言論外交の挑戦

国際シンポジウム全体報告

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国際シンポジウム 3月29日(土)、言論NPO「新しい民間外交イニシアティブ」が主催する国際シンポジウム「新しい民間外交の可能性~東アジア地域の紛争回避と政府間外交の環境づくり~」が都内のホテルで開催されました。今回のシンポジウムには、アメリカ、中国、韓国、イギリス、シンガポールの5カ国に日本を加えた6カ国の識者(※)が集まり議論が行われました。


※今回のシンポジウム登壇者

【日本】明石康(国際文化会館理事長、元国連事務次長)
    小倉和夫(国際交流基金顧問、元駐韓国大使)
    川口順子(明治大学国際総合研究所特任教授、元外務大臣)
    近藤誠一(近藤文化・外交研究所代表、前文化庁長官)
    宮本雄二(宮本アジア研究所代表、元駐中国大使)
    三ツ矢憲生(外務副大臣)
    工藤泰志(言論NPO代表)、
【中国】趙啓正(中国人民大学新聞学院院長、元国務院新聞弁公室主任)
【韓国】李淑鐘(東アジア研究院院長)
【米国】スコット・スナイダー(外交問題評議会(CFR)朝鮮半島担当シニア・フェロー)
【英国(アジアオフィス)】アレクサンダー・ニール
             (IISS-アジア シャングリラ・ダイアローグ担当シニア・フェロー)
【シンガポール】ムシャヒド・アリ(RSISシニア・フェロー)


工藤泰志 冒頭で、言論NPO代表の工藤が「東シナ海では偶発的事故から日本と中国の間で紛争が起こる可能性があるにもかかわらず政府間外交が機能していない状況にあり、世界が心配している」と現状の問題点を指摘しました。その機能していない背景の一つとして、「排他的で感情的な世論が政府に及ぼす影響が大きくなり、政府が動きにくくなっている」ことをあげました。そして、「この構造を変え、気まぐれな『世論』ではなく、課題解決の意思を持つ『輿論』が強くなれば、政府間外交も動きやすくなる。そうした各国の輿論が国境を越えて結びつたときに、アジアの外交のイノベーションが起きる」と述べ、このシンポジウムをそのためのキックオフイベントとしていくことへの抱負を語りました。

明石康氏 主催者を代表して挨拶に登壇した「新しい民間外交イニシアティブ実行委員会」の実行委員長を務める明石氏は、「『民間外交』という言葉は美しいが、果たしてそれは本当に可能なのか。外交はプロの外交官、政治家がやるものではないか、と考えている人は多い」と指摘しました。その上で明石氏は、先日行われた日米韓首脳会談で日韓の首脳同士が、米国お膳立の会談では、肝胆相照らしながらの相互理解を深められなかったことに触れ、「特に民主国家においては、直接の外交の担い手は外交官、政治家であるとしても、国民間の相互理解を醸成し、外交環境を良好なものにしていくための役割は民間が担っていくべきだ」と述べ、「民間の力、言論の力、理性の力がどれだけ、外交を国民間の相互理解に立脚し、それぞれの国の目指すところと調和させられるか。このシンポジウムで民間外交の可能性を議論しながら探っていこう」とパネリスト、聴衆らに呼びかけました。

基調対談 続いて、三ツ矢外務副大臣と、工藤による基調対談が行われました。

 対談の中で、「日本と近隣国の対立は、国民感情の反発とナショナリズムの過熱を招いているが、こうした事態は政府間外交で解決できるのか」という工藤の問いかけに対し三ツ矢副大臣は、「政府としてできることは、なるべくナショナリズムを煽らないようにすることくらいである」とした上で、「そこで、民間外交の出番である」と述べました。その理由として、「国民感情の悪化が、誤解や偏見に基づくものであれば、国民間で直接対話をすることが最も解決への近道となる」と説明し、民間外交の役割へ期待を寄せました。

三ツ矢副大臣 さらに、三ツ矢副大臣は、「外交力とは国としての総合力である」と述べ、民間に優れたオピニオンリーダーがいて、社会の中で課題解決に向け充実した議論が行われている国は、その政府の外交も確かなものになる、との認識を示しました。
140329_kudo3.jpg 最後に、今後の東アジアにおける政府間外交の見通しについて問われた三ツ矢副大臣は、「日中、日韓首脳会談の実現は直ちには難しいが、各国には共通の課題は山積みされているので、まずは実務的な分野での協議を進めていく。それを積み重ねていくことで関係を改善し、首脳会談再開につなげていく」との方針を示しました。
 これを受けて工藤は、「政府側とも連携して国境を越えた課題解決に取り組んでいきたい」と応じ、基調対談を締めくくりました。


 その後、「世界は北東アジアの対立をどう見ているか」「パブリック・ディプロマシーと『言論外交』」「『不戦の誓い』と東アジアの新しい秩序作り」と題した3つのテーマによるパネルディスカッションが行われ、各国の識者、日本側の参加者と活発な意見交換がなされました。


 シンポジウム終了後、記者会見が行われました。会見には「新しい民間外交イニシアティブ」の実行委員長である明石氏、同実行委員の宮本氏、川口氏、藤崎一郎氏(上智大学特別招聘教授、元駐米大使)、工藤の5名が出席しました。

 まず、シンポジウムでも指摘された、昨年、日中間で合意した「不戦の誓い」の今後の具体化について、工藤は「不戦の誓い」をさらに大きく展開にしていくため、5月ごろに中国に行き、今年の「東京-北京フォーラム」の具体化のための協議を行うと述べました。そして、「どんなことがあっても手段として戦争しない、平和的に解決するということを、最終的に東アジアの秩序作りにつなげたい。マルチの対話のメカニズムとして来年夏までに完成させる」との決意を語りました。

 また、今回のシンポジウムに先駆け行った日中韓のマルチの有識者調査にも触れ、有識者の声を政策的なアジェンダに対して、絶えず集めて公開する仕組みが、一定程度めどがついたことを、一つの成果として挙げました。その上で、「今回のようなマルチの調査を安定的につくり、世界の人が課題に対して声を上げ議論するサイクルをつくりたい」と今後の「言論外交」の展開について語りました。

 宮本氏、川口氏も今回のシンポジウムのように、東アジアの課題についての議論に、地域外からの視点も入れて「民間外交」という切り口で議論できる場ができたことを一つの成果であったと指摘しました。一方で、「今後実施していく『東京-北京フォーラム』では、具体的に成果を出すことが求められている」(宮本氏)、「当事者意識、課題解決の意思を持った人々のグループ、特に、メディアの中に協力者を増やしていきたい」(川口氏)と今後の課題、意気込みについて語りました。

 その後、記者の質問に答える形で活発な質疑応答がなされ、記者会見は終了しました。


 最後に、海外から今回のシンポジウムに参加されたパネリストの方々を交えながら、レセプションが開催され、今回の国際シンポジウム「新しい民間外交の可能性~東アジア地域の紛争回避と政府間外交の環境づくり~」は全ての日程を終了しました。

 言論NPO「新しい民間外交イニシアティブ」では、今回のシンポジウムをキックオフとして、課題解決の意思を持つ輿論を喚起し、その実現に向けて取り組む「言論外交」を様々な形で展開し、言論NPOのホームページで公開していきます。本格的に始まった「言論外交」の最前線の議論をぜひご覧ください。

⇒シンポジウムに先駆けて行った日中韓三カ国の有識者アンケート結果はこちら

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言論NPOは、不安定な状況が続く東アジア地域の紛争を回避し、また国民相互の信頼関係を生み出すため、多くの人が当事者として課題を共有し、その解決に乗り出し、世論を動かす「新しい外交」に取り組んでいます。私たちはこれを「言論外交」と呼んでいます。

政府間外交が十分な機能を発揮しないなかで、言論NPOは、中国や韓国との間で民間レベルでの二国間対話を毎年実施するとともに、米国などを巻き込んだ多国間の民間対話を実現しています。

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