「第3回日韓未来対話」を振り返って 日韓パネリストインタビュー

2015年6月21日

裾野が広がった日韓関係をこれからどうしていくのか

[日本側パネリスト]  添谷 芳秀
(慶應義塾大学法学部 教授)


 私は第2回の対話から参加していますが、日韓関係は着実に進歩しているというのが最初の感想です。進歩した結果、今回、主に未来のことが話され、市民の重要性がおのずと強調されました。それはまさに、国交正常化から50年経ってかなり進歩したということの表れだったと思います。

 二点目に、その結果でもあるのですが、日韓関係の裾野がずいぶん広がったと思います。これまで日韓関係に関心のなかった人、関係のなかった人まで興味を持ち出し、あるいはいろんなかたちで実際の関係に影響を与えるようになりました。その最初のはしりは、1998年の金大中大統領と小渕首相の和解の後に韓流ブームが起きたことだと思います。つまり、それまで関心のなかった人たちが韓国に急速に興味を持ち出しました。それが、裾野が広がったことのポジティブな側面だったのですが、最近はそれが逆に表れているということだろうと思います。つまり、広がった裾野の部分にいる人たちは、韓国への特定の思い入れや態度というのは特にないのだと思います。ですから、良くもなれば悪くもなります。裾野が広がった日韓関係をこれからどうしていくのかというのが、新しいテーマになると思います。

 日韓はこれからどうしていくのか、ということを考えるときに、今日の議論でもあったように、アジア全体、問題によっては地球規模で共通の課題を抱えているので、日韓の協力が進めば、国内的課題、外交的課題、地球規模の課題で日韓どちらにとってもプラスになる、という点は重要だと思います。これは一般論としては既に議論されていますし、多くの人がそれに反対はしません。しかし、両国民の頑ななマインドが、そういう協力の機会をまったく活かせない障害になっています。

 そういう意味で、今回の議論は歴史問題の重要性を否定したわけではないけれど、それ以外の未来志向の議論をすることによって、歴史につまづいていたこれまでの関係を将来展望の中にもう一度見直してみようということであったと思います。次回の日韓未来対話を楽しみにしております。

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