言論外交の挑戦

「言論NPO 第2回アジアシンポジウム」報告 「日中の新たな可能性を探る」

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031218アジア・シンポジウム場所:日本財団 2F大会議室

日中関係の将来めぐり熱い討議、継続的な議論交流で合意

 言論NPOは12月17日、東京都内の日本財団ビルで、中国の現役の政府当局関係者をお招きして、言論NPOに参加する中国問題に精通した国内の有識者などとともに、第2回アジア・シンポジウム(東京経済大学共催、笹川平和財団後援)を開催し「日本と中国の新たな可能性」について徹底した討論を行いました。

 シンポジウムは、午後12時30分から午後6時近くまで、5時間30分の長時間にわたって行われましたが、参加した約200人ほどの人たちが熱心にメモをとりながら、議論に耳を傾けておられました。中国側の政府当局者は、いずれも建前にこだわらず、かなり踏み込んだ本音ベースでの発言も目立ち、日本側関係者を驚かせましたが、中国関係者の1人が「官僚同士だと、それぞれの国を背負っての議論になってしまうが、NPOのような市民レベルの討議だと、本音の議論ができる。議論に達成感があり、素晴らしかった。こういう形での人的交流を続け、蓄積していくことが中日関係を強固なものにしていく」と、NPOの評価につながる発言をされたのが印象的でした。その後の懇親会ではこうした日本と中国との議論を一過性のものではなく継続させることを参加した中国側パネラーと話し合いました。

 今回のシンポジウムは、第1「日中関係の将来」、第2「日中が抱える障害をどう乗り越えるか」、第3「日中の新たな可能性と哲学」という3つのセッションに分かれて討議しました。

 まず、第1セッションの「日中関係の将来」では、邱暁華(中国国家統計局副局長)、楊偉民(中国国家発展和改革委員会計画司長)、加藤紘一(衆議院議員)、小林陽太郎(富士ゼロックス代表取締役会長、前経済同友会代表幹事)の4氏と、コーディネーターの慶応大学教授の国分良成氏でもって、議論が行われました。ここでは、日米中関係をどういうふうに方向付けるか、デフレ脱却にあえぐ日本経済とは対照的に成長を続ける中国経済をどう評価するか、今後の日中関係はどういう形態が望ましいか、またどう進展させていくべきかーーといったテーマが中心になりました。加藤氏は、その中でアジアの安定は日中の太いパイプがないと実現しないこと、また日米中関係については、日米、日中、米中がそれぞれ相互けん制しながらトライアングルの関係をつくっていくことがアジアの安定にとっても必要と主張しました。また、小林氏は今後10年ないし20年、中国は量的な経済拡大を続ける一方で日本は成熟国家としての道を歩むという状況が想定されるとしたうえで、日中は、経済をベースに政治、外交面でも広範な関係をつくっていくことが必要で、そのためにも人材交流を一段と拡大することが必要と指摘しました。

 これに対して、中国側の邱氏は、中国経済の現状を説明したうえで、2020年には中国は1人あたりGDPで日本と肩を並べるところまでいく可能性を持っていること、ただ、日本は中国経済のテイクオフ(離陸)を脅威とは見ずに、むしろオポチュニティとしてみて経済関係面での連携を広げてほしいと主張しました。楊氏は、多元かつ多極化が進む中で、中日関係を強化していくことは重要としたうえで、双方は相互補完的な経済関係をつくっていくことが必要との考えを示しました。

 また、第2セッションの「日中が抱える障害をどう乗り越えるか」は、日経BP社主任編集委員の谷口智彦氏をコーディネーターにして、馬建堂(中国国有資産監督管理委員会副秘書長)、劉亜(中国対外経済貿易大学副学長)、張平(中国社会科学院教授)、安斎隆(アイワイバンク社長、元日銀理事)、加藤隆俊(東京三菱銀行顧問、元旧財務省財務官)、林芳正(参議院議員)の各氏で議論が行われました。

 コーディネーターの谷口氏が「中国という大きなクジラが池にドボンと入り、一種の秩序かく乱者のような状況をつくりだしている」として問題提起し、それをもとに、各氏が日中双方の抱えるさまざまな問題や課題などを率直に取り上げました。その中で、今後に道筋をつける話として、安齋氏が「東アジアは、いまや日中がいい関係をつくるといった時期から、さらに踏み込んで、統合の過程に入ってきている。為替1つをとっても、統合通貨をつくっていくという方向に向かって動き出せば、状況は変わってくる」と発言しました。これに対して、劉氏は「アジアの通貨体制の合理的なモデルは、唯一の通貨、それは統合通貨をつくることだろう。1つの通貨で決済すればリスクも少なくなる。ただ、現状では、なかなか、そこに至るまでには障害がある。それぞれの国内経済を安定させ、為替レートも安定させることが重要だ。そうした中で、中日両国の中央銀行が通貨スワップ体制をつくりあげたのは意義がある」と述べました。

 また最終の第3セッションの「日中の新たな可能性と哲学」では、イエスパー・コール氏(メリルリンチ日本証券チーフ・エコノミスト)をコーディネーターにして、馬暁河(中国国家発展和委員会産業発展研究所長)、張燕生(中国国家発展和改革委員会対外経済研究所長)、陳少峰(北京大学文化産業研究所副所長)、周牧之(東京経済大学経済学部准教授)、塩崎恭久 (衆議院議員)、横山禎徳(社会システムデザイナー)の各氏によって行われました。

 横山氏が「日中で人的交流を活発に、といったことが言われるが、現実には、たとえば航空旅客の動きをみても、そうはなっていない」と、具体的な数字をあげて問題提起しました。世界トップ10のうち香港―台北空路の450万人をトップにアジア空路が5つも占めるのに、北京や上海――東京といったルートはどこにも顔を出していない、というものでした。

 これをきっかけに、さまざまな問題提起があり議論は活発になりましたが、中でも馬氏は、WTO(世界貿易機関)に加盟した中国が今後、国内の農業をいかに開放経済体制においていくかが課題で、経済問題であると同時に政治問題になること、仮に農民の保護を厚くすると東南アジアのみならず欧州や米国から反発を招き貿易戦争に発展しかねないこと、しかしそれは日本も同じ問題を抱えており、これをどうするかが課題であることを率直に述べました。この点に関連して、張氏も、日本は農業に関しては門戸を開放していないと批判し、中国はなぜ、自由貿易市場づくりを進めたいか、実は外の力を使って改革開放を進めたいからだ、とし、日本のアクションを促しました。また、馬氏は、日本の産業構造調整は、日本だけの枠組みで考えるのではなく中国やアジアとの関係も視野に入れながら対応することが重要との考えも明らかにしました。

 こうした議論を総括する形で、周氏が「中日間では、非生産的な緊張関係は最小限にして、信頼関係をどう構築していくが重要だ。今回のシンポジウムを通じて、中国側の参加者は、日本側と議論して達成感がある、と語っていた。中日間では、政府、企業ベースでの話し合い、交流などもあるが、今回はNPOが第3極にあるような気がする。言論NPOが本音ベースの議論の場をつくりだしてくれたことは極めて意義がある」と締めくくりました。

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