「第9回 東京-北京フォーラム」が果たす役割とは

2013年10月23日

日中間で、冷静で真剣な、そして建設的な議論をこのフォーラムで実現したい

 明石康氏(「第9回 東京-北京フォーラム」実行委員長、国際文化会館理事長)

 尖閣問題などで、日中関係は1972年の国交正常化以来、非常に悪い状況にあると言われています。そのような状況であるからこそ、民間としてこの悪い状況を打開する道をある程度、築くことができるのではないかという意気込みで、9回目の「東京-北京フォーラム」に臨みたいという風に考えています。

 こういう民間の対話において、日中間の全ての問題が解決できるという夢は誰も持っていないと思います。また、民間の力は限られていると思います。外交の本筋というのは、どうしても政府との交渉によるしかないわけですが、それに必要な道をつくる、環境を整備するというような仕事は、民間でもかなりの程度までできると思います。また、民間の力は年を追うごとに、中国のような国においても強まっているのではないかと思います。我々は事態を軽視しないで、また楽観すぎるようなことにならないように気をつけながら、日中間の本物の冷静な、真剣な対話をしたいと思います。単なる言い合いや、口げんかにならないように、建設的な道を両国で歩み寄りながら探していく、という覚悟で臨みたいと思っています。


日中関係が厳しい状況の中で、数少ない対話の場

 宮本雄二氏(「第9回 東京-北京フォーラム」副実行委員長、宮本アジア研究所代表)

 今回の「東京-北京フォーラム」は日中関係が本当に厳しい時に、数少ない対話の場として実現される、ということで緊張しますが、非常に期待もしています。民間の立場ということを最大限に活かしながら、率直に私たちが考えていることを伝えて、彼らがどういうことを考えているのか、ということを聞く。そして日本と中国をこれからどうしていけばいいのか、ということをお互いに探りながら、共同作業をできるだけやっていきたいと思っています。

 結果というよりも、今この時期に、こういう対話が開かれ、日中間で率直な話し合いが行われるということ自体が、大変すばらしいことだと思います。言論NPOのスタッフの皆さん方も大変ご苦労されたと思いますが、よくおやりになっていると思います。


アジア経済の屈折点というタイミングで行われるフォーラムに期待

 山口廣秀氏(日興フィナンシャル・インテリジェンス株式会社理事長、前日本銀行副総裁)

 今、アジアの経済は少し成長力が鈍ってきているという感じです。一部では、資本が海外に流出したり、双子の赤字が非常に気になるなど、いろいろなことが言われるようになってきています。したがって、ある意味でアジア経済の屈折点にあたるこの時期に、アジアの大国である日本と中国がいろいろなことを話し合っていくということは、非常にいい機会ではないかという風に思っています。

 私も3月まで日本銀行の副総裁をやっていましたので、特に金融という面に力点を置きながら、日中で協力してどのようなことができるのか、あるいは、日本として何ができるのか、ということを頭に置きながら、様々な議論に積極的に参画していきたいと思っています。よろしくお願いします。


過去9回の経験も踏まえながら、実りある率直な議論を行いたい

 山田孝男氏(毎日新聞社政治部専門編集委員)

 私は、2005年の1回目のフォーラムから、9回全部出させて頂いています。その中でも、今回は一番厳しい環境の中で開催されるフォーラムだと思います。言語の壁はありますが、上滑りしない発信といいますか、率直に交流したいと思います。

 言葉の使いようでコミュニケーションがかえって乱れることもありますから、今までの経験を踏まえて、しかし率直な話が実るように、という思いで臨みたいと思います。


日中間で忌憚なく議論を交わすという1つのシンボルとしてのフォーラム

 小倉和夫氏(国際交流基金顧問)

 このような時期に、日本と中国の関係者が集まって、忌憚なく議論を交わすということ自体に意味があると思います。なぜかというと、日中関係が全体的に緊張していることもあり、不測の事態が起こらないように、どういう事態が起きても話し合いの場は開かれているという1つのシンボルとして、言論NPOが行う「第9回 東京-北京フォーラム」があるのではないかと思います。

 もう1つは、様々な問題が政治問題化しやすい傾向があります。ですから、ある意味で非政治家、つまり政治的事案から離れたところで議論できるような機会を、この「東京-北京フォーラム」が提供できるのではないかと思っています。

 そういう意味でも、このフォーラムが日本と中国だけにとどまらず、第三国、あるいは世界から見てもこの時期にフォーラムを行い、議論が行われることは意味があることだと思います。


山口昇氏山口昇氏(防衛大学校安全保障・危機管理教育センター教授)
 冷静で建設的な議論を通じて空気を和らげることが使命だと思います。9回を重ねた人間関係に信頼してこの使命に邁進する所存です。


東郷和彦氏東郷和彦氏(京都産業大学教授、元外務省条約局長)
 尖閣問題をめぐる日中間の現状は未だ極めて危険な状況にある。どこに問題があるか、解決のためになにがなされなければならないかについて、民間の研究者の立場から参加し、先方の意見をていねいに聞きたい。

小野田治氏小野田治氏(前航空教育集団司令官、元空将)
 両国間には難しい問題が横たわっていますが、相互の信頼関係さえあれば解決できぬ問題はないと信じております。本フォーラムがその一助となることを願って止みません。
 米国のアカデミズムの中でも、中国人の学生やフェローの皆さんと話すときにはお互いに領有権問題に触れないように気を使っている雰囲気があります。一方で率直かつ建設的な対話をやろうという動きも胎動しつつあります。自称「トラック3」の対話に、本フォーラムの成果を持ち帰りたいと期待しております。