言論外交の挑戦

日米中韓4カ国対話
「北東アジアの未来と日米中韓7000人の声~日米中韓シンクタンク対話と4カ国共同世論調査~」

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⇒ 日米中韓4カ国共同世論調査 結果報告書(PDF)はこちら

  午前中に行われた記者会見に引き続き、同会場にて日米中韓シンクタンク対話「北東アジアの未来と日米中韓7000人の声」が開催されました。本対話では、日本・言論NPO、アメリカ・シカゴグローバル評議会、中国・零点研究コンサルテーショングループ、韓国・東アジア研究院という4カ国のシンクタンクのトップが一堂に会し、世論調査結果に基づき、アジアの未来やお互いとの関係について日米中韓4カ国の世論はどう見ているのかを読み解きながら、平和的で安定的な地域秩序の構築のために何が必要なのか議論を行いました。

 対話の第1部では、まず「日米中韓4カ国共同世論調査報告」が行われ、午前中の記者会見と同様に、言論NPO代表の工藤泰志から世論調査の概要説明と、主な調査結果について報告がなされました。


4カ国調査をどう読み解くか

 まず、今後10年間の各国の影響力に関しては、中国の影響力の増加を、中国自身だけではなく、日本、米国、韓国の国民も認めていることが明らかになりました。特に韓国の国民の中に、中国の影響力の拡大を意識する傾向が高く、80%と8割を超えました。

 これに対して、アジアへの回帰を進める米国の影響力がアジアで増加すると見ているのは、米国民でも31%にすぎず、52%は「現状と変わらない」と回答しました。日本、韓国、中国の国民も、米国の影響力がアジアで今後「増加する」と見ているのは3割に満たず、逆に「現状と変わらない」が半数程度で最も多い回答となりました。

 また、その米国のアジア・リバランスの評価に関しては、米国でもそれを支持する人と支持しない人はそれぞれ49%と42%と分かれて、日本でも「分からない」が41.9%と、最も多い回答となるなど、十分に理解されたものとはなっていない現状が浮き彫りとなりました。


米軍の派遣を正当化できるアジアの紛争、についての調査結果に米国も驚き

 調査結果の報告後、ディスカッションに入りました。まず、米国・シカゴグローバル評議会プレジデントのイヴォ・ダールダー氏は、「国民の見解というものは、政府の見解に強い影響を受けるものだが、そういう構造だと政府が感情的になれば国民世論も感情的になってしまう」と指摘しました。その上で、世論調査結果では日本と韓国の間に認識のギャップが見られたことに言及し、「アメリカは『日米韓』の枠組みを重視しているが、日韓の政府間関係は冷え込んでいる。それが国民意識にも反映されてしまっているのは大きな懸念材料だ」と述べ、特に韓国の対中傾斜に警鐘を鳴らしました。

 次に調査では、日米韓の世論の中に、アジアにおける米軍のプレゼンスについて、「現状維持」という回答が多かったことについて、「これまではむしろ『もっと下げるべき』という声が多かった」と述べ、この結果は北東アジアの戦略環境が変わってきたことを端的に示唆しているとの見方を示しました。

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 さらに、同氏はアジアの紛争において米軍の派遣を正当化できる事態に関する調査結果について「驚き」と語りました。同氏はその理由として、「『北朝鮮が韓国を攻撃した場合』という選択肢が47%の支持を集めているが、1974年の調査では同じ質問で19%しかなかった」と紹介しました。さらに、「尖閣諸島をめぐる日中の軍事衝突」が33%だったことについて、「日本の皆さんは『3分の1しかいないのか』と心細く思われるかもしれないが、ほとんどのアメリカ人は尖閣についての認識は極めて乏しいにもかかわらず、3分の1も支持があるというのは、アメリカ政府が実際の行動に出るための基盤としては十分すぎるほどだ」と語りました。


日中韓の共通の課題を見つけることが重要

 続いて発言した中国・零点研究コンサルテーショングループ董事長の袁岳氏は、中国世論の特徴として、自国以外の国についても影響力が増大していくと見ているなど、「やや楽観主義的なところがある」と指摘しました。また、世界の課題に対して責任ある行動がとれる国として、自国を挙げる人が90%を超えていたことを踏まえながら、グローバルな課題解決において、中国が強力なプレゼンスを発揮するということに関して、中国国民には、日本国民やアメリカ国民にも見られない強い自信があると述べました。

 続いて同氏は、日中韓の各国世論に共通した特徴として、「情緒的でぼやけた視点」で物事を見る傾向があると述べました。しかし、具体的な課題を前にすればそれは明確な視点に変わるとも指摘し、そういう共通の課題を見つけることの重要性を説きました。

 最後に同氏は、15年前の調査では80%以上もの中国人が、アメリカと日本をそれぞれ同程度に重要だと答えていたという調査結果を紹介し、現在、中国人の中でアメリカの重要性の方が高くなっているのは、様々な問題はあってもコミュニケーションがしっかり取られていることが大きい、と述べ、日本と中国もコミュニケーションを回復させていくことが、日中間の世論改善にもつながっていくと主張しました。


韓国にとっての最優先課題は北朝鮮問題を解決すること

 東アジア研究院院長の李淑鍾氏は、2国間の重要性に関して韓国世論の中には日本よりも中国を重要視する見方が多いことについて、「韓国にとって中国は経済・安全保障、日本は経済・文化というように、重要性の次元が異なる」と述べました。

 また、韓国が世界的な課題に対する責任を果たす国として、中国を挙げていることについては、「韓国にとって大きな懸案である北朝鮮問題を解決していく上で中国の力は不可欠」とした上で、「そのようにそれぞれの国にとっての最優先課題を考えながらこの結果も読み解くべき」と指摘しました。

 また、日米韓の枠組みが必要であるにもかかわらず、韓国が中国に傾斜した結果3か国の連携に綻びが見られるとの指摘に対しては、「中韓が接近しているのであれば、日米は韓国を使って中国に接近できるのだから、アメリカも必ずしも否定的に捉えるべきではない」と述べました。同時に、「中国が間違ったことをしたら韓国が責任もって『No』と言うべき」と韓国側の課題についても言及しました。

 最後に、日韓関係については、「韓国が国際社会でより良いポジションを占めるためには、日韓の協力は不可欠。そして、日本も積極的平和主義を推進していくのであれば、韓国の理解を得ながら進めていく必要がある」と主張しました。

⇒第2部の議論はこちら

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