分科会 【 地球温暖化と水問題 】 レポート

2007年8月28日

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中国側司会:
    杜 平 (国家発展・改革委員会トレーニングセンター主任)
パネリスト:
    韓文科 (国家発展・改革委員会エネルギー所所長)
    高之国 (国家海洋局海洋発展戦略研究所所長)
    宋小智 (国家環境保護総局対外合作センター副主任)
    李建嵩 (中日合弁ANFUKE技術株式会社社長)
日本側司会:
    福川伸次 (財団法人機械産業記念事業財団会長 元通商産業事務次官)
パネリスト:
    梅田邦夫 (在中国日本国大使館 公使)
    松井孝典 (東京大学大学院新領域創成科学研究科教授)
    水野清 (元内閣総理大臣補佐官)
    尾田栄章 (第3回世界水フォーラム事務局長 特定非営利活動法人日本水フォーラム相談役)
    本郷尚 (国際協力銀行審議役、環境ビジネス支援室長)

 環境問題の分科会は、日本政府の立場から梅田邦夫氏(在中国日本大使館公使)が安部首相の「美しい星地球」構想の説明を中国側に行うことをもって始まりました。

 その後、日中両国のパネラーが環境問題についての認識を順次述べていきましたが、尾田栄章氏(第三回世界水フォーラム事務局長)が「ODAと書いて尾田です」とジョークを言う一幕もあり、討論は和やかな雰囲気で始まりました。そして、環境問題における日中の現状と戦略的互恵関係の重要性が再確認されました。

 水野清氏(元内閣総理大臣補佐官)が、CO2をどれだけ下げるか、ゴミ分別、室内温度の調整など、もっと具体的な対策の議論を行いたいと提案し、分科会の後半では、さらに本格的な議論が展開されることになりました。

 中国側の李建崇氏(中国合弁ANFUKE技術株式会社社長)は、黄砂の与える日本各地への影響や、重慶の工業汚染が日本においても観測されたことなどを挙げ、日本や海外においても中国の環境問題が影響しているとの認識を示しました。また、韓文科氏(国家発展・改革委員会エネルギー所所長)は、発電所の合併、環境に悪いセメントの使用禁止を進めていることや、各省と1000社が協議を結び、政府規定の省エネ目標達成に向けて努力している現状を報告しました。

 さらに、「中国は発展途上で都市と地方の環境問題を一様に考えることはできない」(水野氏)との発言を受けて、中国側は、中国ではソーラーシステムの普及大会などを行っているが、法律や規則で地方にはこれらの設置を行えない現状など、具体例を挙げながら、発展途上であるゆえに高い水準での環境対策は困難であることを強調し、日本側に理解を求めました。

 京都議定書への積極的な参加を日本側が求めたことに対しては、中国側から、2012年までは参加していないが、それ以降の義務は自分達も果たそうと思っているとの回答がありました。また、韓氏は「先進国か発展途上国かではなく、世界規模で考えることが大切だ。環境対応システムを構築すべき。中国の指導者も大変興味を持っている」と発言しました。

 加えて、梅田氏が「北京オリンピックについては、環境面で協力したい」と発言し、特に光化学スモックの関連で、ノウハウや経験を提供する用意があると述べ、日本の北京オリンピックに対する積極的な姿勢を強調しました。環境教育や専門家の育成の面ではまだ改善の余地があることにも言及がありました。

 一方、中国側から「中国の環境問題への対応は政治問題とは切り離すべきであり、中国が大きくなったから日本は援助しなくていい、というのはおかしい。韓国は協力したいと言っており、中国の環境対策は日中韓で対応すべきだ」(韓氏)など、日本の中国に対する開発援助打ち切りに不快感を表す一幕もありましたが、日本も中国の環境対策に積極的に参加していることが強調され、中国側も理解を示しました。

 最後に杜平氏(国家発展・改革委員会トレーニングセンター主任)が「気候変動、水環境についての日中協力は最重要の分野であり、日本の協力に感謝している。日本側はもっとスピードをあげて具体的にやりたいと言っており、中国側も同じことを望んでいる。共通認識として、中国は全体としては途上国だが、一部の地域では大変進んでおり、そうした地域では環境保護の基準を上げるべきで、開発の遅れている地域はその対象にすべきではなく、すべてを一律にすることはできない」として、今回の会議での両国の共通認識をまとめました。社氏は最後に、「お互いにもっとお互いの立場、やり方、困難を理解して、信頼関係を作ればいろいろなことがやりやすくなる」と付け加え、日本側も同様の考えである旨を述べました。

 以上、この分科会では、日本側は中国の現在の環境対策に対する理解を示し、オリンピックや水問題において積極的姿勢を表明しました。中国側も今後の日本の協力に期待を寄せていると述べ、両国とも環境問題への対応を通じた互恵関係の強化を願っていることが確認されました。