「第3回 北京-東京フォーラム」報告会レポート

2007年9月27日

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 第3回日中フォーラムの報告会は、9月21日に日本財団ビルにて開催されました。パネリストとしてフォーラム当日にも参加した有識者9名が報告者として出席し、約50名の傍聴者が来場しました。

 報告会は、フォーラム当日メディア分科会でも座長を務めたNHK解説主幹の今井義典氏の司会で始まりました。

 はじめに、言論NPO代表の工藤泰志から挨拶がありました。工藤は、本フォーラムが2005年の北京におけるデモで両国政府の関係が悪化した際、オープンに本音で議論できる舞台を民間主導で作ることを目的として立ち上げられた経緯を説明し、3回目を迎えた今回でようやく第一ラウンドを終えたと感じる、と述べました。

 また、構造化された日中間の認識ギャップは未だ残っており、これを克服するためには困難があろうとも両国の世論調査を今後も続けると明言し、来年のフォーラムに向けてチャネルを発展させるため、今日は来場者と議論したいと呼びかけました。


 また、引き続き工藤から、スライドショーを用いて、フォーラム当日の会場の様子や各分科会(メディア/経済/安全保障/環境/金融/アジアの未来をどう描くか)の模様が、簡潔に説明されました。


 そして、列席したパネリストから、各分科会の様子やフォーラムの感想が述べられました。


 安全保障分科会については、まず元民主党政調会長の仙谷由人氏は、フォーラム全体を通じ中国側は台湾問題への日本の「挑発的態度」を意識していたこと、東アジアの軍事的緊張の緩和に向け腰の入った議論がなかったことを指摘しました。

070921_06.jpg また、慶應大学の添谷芳秀教授は、安全保障分科会では日中間の正常な関係に向けた「まともな議論」がなされたと評価しました。また、中国は世界戦略の中でどう日本を捉えるかに関して戦略を転換し始めている一方、軍に関する話をも実直に議論する姿勢が中国市民社会に育っているのを感じる、とも述べました。


070921_09.jpg 加えて財団法人平和安全保障研究所理事長の西原正氏は、メディアが見守る中での議論であったために中国側は政府見解に沿った趣旨の発言に止まってしまった、彼らから率直な意見をいかにして引き出すかが今後の課題となるだろう、と添えました。


070921_08.jpg 経済分科会については、セブン銀行社長の安斎隆氏から報告がありました。安斎氏は、東アジアさらには世界経済の結びつきは非常に深くなっており、これからは日本の問題は中国の問題、中国の問題は日本の問題、という意識で取り組んでいくことが必要であると指摘しました。また、会場からの「中国バブルは崩壊するのか?」という質問に応えて、中央銀行が必要な措置が行われていない現状に触れつつ、中国経済の動向は日本やアメリカに連鎖的に影響を及ぼす可能性は大きく、本フォーラムを通じて何とか中国経済のソフト・ランディングへの道を拓きたいと願っていると述べました。


 メディア分科会については、朝日新聞前ヨーロッパ総局長の木村伊量氏が、日中両国民の大半はメディアを通じて相手国の情報を得ているという現状を踏まえて、お互いをよく知る媒体として機能することに加えて、経済的なつながりが深まるともに摩擦が増えていく中で、ナショナリズムの暴発を防ぐこともまたメディアの重要な役割になるだろうと述べました。


070921_07.jpg また、共同通信社編集委員の会田弘継氏は、相手国に対する意識が急速に変化していること、その中でフォーラムではメディアの役割をめぐる議論が活発に行われたことを報告しました。

 アジアの未来分科会については、麗澤大学教授の松本健一氏は、フォーラム全体を通じて、東アジア共同体の議論はなされなかったこと、また日本のインド重視政策は中国を敵対視してのものではないし、北京オリンピックに向けてひた走る中国の姿は「汚染最先進国」の日本の30年前の姿に重なり、中国とシェアできる日本の経験は多いと中国に訴えてきたこと、を報告しました。 

 公明党の上田勇氏は、反日デモから二年経って両国の認識の急速な変化や、中国がアジアの盟主として自信を深めている点を指摘し、分科会では幅の広い自由な議論ができたと述べました。慶應大学教授の国分良成氏は、日中関係のベースはまだ安定しておらず、また両国ともに自国のヴィジョンが見えない状況下で、ナショナリズムの暴発を防ぐことが重要だと指摘しました。


 分科会報告と感想につづいて、今後のフォーラムのありかたについて、パネリストから意見が述べられました。両国間の体制の違いを乗り越えてフォーラムを継続させることの意義(国分氏)、日本には中国をアジアに開いていく役割が求められているのではないかという指摘(松本氏)、一年に一回会うという七夕的状況を実質的なネットワークの形成にまで発展させることの重要性(木村氏)などについて言及がなされました。


 最後に工藤は、本フォーラムが手弁当による参加者や日中共催者間での費用折半によって運営されていることを述べ、また水面下では共催者間でかなり激しい議論もあったことに触れつつ、日本側の積極的な動きに戸惑う面を見せたものの、結果としては、中国政府もまたこのチャネルの重要性を認識し、積極的に位置付け始めたと指摘しました。

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 その上で、フォーラム自体をメディア化すること、すなわちアジアの共通課題についての議論を恒常的に議論できるチャネルを形成し内容を世界へ発信するという本フォーラムの最終的な目標を述べ、誰もが参加でき成果を共有できるフォーラムにしていきたいとの言葉で報告会は締めくくられました。

動画でみる 「第3回 北京-東京フォーラム 報告会」

 第3回日中フォーラムの報告会は、9月21日に日本財団ビルにて開催されました。パネリストとしてフォーラム当日にも参加した有識者9名が報告者として出席し、約50名の傍聴者が来場しました。