有識者264人が見た「日本の外交についての認識」とは

2013年9月19日

 現在、日中、日韓の関係が悪化する等、東アジアの地域ガバナンスが不安定化してきています。この状況を打開するためにも、民間が果たす役割が重要であると考え、言論NPOでは10月下旬に北京で「第9回 東京-北京フォーラム」を開催する方向で準備を進めています。

 そこで、これまで言論NPOの活動に参加していただいた、会社役員、メディア関係者、官僚、学者・研究者、NPO・NGO関係者など日本の有識者約800人を対象に、「日本の外交についての認識」についてアンケートを実施しました。期間は2013年9月11日から13日にかけて行い、264人の有識者に回答いただきました。


半数近くが軍事紛争の発生を懸念

 アンケートではまず、尖閣問題を巡る日本と中国の対立について、最も懸念することは何かを尋ねたところ、「東シナ海における偶発的事故による軍事紛争の発生」が44.3%で最多となり、「ナショナリズムの過熱による日中両国の本格的な対立」が37.9%で続き、日中間に深刻な対立を懸念する声が高まっています。一方で、日本やアジア経済に与える影響は限定的ととらえています。


問1.尖閣問題を巡る日本と中国の対立について、あなたが最も懸念していることは何ですか。【単数回答、N=264】

尖閣問題を巡る日本と中国の対立について、あなたが最も懸念していることは何ですか


日中間の対立の短期的な解決は困難

 続いて、先日行われたG20サミットで日中首脳が就任後初めて言葉を交わすなど、改善の兆しが少しずつ見えつつあります。そこで、今後の日中間の対立についての見通しを尋ねたところ、半数近くが「解決はするが、かなり長期化すると思う」(45.8%)と問題の解決は長期化するとの認識を示しました。また、「そもそも解決はできないと思う」と悲観的な見方をしている有識者も38.6%と4割近くに上っています。

 一方で、「年内には解決すると思う」と回答した人は皆無で、「年内の解決は難しいが、1、2年のうちには解決すると思う」も10.6%にとどまり、日中間の対立の短期的な解決については懐疑的に見ています。


問2.先日行われたG20サミットにて、安倍晋三首相と習近平国家主席が立ち話で言葉を交わしました。あなたは、尖閣問題を巡る日中間の対立についてどのような見通しをお持ちですか。 【単数回答、N=264】

尖閣問題を巡る日中間の対立についてどのような見通しをお持ちですか

 偶発的事故回避、紛争の平和的解決に向けた動きを望む声が多数
次に、日中間における尖閣問題について、政府外交はどう対応する必要があるのかを尋ねました。

 「日中間のホットライン構築など、偶発的事故回避に向けた取り組みを行う」が36.7%で最多となり、「紛争の平和的解決に向けた合意をする」が21.6%と続きました。問1でも示された通り、多くの有識者は偶発的事故の回避、紛争回避を最も重要視しています。一方で、「二国間での解決は困難なため、国際司法裁判所に提訴し国際法に則り解決する」、「領土を守るため、日本の実効支配をより強化する」、「当面放置しておく」はそれぞれ1割程度にとどまっています。


問3.日中間における尖閣問題について、政府外交はどう対応する必要があると思いますか。【単数回答、N=264】

日中間における尖閣問題について、政府外交はどう対応する必要があると思いますか


政府外交だけでは不十分

 次に、日本と近隣職との対立が、国民感情の悪化やナショナリズムが過熱を招いている現状について、政府外交だけで事態を解決できると思うかを聞きました。

 これに対して、8割近くの有識者が政府外交だけでは「解決できないと思う」(40.9%)、「どちらかといえば解決できないと思う」(39.0%)と回答しています。その理由を記述式で回答してもらったところ、政府外交のみならず、事態の解決に向けて、経済や文化、メディア交流など様々な民間のチャネルを活用して、多角的な交流を行い、緊張緩和を行っていくことが必要との記述が多く見られました。

 一方で、「解決できると思う」(6.4%)、「どちらかといえば解決できると思う」(11.7%)の回答は2割にも達していません。同じように記述式で理由を尋ねたところ、中国の政治体制なども絡み、最終的には政府外交でしか解決できないとの回答が多くみられました。

 また、メディア報道の在り方を見直していく必要があるとの記述回答が、全ての選択肢に共通して見られました。


問4.東アジアでの日本と近隣諸国との対立は、国民感情の悪化やナショナリズムの過熱を招いています。あなたは、こうした事態は政府外交だけで解決できると思いますか。【単数回答、N=264】

東アジアでの日本と近隣諸国との対立は、国民感情の悪化やナショナリズムの過熱を招いています。あなたは、こうした事態は政府外交だけで解決できると思いますか

その理由をお聞かせください。   ⇒回答ページへ


冷静な議論を求める有識者

 最後に、言論NPOが10月下旬に開催を予定している日中間の民間の議論の舞台である「第9回 東京-北京フォーラム」に期待することは何かを聞きました。

 「日中間の現状に関する識者による冷静な議論」が69.7%で最多となり、「両国民の感情悪化に関するメディア間の議論」(51.9%)、「偶発的事故の回避や紛争の平和的解決に向けた民間レベルの合意」(43.2%)が続くなど、民間の場では、政府外交ではできない冷静な議論を望んでいることがわかります。


問5.言論NPOは10月下旬に「第9回 東京-北京フォーラム」を開催する予定です。あなたは、今回のフォーラムに何を期待していますか。 【複数回答、N=264】

言論NPOは10月下旬に「第9回 東京-北京フォーラム」を開催する予定です。あなたは、今回のフォーラムに何を期待していますか


⇒「その他」と回答した人の具体的な記述はこちら


 言論NPOでは、10月下旬の「第9回 東京-北京フォーラム」開催に向けて準備を進めています。フォーラムの詳細などについては、随時、言論NPOのホームページで公開していきますので、今しばらくお待ちください。

 現在、日中、日韓の関係が悪化する等、東アジアの地域ガバナンスが不安定化してきています。この状況を打開するためにも、民間が果たす役割が重要であると考え、言論NPOでは10月下旬に北京で「第9回 東京-北京フォーラム」を開催する方向で準備を進めています。
 そこで、これまで言論NPOの活動に参加していただいた、会社役員、メディア関係者、官僚、学者・研究者、NPO・NGO関係者など日本の有識者約800人を対象に、「日本の外交についての認識」についてアンケートを実施しました。期間は2013年9月11日から13日にかけて行い、264人の有識者に回答いただきました。