アジア戦略会議勉強会「アジアの2025年」議事録 page2

2003年9月11日

〔 page1 から続く 〕

工藤 すみません、谷口さん、今どのように作業をするかばかり考えていて、項目のことですが、確かにエネルギーはあり得ますよね。消費量と、不連続があるかもしれませんが、代替的なエネルギーが出てくるとか、それは中長期で、ある程度の変化というか、どのような将来予測というか、そういうことを項目で挙げるものというのは何があるのかなと今思ったわけですよ。

人口は1つ、まあ、その人口の議論の方法論は今おっしゃったような感じですが、あとはエネルギー、技術ですか。あとは何だろう。

夏川 さっき言われた文化とか、そんなものもあるでしょう。

横山 これもレイヤー構造なんですよね。だから極めてハードでニューメリックアナリシスに乗るタイプのレイヤーと、だんだん乗らなくなっていくレイヤーと、そして文化が一番乗らないレイヤーなんですよ。それもどういう層構造になっているか、何層のレイヤーなのか、その数をある程度見きわめて、全部を扱えなければ飛ばし飛ばしで幾つかだけ扱うと。

例えばサブシステムとしての都市は、一番下にあるレイヤーは、要するに極めて技術中心のレイヤーなんですよ。例えば電力やガスなどのエネルギー供給とか、それから上下水とか通信とか、その上にちょっと違う交通というレイヤーが乗り、上の方に文化のレイヤーがあるんですよ。ザーッといってその重層構造が都市なんですよね。

今まで、少なくとも都市関係に携わった人は、結局,都市の分析は完全にはできない、まして再構築することも不可能というふうな考えなんです。でも、レイヤー構造の概念はあるわけですよ。

だから国のレベルだともっと複雑だけれども、何層かのレイヤー構造になっているはずなんです。極めてハードな世界とそうでない世界、例えば、大衆文化の影響力というのは、そんなにソリッドに固められない話なんですよ。定量化も全然できない。

工藤 環境、資源制限というのもあるね。例えばアジアでも木材、木を切るなとか、いろいろあるじゃないですか。そうすると、それがいろいろな形で影響してきますよね。

横山 そういう環境ですか。

工藤 地球の資源の制約......。

夏川 資源、エネルギーですか。環境で、何かが大きくなって、オゾンがふえるとかいうあれもあるでしょうけれども......。

横山 食糧供給とか、そういうことではなくて、そういう話ですか。

工藤 ああ......。

横山 例えば、なぜ中国の国土は破壊的状況にあるか。森林が国土の12%しかなくて、今後の高度成長によって8%まで落ちると言われていて、治水などがすごく悪くなっているわけです。それは毛沢東が"耕して天に至る"というようなことをやったことによって、要するに普通の森林の保水能力と、人工的に耕してしまったところの保水能力に格段の差があるわけですね。そうすると水がダーッと流れてしまう。要するにじわじわと順繰りに行かない構造にしてしまった。それは北朝鮮もそうなっていると言われている。そういうたぐいの話ですか。

工藤 うん、そういうこと。

横山 単純に"環境"と言うと、何かちょっととらえにくいんですよ。

工藤 うん、そういうことですね。つまり、長期予測というか、大きな30年とかなんかを考えた場合に、どういう変化を想定して項目をつくるかを今考えた場合に、資源制約ということがあり得るんじゃないかと。

横山 まあ、それはありますね。

松田 その制約条件を技術革新がどんどん変えていきますよね。

工藤 だから、それは振れる......。

松田 それで技術革新がまた新しいビジネスモデルを生み出して、それがまた別の強みになったりするとか、非常に可変的ですよね。

横山 そうです。

工藤 だから、それは平衡、累進、反転効果の中でそういうものを全部議論を......。

横山 だから、「累進効果」があるわけです、追い詰められていくと。例えばエネルギー資源で、石油は45年と言われているでしょう。それをバレル40ドルまで上げると、オイルシェール、オイルサンドがエネルギー資源に入ってくるわけですよ。40ドルをちょっと超えれば、数字は正確ではないんですが、石炭液化が入ってくるわけですよ。

バレル40ドルと言うと今の倍近いかな。ところが、石油のうち3分の2はガソリンとして燃やしているわけです。残りは灯油やバンカー・オイルとか重油として燃やしていて、化学で使っているのは6%とか9%だから、基本的に全部燃やしているわけです。

そうすると、例えば今のガソリンの燃費がリッター30キロ、すなわち今の30倍になった途端に、石油の寿命は90年延びるんです。ところが、そこへ中国とかインドが車を使うようになると、また相殺されてしまうんですね。

だから、そういうモデルが既に世の中にあるんです。ここではそこにまで細かく入っていって議論をするのかと。どの辺で抑えて、しかも知的水準を落とさないような議論になるのか......。

工藤 そのとおりですが、多分まず初めにつくってみて、その中でさっきあった、この項目は今回はちょっといいよとか、こういう形でやっていきましょうとか、そういうステージに上げることが必要なのではないですかね。まず何かつくってみて、ここをこういう形で議論しましょうと。

夏川 ということは、世の中とか国際社会の動きに関係する要素を全部出してみるということですね。

工藤 一応ね。それは僕たちの、例えばここだったら......。

夏川 それで洗ってみて、まとめて......。

工藤 これは切ったり......。

夏川 それで今言われたように各層に分けて......。

工藤 では、ここでやってみよう、ここのベースでシナリオ、方法論を考えて、議論で走ってみようと。

横山 何でもいいのですが、最初にこういう方法論でやりましょうということを合意した上で、ベストかどうかは別として、それぞれの項目について少なくともそれで議論をしましたよという記録は残しておいた方がいいと思うんですね。

谷口 今言った、それこそ長期予測の要素をどれとどれにするかは、その1つ1つにしても、横山さんではないけれども......。

工藤 ある程度方法論があるし、いろいろあると。

谷口 どこまで精緻にするかという問題があるので、とてもじゃないけれども手に負えませんが、例えば中国だけについては4項目ぐらい立てて、割とそれこそ"おけ屋がもうかる"というところまで詰めてみるとかね。

横山 そうですね。

谷口 そうすると結構クリアカットになるのではないでしょうかね。

工藤 そうなりますよね。そこで集約されて、では、ここをやってみようという形になれば、そうなるし......。

横山 要するに「日本帝国陸軍の失敗の本質」を避けて、ちょろちょろあっちへこっちへと兵隊を配置しないで、ここだけ深掘りと。そして、それはこのように選びましたと最初に言って深掘りすると。

夏川 位置づけですよね。

横山 そう、位置づけです。最初にポジショニングさえはっきりして、ここを深掘りする、この深掘りはこういう方法論でやりますと言っておけば、もうそれで十分ではないですか。

夏川 位置づけをするためには、全体をまず......。

工藤 まずやらなきゃだめですよね。それがアジア会議の第1フェーズの項目の、いろいろな潮流変化を議論してみましょうという話なんですよ。だけど、アメリカということでもいいんでしょう。でも、中国か。

松田 アメリカと中国というのは、やはり欠かせないでしょうね。

横山 そうですね。

工藤 つまり、アメリカを中心としたこのシステム、それと中国ですよね。

横山 アメリカと中国は欠かせないんだけれども、それをやるのだったら、いろいろみんなの手あかがついているところに、何か新しい視点を持ち込むんだぞという決心が必要でしょうね、それ以上のところにという......。

工藤 こういう名前で、これと同じように名前を入れて出しましょうか(笑)。

谷口 結局、最終的作物としてはインパクトのあるものも必要ですよね。

工藤 これをつけて海外にも出しましょうよ。

横山 そうです。

工藤 こういうのを世界にも出しましょうよ。

谷口 自分の立場から見た中国の、こういうあらゆる、縦、横、斜めからここまで考えてみましたという、言ってみれば日本人の国益みたいなものを1つ念頭に置いた上での中国論というのは、世上そんなにないでしょう。

横山 ないかもしれないですね。

谷口 余りないですよね。

横山 知りませんけれども、企業の観点からはあるけれども、国の観点からは余りないでしょうね。

夏川 基本的にどうこうしようというあれはないんですから、こうなったら、このときはこうしようというだけで、謝りましょうという話ですから(笑)。

谷口 全部受け身なんですね。

夏川 まず基本的には、全部受け身ですよ。

工藤 それは、守るということだけだから受け身になっているんですかね。

夏川 というよりも、自分の国の安全とあれをよその国の信義に任せるという前文で来ているわけですから、とにかく基本的なものをよその国に任せてしまったわけですから......。

谷口 思考放棄ですね。

工藤 横山さん、今の話は、よくガラスで弱いところをポコッとたたくとバーンと壊れるという話があるじゃないですか。あの形になりますか。つまり、今は守りをベースに、すべて、安全保障はほかに依存しているから......。

横山 何か話がスーッと飛んでいって、ついて行けないんだけれども......。

工藤 まあ、いいや。いや、単純にちょっと今思っただけ。

夏川 そこは表に出す話ではないと思うのですが、そこも検証してみなければわかりませんし......。

横山 いや、私は前号に書いた論文で、日本のアスピレーションはThought Leadershipだと言ったのは、受け身のところから抜け出して、そういうところの能動性を出したいと思ったからなんですよね。それは日本の一種の責任だと思うんですよ。日本は我々が思っている以上に、外から見たら大国なんですよ。

書いたから繰り返す必要もないんだけれども、大衆文化で影響力を持っているのはアメリカに次いで日本であるということと、アジアにおける軍事力を、まあ、ハードを中心に評価しても結構なところにいるはずだと。

そうすると、日本はどうするの、どっちへ向いてどうしたいのということがわからないと近隣諸国は不安でしようがない。だから過剰反応をするよくも悪くも我々はこうしたいのだという意思を能動的に出すべきだ、それの一番通りがよいのはThought Leadershipなんだ、ヘゲモニーではないんだと。

80年代初頭にすでにヘゲモニーがとれないことはわかったのだから、そして、それは対中国という意味でも。中国はヘゲモニーの国でしょう。日本はヘゲモニーの国ではありません、Thought Leadershipの国ですということでいいではないかというのが私の結論なんですけれどもね。

松田 この方法論でやる場合に、私は、確かに横山さんが今おっしゃったようなThought Leadershipとか、そういう一定のアイデンティティーなり何らかの想定をある程度置かないと、こういうシナリオも書けないのではないかという気がして、例えばこの資料も......。

横山 裏にあるんですよね、アメリカの......。

松田 やはり意図がありますし、どこを重視してどこを重視しないかということもはっきりしていますし、その目的があって書かれているわけですから......。

横山 そうですね。

谷口 完全な帰納法ではないですよね。

横山 これは、みんなに期待されているから、じゃ、やろうかということではないですよね(笑)。期待されていようと、していなかろうと、アメリカはこうするんだ、アメリカはヘゲモニーをとるんだと。

夏川 ここでそこまでつくるんでしょうね。

工藤 一応始めた段階で、それは1つの仮説というか......。

横山 だから、5つのステップをご提案したときに、1と2を一緒に議論してはどうかと。要するに世の中を眺めると同時に、自分の強さ、弱さも早く評価してしまって、もうそこからおのずと、日本が持てる現実的なアスピレーションとはこういうことなんだというものがもう見えるようなところにまで早く行った方がよいと。

谷口 その意味では、その強さ、弱さのマッピングのようなことを早くやりたいですね。

工藤 今どこかでそれをまとめている人はいないんですかね。

谷口 いないと思います。そこはある種、我々がやれれば売り物の1つですよ。

横山 そうですね。

工藤 ああ、そこに専念したい。これはおもしろいよね。

横山 それは絶対的強さ、弱さではなくて、これもやはりコンパラティブ、相対的だから、やはり第1ステップの流れの中で強さが決まるんですよね。

工藤 そうですね。相対的というのは時間とか環境でも変更しますよね。

横山 そうですよ。だから、相対的強さ、弱さなんです。未来永劫不変、時間がとまったような強さ、弱さではないんですね。だから世界の流れという中での日本の強さ、弱さという形で第1ステップ、第2ステップを一緒にして議論をした方が実りがあるのではないか、早く行きたいところへたどり着けるのではないのかと。

工藤 つまり、第1ステップの議論をしながら、第2ステップでも......。

横山 その議論をはめ込む。

工藤 その議論も1つのテーマでやってしまうと。

横山 そうです。

工藤 結局、相対的に日本はこうなんだねというところまで行ってしまえば、1つ1つつながりますよね。1、2をつなげてやると。

横山 そのときに一種のディシプリンとして、日本はというと、これはだれでもそうなんだけれども、弱さばかりとうとうと雄弁に述べ立てる人が多過ぎるので......。

工藤 悲観的になってしまうんですよね。

横山 じっと我慢して、恥ずかしがらずに、強さは何なんだという議論をしなきゃいけないんですよね。強いと言ったらみんなが何か言うんじゃないかということなしに(笑)。1つ1つに対して強さは強さ、それから弱さの議論をしましょうと。

工藤 進め方はそれで全くアグリーですよね。

横山 だから、それはもうそうすることでいいんでしょう。それから、さっきおっしゃったように必ずトレースできるような方法論が最初に提示されていて、みんなが共有して議論をしていく、あっちこっち飛ばないと。

工藤 そうですね。

横山 それはもう司会がきちっと押さえ込まないと。

工藤 うーん、福川さんと話さないといけないな。

横山 福川さんがきちっと押さえ込んで、こういう議論でいきましょうと。

工藤 ちょっと横山さんも、なるべく日本にいてくださいよ。

夏川 ずっとおられるそうですよ。

横山 いや、私はいないです。(笑)

工藤
 なるべくいてもらうようにお願いしますよ。だって、これをつくるという話はすごいことですよ。

横山 だって、世の中にもっと適任者はいますよ。私、やはりフランスにいて見えたことというのがすごく大事なんです。日本にいたら多分ああいうふうには見えなかったろうなと。

谷口 フランスから見ると、やはり日本の大衆文化は相当大きいですか。

横山 それは、まずアネクドータルに言うと、フランスのテレビにフランス製テレビドラマはありません。カナル・プリュスにちょっとあるけれども、基本的に地上波5チャンネルでテレビドラマというのはほぼゼロです。

谷口 全部輸入物ですか。

横山 95%がアメリカ製、残りの5%はドイツ製とイギリス製で、アニメは日本製が50%ぐらいです。初めからあきらめているので、もうそのドラマはタイトルから何からフランス語で出てきますが、それは全部アメリカ製なんです。

それから、本屋へ行って大衆文学というのを見ると、一番スペースをとっているのはスティーブン・キングですよ。

私のフランス語の家庭教師は3人いるんですが、大衆小説を読みたいんだけれども、何がいいかと聞くと、みんなジョルジュ・シムノンなんですよ。それは1950年代のもので、しかも彼はベルギー人なんですね。それで今の作家はいないの、日本には宮部みゆきとか高村薫とか......。

工藤 よく知っていますね(笑)。

横山 こういう女流作家とかがいるんだよ、乃南アサとか、いるんだよと言っても、そんなフランス作家を若い女性である彼女たちも思いつかない。そのぐらい、要するにアメリカの大衆文化なんですよ。それはすごく悲しいことなんです。

谷口 本当ですね。

横山 それで、「千と千尋・・・」は見たかと聞くと、見た、でも、「もののけ姫」の方が深いよねとか言うんですよ(笑)。要するに何が言いたかったかというと、あの文章で書いたことは、極めて日本的なものとされていたものが世界的普遍性を持ったと。

あるチャンネルで"相撲ダイジェスト"というのをやっていますよ。

工藤 ああ、そうですか。

横山 1週間の取り組みかな、何かハイライトみたいのをやっていますよ(笑)。

要するにセ語にかかわらない大衆文化に関しては、日本はすごい影響力を持っている。すしも、ファッションも、ジュ・ビデオというのはテレビゲーム、これも全部みんなひっくるめてです。では、アメリカと日本以外にそれがありますか。

谷口 そう考えてみると、本当ですね。

横山 ないんですよ。それで、奇妙に日本的なものが普遍性を持っているとしてアクセプトされる時代が来たんです。

谷口 まあ、香港映画、インド映画はそれほどでもないですかね。

横山 でも、やはり持っている幅が違う。それはそう簡単には衰えない。なぜかというと、これは日本の持っている文化的特徴であって、例えば東浩紀が『動物化するポストモダン』に書いているようなことがほかの国で起こるか。私はフランスにいて、ああいうことはフランスでは起こらない、これは文化的特性であると。

だから、日本の競争力の強さというのは、サムスンが、基本的に言えばNECデザインの半導体、DRAMでもう世界最大になってしまった。投資能力に関しても毎年一工場だけで3000億から5000億を投資していける、日本ではできないというギブアップというのと別のところに、韓国と日本の文化的特性の違いから、日本が優位であるというものがかなりたくさんある。それは工業とつながっていて、そのようなところの評価なんですよ。だから、私は日本の強さということに関してはオンバランスを比較的に楽観しているわけですよ。

谷口 なるほど。

横山 軍事的にもどうなんですか、私は素人だけれども、アジアにおいてはかなり......。

夏川 軍事の話をされると弱いんですがね(笑)。

横山 ピュアに軍事力と......。

夏川 ぱっと見たときは、かなり持っています、確かに5兆円やって、兵力的にはですね。

横山 まあ、70%は人件費だけど(笑)。

夏川 まあ、そうなんですが、装備だけ見てもですね。ただ、アンバランスなんですよね。それは、もともとあるのは、攻撃をしないということになっていますから、来たときだけやるということですから、どういう状況のときにどれだけ力を発揮できるかということで、オールラウンドでは言えないというところが非常に弱いところなんですね。

ただ、今――若干オフィシャルな発言になりますが――攻められたときは何とかそれを防いだり、あるいは攻めさせないような意図を持たせる程度の近隣諸国とのバランスを持った兵力は持っていると。これは若干オフィシャルですが......。

横山 私は防衛という意味でも、それ以上のこと、かなり高度なことをやってきたと思っているんですよね。

夏川 装備的には高度なものをある程度持っていますが、意図的にはそういうあれは余りないと。ホンネで言うと、非常にいびつな兵力整備でやってきていますよと。

横山 ああ、そうかもしれません。でも、今、戦争の流れが核兵器を使うよりもピンポイント、軽量核兵器でやるかピンポイント攻撃ということになると、ピンポイント攻撃のハードウエアとソフトウエアを曲がりなりにも内製できる国というのはアメリカと日本ですね。しかも民生品でできてしまうというのは日本1国しかないわけです。

夏川 いや、まだ日本はピンポイントができるほどの能力は持っていませんよ。

横山 潜在的につくれる能力を持っていると。巡航ミサイルはGPSを使っているわけで、GPSは、日本はカーナビなど民生で物すごく使っているわけです。

夏川 使っていますよね。潜在的には持っていますね。

横山 GPSの精度は、わざと200メートルぐらいの誤差が出るように、しかも1カ月ごとぐらいに変えられているのを、それでもパッと精度を出すようなことを民生技術でやってきたわけですよ。

夏川 まあ、軍事力は、必ずしも今ある自衛隊の兵力だけではなくて、一般的な民間の力も含めた話でしたら、それは国力という話になるわけですから、そういう意味では高いでしょうね。

横山 だから、さっきの、やる気になるかならないかだけであって、民生品というのはもう関係なくつくってきた、そっちへパッと目を向けてしまえば、つくろうと思えばつくれてしまう国というのはアメリカと日本しかない。ヨーロッパ諸国であれだけの民生部品を持っているところはどこにもないですからね。

北朝鮮のミサイルのパーツの90%は日本製、しかも民生部品を買って帰っているわけでしょう。

夏川 そうみたいですね(笑)。

横山 どこまで本当か知りませんが、多分本当でしょう。そうすると、私は潜在的軍事力と言うと言葉はどぎついけれども、やはりかなりのものだと。中国はそこまでまだつくっていない。それで、つくるかというところになると、さっきの文化的特性の差が効いてくる部分がありますと。

工藤 そういう意味で強さ、弱さの評価なんですよね。

夏川 それはありますし、どのように振れていくかで、変化する度合いというのは、ほかの国に比べたら極めて大きいんでしょうね。

しかし、やはり体制自体もかなり変わってきつつありますし、今度は個人資産も認めるとか、そんな話になってきていますから、どんどん変わってきているから、そうなれば比較的西側のあれに近くなってくる。昔の"呼び込んで、耐えて、あきらめさせる"という戦略からはもう変えていますし、だんだん西欧型の戦略にもなってくるでしょうし、なれば当然、技術がそれに追いつかないといけないし、技術ができれば、またそっちになってくるでしょうから、それは変わっていく度合いは大きいと思いますよね。

谷口 あらゆる意味での、1つのパワーの自覚ですね。

横山 そうです。やはりそれをきちっとやるべきであって、日本人だけやっているのではなくて、アジア諸国のそういうことに見識のある人に......。

工藤 来てもらって......。

横山 ちょっと政治的発言は外して見たときに、本当のところ日本はどのように見えるのかということを聞くべきだと思うんですね。やはりすごい力があるのに、何か方向のはっきりしない怖い国だという印象だと思うんですよ。

私は靖国神社の問題の裏にもそういうことがあると思うんですね。中国も、日本はわからない国だから、要するにマリファナを水際でとめておかないと、それから必ずコカインに行くぞという感じでとらえてしまうんでしょうね。だから、日本のそういう方向は水際でとめておくべきだと。それをうまく民衆の感情論に乗っけて主張する。だから、やはり方向をはっきりさせて、そのコンテクストの中で理解してもらうということが必要なんです。

工藤 なるほどね。何を今さら言っているんだと思ったけれども、やはり僕たちに力があるとすれば、そうだよね。

谷口 ですから、とりあえず情勢認識の第1セクションのところを回しつつ、何かサブグループのようなもので、この強さ、弱さのそれこそマッピングと、特にパワーの自覚というところに力点を置いて......。

工藤 その議論を全部そっちの方に向かせると。

谷口 ペーパー的なもの、たたき台を早目につくるということはいかがですか。

工藤 そうですね、それしかないですね。

夏川 強さ、弱さの前提には、当然に影響する要素というのは入るんですね。

工藤 それは客観的な状況......。

谷口 一応きょう、いろいろな形で指摘されたようなレイヤー構造を幾つかに絞りつつ考える作業になるんでしょうね。

工藤 そうすると、第1ステップのところは生きますね。

谷口 だから、第1ステップが終わるまでに、その作業も終わらせて......。

横山 第1ステップは第2ステップと一緒になっていると。

工藤 一緒になっているということだから......。

谷口 そういうことですね。

横山 そうでないと、みんなの興味がもちませんよと。

谷口 それは恐らく大勢でやる仕事ではないですね。かなり集中してやらないと。

横山 やはりアジア諸国の人に入ってもらって、そこから、そういうテーマをはっきり絞った中での日本の評価ということを言ってもらうと。

それで、そんなに最初からほぐれて言わない可能性があるから、やはり3時間ぐらい議論をして、そのうちから本当に言ったところを取り出すというようなことをしないと、彼らが本当に見ている日本、感じている日本というのを言わない可能性があると思うんですよ。1時間の議論のために3時間使って、その部分を引き出すと。

谷口 何となくドタ勘ですが、シンガポールの人というのは中国も見ているし日本も見ているという意味で、案外客観的であるような気がするんですけれどもね。

横山 あります、はい。

谷口 例えば中国人に日本の軍事パワーについてホンネを言えと言っても、なかなか言わないですよね。

横山 言わないと思います。シンガポールにはシンガポールのプライドがあります。でも、しょせん人口250万人から300万人の国なので、そういうところにかかわらないわけですよ。だから言える人はいると思います。

工藤 では、進め方は、僕は谷口さんが言ったとおりでいいと思います。

松田 私もそれでいいと思いますし、その作業シートのようなものをつくって、どういう要素を重視していくかということは少し玉出しをして......。

工藤 あと、そのメンバーをちょっと決めなきゃ......。

松田 そうですね。

工藤 作業委員会は谷口委員会にしましょう(笑)。

谷口 もう、人使いが荒い(笑)。

工藤 これはすごく重要だから、皆さんでそれをちょっと......。

横山 電話でよければ参加します。(笑)

谷口 まあ、ネットでいいわけですよ。

横山 ネットでいいですね。

工藤 横山さんは、今の話で何か横山試案をメモみたいな形で、項目のところを谷口さんに出してもらうことはできませんかね。

横山 いや、試案と言うより、私は9月7日まではいますから、話し合ってその場で出した方が早いんじゃないですか。時間は十分取れますよ。

谷口 僕も取れます。

工藤 では、どっちかが案をつくって、その上でちょっと議論をお受けしませんか。では、谷口さんと松田さんの2人でやるとか......。

谷口 そうですね。

工藤 お願いしますよ(笑)、僕は今ちょっと別なことがいっぱい入っているから。

谷口 どんどんふえていっちゃうからね。

横山 そう外れないと思うよ。もうはっきり決めておいた方がいいです。

工藤 夏川さん、中長期の軍事的な戦略論のフレームというか何かというのは、何かないんですかね。

夏川 ありますけれども、余りお粗末なものだから出せないですよ(笑)。

横山 まず、軍事力という言葉は使ってもいいんですか。

夏川 それは一般的にはいいんじゃないですか。制服自衛官が使ってはまずいでしょうけれども(笑)、政治家もまずいかもしれないけれども、軍事力であることは間違いないですから、一般的には全然問題ないんじゃないですかね。

横山 またそれも、内部で思っておられて、バランスを欠いているとか、欠点がたくさん見えるけれども、別の観点から見れば結構来ているなというふうに......。

谷口 いや、来ていますよね。

夏川 客観的に見れば、それは言えると思いますよ。

谷口 イギリス海軍と海上自衛隊は、規模的に見てもどっこいどっこいでしょう。

夏川 規模的に見たら、海上自衛隊の方が大きいでしょうね。

谷口 大きいんですか。

夏川 ただ、向こうは戦略潜水艦を持っていたり空母を持っていたりということで、性格が違うということになる。

横山 でも、潜水艦が日本の周辺をうろうろしているのは、全部ちゃんと把握していますよね。

夏川 いや、それほどでもないですよ(笑)。そこまでは行かないです、ある程度はできますけれどもね。

工藤 進め方はどうしますか、夏川さんからもちょっと話を聞いて、何かメモのようなものを出していただければ、それでどこかで集約化して、ちょっと案を出して、もう1回やった方がいいと思いますね。

松田 そう思いますね。

夏川 それはやられるときに、私、時間があいていれば、一緒にそばにでもおって、必要があればお話ししますし......。

工藤 ええ、来てください。

横山 そうですね、そうしましょう。

工藤 いや、もうぜひ全部に出ていただきたいのですが、時間を取って、多分......。

横山 時間を取ってください。

谷口 ともあれ何らかの、それこそ作業シートなり何なり、たたき台的なものは紙が1枚、2枚要りますよね。それがないとお二方に来ていただいても......。

工藤 そうですね、それは要ります。それで、あと僕たちがこの前にやった、進行の項目と言うんですか、ゲストを呼ぶやつはもう始まっているわけですよね。あれのときに、では、やはりそういうことまで議論しましょうとかいう形をつくらないと。

谷口 まずレイヤーはこれとこれに決めましたという話と、対象として扱う国は中国に決めますということでよければ、それでしますとか、日本の強さと弱さの比較はこの軸でやりますとか、そういうことはさっさと決めてしまって、皆さんにご意見を言っていただいて、それはこうした方がよいとかああした方がよいとか......。

工藤 とりあえず山本さん、もう日程で何人か入っているんですよね。

山本 9月10日と12日です。

工藤 9月10日は佐藤前国連大使が国際連合の問題を。ああ、もう横山さんはいないのか。その1日しか取れなかったんですよね。

山本 そうです、佐藤さんはその8時から10時だけで、あとは9月12日です。

工藤 あと、イスラム問題などは9月だから、まだそんなにないわけですね。

山本 今はその2つだけ決まっています。

横山 このペーパーはイスラム問題をインドネシアでとらえているんですね。

谷口 どっちかというと東南アジアのイスラムみたいな話ですよね。

横山 そうですね、余りイスラム、イスラムと言っていないんですよね。

工藤 イスラムが横山さんが言われたような出生率で、かなり強くて、いろいろな各国の中での構造を変えてくるよということであれば、イスラムというのは非常に大きいテーマになりますよね。

横山 イスラム教というのは根本はすごくモダンな宗教なんだけれども、それが生活習慣と結びついていて、政教分離されていなくて、日常の生活の中に普通の宗教よりはもっと深く入っているから扱いにくいんですよ。あらゆる社会システムが扱いあぐねているわけです。しかも出生率が高い。フランスは今人口の10%がイスラム教徒なんだけれども、一番出生率が高いから、この比率はぐんぐん高まっていくわけですよ。

工藤 30年後はどうなっているかな。

横山 そうすると、ポリティカルには無視できない力になってしまうんです。アメリカが、ヒスパニックのパワーがすごく強くなるのと同じようなことなんです。

工藤 アメリカもそのイスラム化を気にしているのではないですかね。

横山 アメリカのイスラム化は遅いと思うけれども、アメリカの最大の問題はヒスパニックですよ。やはり出生率が高い。だから、ポリティカルなヒスパニックの影響はすごく強くなるであろうと。

工藤 では、とりあえずどうしましょう。松田さん、判断してください。

松田 では、まず谷口さんとの間で何かお互いに原案のようなものをすり合わせましょうか。

横山 そうですね、そうしてください。

工藤 きょうはどうもありがとうございました。

 すみません、谷口さん、今どのように作業をするかばかり考えていて、項目のことですが、確かにエネルギーはあり得ますよね。消費量と、不連続があるかもしれませんが、代替的なエネルギーが出てくるとか、それは中長期で、ある程度の変化というか、どのような将来予測というか、