基調講演 : 陳昊蘇 ( 中国人民対外友好協会会長 )

2007年8月29日

p_070829_03.jpg陳昊蘇(中国対外友好協会会長)
チェン・ウスゥ

1942年5月江蘇省阜寧県生まれ。1965年8月中国科学技術大学卒業。1981年8月共産主義青年団中央書記処書記。1984年8月北京市人民政府副市長。1987年8月中国ラジオ・映画・テレビ放送部副部長。1990年3月中国人民対外友好協会副会長、中ロ友好協会副会長を兼任。1999年9月中ロ友好協会会長。2000年9月中国人民対外友好協会会長。第四、五、六回全国人民代表大会の代表。第九回全国政治協商会議委員、第十回全国政治協商会議委員。

基調講演

 尊敬する趙啓正先生、小林陽太郎先生、皆様、友人の皆様おはようございます。我々が参加している第3回会議はこの2日間で順調に開催されました。興奮の気持ちで出席し、出席者に敬意を表し、主催者に熱烈な祝賀と感謝の気持ちを表します。ありがとうございます。


 北京-東京フォーラムはこの3年以来成功経験が蓄積しています。それは、主に遠大な目標と実務的努力を結びつけるということです。遠大な目標とは、健全な発展に取り組み、10年単位で困難を脱却することであり、実務的努力とは、直面する状況について真面目に調べ、相違を認め率直に議論し、チャレンジに満ち満ちた試みを通じて、現実によい影響を及ぼすことです。

 2年前、我々は困難な中から出発しました。当時さまざまな情報がありましたが、これについて我々は楽観視できませんでした。しかし、双方の有識者はこれをきっかけに関係改善に尽力し、互いに善意を示しあい、そこから中日関係改善のビジョンを描くことができました。我々は期待の中から改善を実現したのです。

 2006年中日関係は新たなチャンス迎えました。まもなく総理となる安倍氏がこのフォーラムに参加し、中日関係改善を予告し、それが安倍総理の 10月のいわゆる「氷を破った旅」の実現、そして今年4月の温家宝総理の「氷を溶かした旅」の実現につかながったのです。双方有識者はこの展開の中で積極的な役割を示し、真摯な意見を述べ、その示した構想の一部は実現されました。我々は友好的な努力を今後も守っていきます。


 最近の世論調査の結果には、中日の世論がさまざまな認識と感情が比較的良好な方向に転換しつつあるという結果が出ています。中日有識者が中日関係改善を評価しているのです。一般国民はそれほど際立ってはいませんが、中国では特に学生市民の間で比較的大きく改善されました。

 ただし両国政治関係の転換は始まったばかりであり、民間に深い影響を与えるには時間がかかると考えられ、盲目的に楽観はできません。

 引き続き実務的に取り組み、遠大な目標を実現にしなければならないと考えています。


 今回のフォーラムでは、我々は安倍総理の祝辞を高く評価いたします。建設的努力を蓄積するという言葉を高く評価します。真摯に努力しなければなりません。我々はまだ、発足段階にあるのです。

 我々はともに有益な協力を進展させ、ともにフォーラムを成功させ、ともに大きな影響をもたらすことが必要です。

 北京-東京フォーラムは3年の時期を経て、次は安定の3年間に入るでしょう。第3の3年間が始まる第7回のとき、我々は創設者が満足できる段階に入ると思います。
 この会議の成功を確保するためにこの10年の広々としたビジョンを実現するために、我々は率直な議論と相互信頼の精神を結びつけることが重要であります。

 現在、中日関係には様々の現実的問題があります。しかし、矛盾を回避せずに熱烈な論争を通じて解決を目指すことで、問題解決のルートを見つけることは容易になります。中日の出発点は問題解決を求め、友好的解決を求め、ともに国際社会に貢献するということにあります。


 私が参加した安全保障の分科会では、双方が相当敏感な問題にまで触れ、矛盾も対立も鋭かったのですが、パネリストの姿勢は非常に率直であり、また平和的でありました。

 両国政府間は既に戦略的互恵関係構築で合意しましたが、具体的領域に渡ると相手を戦略的ライバルとみなして相互信頼が欠けていると考えています。関係構築には時間がかかります。我々はせっかちになってもいけないし、消極的に待っているだけでもいけません。まずはエリートレベルで相互信頼関係を構築することが必要だと考えています。

 宮本大使が昨日のプレゼンで、「日本はまだ強くなった中国と付き合う心理的心構えを持っていない。」とおっしゃいました。中国がもう強くなったとは思いませんが、今後どのように付き合っていけばいいか、日本が心構えを持っていないとおっしゃったことは、もっともだと思います。2つの大国が共存し、強くなりつつある中国と既に強くなった日本が並立の状態に位置づけられており、これは世界の歴史に前例のないことであります。もし2つの大国が争うということになれば、世界に懸念をさせてしまいます。安全と繁栄はなくなってしまいます。2つの強国が手を携え、win-winを実現し、平和発展を促進すれば、アジアの進歩、世界の発展に対して最大の貢献をできると思います。

 中国には歴史的に王道と覇道の対立がありました。中国は覇道を主張せず、王道を主張します。これは孫文の日本において行った演説の精神でもあります。これに基づいていれば、国際社会で矛盾を引き起こすこともせず、紛争も引き起こすことはありません。

 中国のホットな問題はいずれも中国が引き起こしたものではなく、中国脅威論は欧米メディアが騒いだもので、中国は被害者なのです。中国はこのような問題で注目されることを好んでおりません。私の長年の観察では、中国は覇権主義に反対する立場がはっきりしています。互恵関係構築への願いは真摯なものです。他国に傷を与え、故意に友人への態度を馬鹿にする必要はないのです。友達の韓国と意見、善意の意見を聞きながら仕事をしていきます。日本と付き合うときもこういった姿勢で付き合っています。


 私が日本に言いたいのは、中国が繰り返して世界に公表している通り、平和的発展に向けて進むということに注意を向けて欲しいということです。中国の発展は他国に対して脅威と損害を与えることはしません。中国のGDPは世界経済の5%を占めます。中国が世界に与えている影響はとても大きいのです。中国が発展することは、世界の進歩に貢献するということになります。もし日本の友人が中国のこういう基本的立場を理解していただければ、世界の問題について合意を得ることができます。日本サイドも中国の立場を理解し、賛同しなければいけません。

 日本は戦後、平和の道を選びました。日本には多くの長所があり、多くの中国人民が学ぶべき点があります。中日友好事業に関心を持つものとして、日本のこういう状況を認めており、それを学び取りたいと思っています。我々はそういう相互信頼を持って問題を認識すれば、我々の協力の増進、両国関係の発展と進歩に有利だと考えています。

 第三回北京-東京フォーラムに参加しましたが、中日代表がこのフォーラムの中で表した友好精神に大きな喜びを覚えました。
中国にとって、日本と一歩一歩友好関係を構築するということは重要な願いであります。中国は日本と手を携えてこのフォーラムを成功させていきたい。
一緒に頑張りましょう。