大切なのは、大きく地殻変動するアジアに対して日本が傍観者になってはいけないということである。日本は、明治維新以来140年間、欧米とは不断のすり合わせを続けてきた。今、大変化を遂げるアジアとこれを行うには大変なエネルギーが必要であろう。だからこそ、日本は、より多くの人材、資源、知恵をアジアの課題解決に投入すべきなのである。言論NPOが提示した仮説や選択肢は大変な労作と評価するが、日本はこれまで様々な支援や投資などを通して今日のアジアを築き上げてきたのであり、その日本がアジアで孤立する事態は、およそあってはならないことである。海外から優れた人材が集まる魅力的な日本を創出するとの選択肢にも大いに賛成であるが、そのためには、留学生の受け入れなどももっとしっかりと考えるべきであろう。」

 以上のスピーチの内容については、近くその詳細をあらためて公開します。また、千野氏のスピーチを受け、会議ではメンバー間で活発な議論が行われ、今後の議論形成に向けた論点もいくつか出されました。これについても、同時に公開する予定です。

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今回の出席者は以下の方々でした。(敬称略)

千野忠男(野村総合研究所顧問・元アジア開発銀行総裁)

福川伸次(機械産業記念事業団会長・元通産省次官)
安斎隆 (セブン銀行社長・元日銀理事)
大辻純夫(トヨタ自動車海外渉外部部長)
黒川清 (日本学術会議会長)
周牧之 (東京経済大学准教授)
深川由起子(東京大学大学院総合文化研究科・教養学部教授)
松田学 (言論NPO理事)
工藤泰志 (言論NPO代表)

 今回は、元アジア開発銀行総裁、現野村総合研究所顧問の千野忠男氏をゲストスピーカーとしてお呼びし、言論NPOが2005年に発表した「2030年の将来に向けた日本の選択肢」のうちのアジア外交に関する意見を中心としたお話を伺い、活発な議論が行われました。