言論外交の挑戦

新たな共生関係を作るためには新たな理念が必要 ~16日全体会議報告~

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 全体会議の後半では、宮本雄二氏(宮本アジア研究所代表、元駐中国大使)と、趙啓正氏(中国人民大学新聞学院院長、中国人民政治協商会議第11期全国委員会外事委員会主任、元国務院新聞弁公室主任)による司会進行の下、「より開放的な国際経済秩序とアジアの平和に向けた日中協力」をテーマにパネルディスカッションが行われました。

A30X0410.jpg まず、司会の宮本氏が、「現在、世界は大きな変革期にある。私たちが直面するこうした世界の変化とアジアの課題をどう考えるのか。また、その中で日本と中国はどのような役割と責任を果たすべきなのか」、さらに、「今回の世論調査結果を見るとやや改善してきているものの、まだお互いに相手国に対して不信感、脅威感を抱いている傾向は残っている。そうした中で、これから新しい協力関係を構築し、互いに真のパートナーとなるためには何が必要なのか」と、パネリストに対し問いかけました。


日中協力の姿を見せることはアジア、さらには世界全体にとってプラスに作用する

A30X0381.jpg 日本側から最初に発言した山口廣秀氏(日興リサーチセンター理事長、元日銀副総裁)は、まず現在の世界情勢について概観。政治的には各国でポピュリズム、ナショナリズムが高まるとともに、反グローバリズムの機運が広まるなど不安要素があると懸念を示しつつ、経済的には「先進国、新興国ともに緩やかな拡大をしており、明るい兆しが見える。懸念されていたスロートレードは杞憂であった」と評価しました。もっとも、その経済も、各国の金融緩和に伴う過剰流動性の問題や株価、不動産価格の急上昇など、資産バブルと捉えかねない現象が見られるため、「どこかで破裂しかねない。そうなれば、世界経済は大きな後退局面を迎える」と警鐘を鳴らしました。

 しかし、「だからこそ、世界第2位、第3位の経済大国である日本と中国の役割が重要だ」と強調。「両国はそれぞれ自国内に構造問題を抱えている。そこで、互いに長所を生かし合い、短所を補い合いながら協力を進めていくべき」と語り、そうした協力の姿を見せることは、「アジアで構造問題に取り組む他の国々にとって解決のための重要なサンプルとなる」ため、「それは引いては世界全体にとってプラスに作用する。すなわち、『より開放的な国際経済秩序』が実現していく」と結論付けました。

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今こそ「新しい理念」を

A30X0413.jpg 中国側の魏建国氏(中国国際経済交流センター副理事長、元商務部副部長)は、近年停滞していた貿易、投資などの日中経済関係で、落ち込みに歯止めがかかりつつあることを解説。両国の首脳会談が増えると同時に、互いに相手国の経済界とも積極的に会談していることなど、政治が大きな役割を果たしていることや、両国のメディア報道が前向きなトーンに変わってきたことなどがその要因との見方を示しました。

 その上で魏建国氏は、「では、ここからさらに経済関係を深化させていくためには何が必要なのか」と問題提起し、その答えとして「新しい理念」を挙げました。特に、日本の経営者が中国でビジネスをしていくことに不安を抱いていることに対し、「新しい理念に基づく発想により、様々な改革を進め、優れたビジネス環境を整えていく必要がある」と語りました。

 また、新たな領域での協力として、「環境ビジネス、高齢化社会への対応など、新たな発想が求められるビジネス領域はたくさんある」と同時に、中国が進める「一帯一路構想も重要な協力の舞台になる」と指摘。特に、第三国でのインフラ整備などでは協力の余地が大きいとし、「ハイレベルの経済秩序構想を共に進めていく。そのようにして共に『美しい春』を迎えるための努力をしよう」と日本側に呼びかけました。


困難な課題に対しても、時間をかけて努力し続けることが結果を生む

A30X0460.jpg 中谷元氏(衆議院議員、元防衛大臣)は12月に入り、日中両国政府の外務、防衛、海上保安当局などからなる「高級事務レベル海洋協議」で、日中間における海上や空での偶発的な衝突を避けるための「連絡メカニズム」の構築に前向きな進展を得たことを、「たとえ困難な課題でも、強い意思を持って時間をかければ実現できるという好例だ」と評価。その上で、日中両国が直面する最大の課題として北朝鮮問題について語りました。中谷氏は、リスクが大きすぎる軍事衝突を避けつつ北朝鮮の核保有を阻止するためには、「やはり中国の役割が重要。中国が経済制裁をしっかり行うことがカギだ」と中国側により一層の努力を求めました。

 さらに、日本がなすべきこととしては、圧力強化と同時に、自国を防衛するための抑止力の強化、特に政府が導入する方針の長距離巡航ミサイルについて言及。そこでは、1956年の鳩山一郎内閣における敵基地攻撃と自衛権の範囲に関する政府統一見解を紹介しつつ、「法的な問題はクリアされている」と強調。「やむなく必要とあれば、北朝鮮の基地に対して攻撃することも可能だ」と述べ、敵基地攻撃への転用が可能との認識を示しました。

 一方、現在の事態が深刻化すれば、アメリカが北朝鮮を攻撃する可能性がある中で、「日米同盟は今後も基軸となる」としつつ、それが中国を含めた周辺国との対立につながらないためにも、「日中米韓露といった枠組みで対話をする時期に来ている」とも語りました。

A30X0452.jpg 中谷氏は、中国世論の関心が高い台湾問題についても言及。台湾の立場は、「台湾と大陸が決める問題で、我々はその結果を尊重する」とする一方で、「しかし、武力による現状変更はあってはならない」とし、それを阻止するためには日本も役割を果たしていく旨を表明。

 最後に、そうした地域の緊張の高まりを未然に防止し、平和な秩序をもたらすために重要になるのは、日中関係の安定であり、「そのための努力を続けていきたい」ということを強調しました。


ゼロサム的な発想に陥らないためには

A30X0493.jpg 姚雲竹氏(中国人民解放軍軍事科学院国家ハイエンドシンクタンク学術委員会委員、軍事科学院中米研究センター元主任・研究員、退役少将)は、安全保障上の課題、とりわけ領土をめぐっては、国と国との関係は「ゼロサム的な発想になりやすい」という問題点を最初に指摘。

 その上で、中国側が日本に対して有する様々な安全保障上の懸念としてまず、東シナ海・尖閣については、中谷氏と同様に連絡メカニズムに進展があったことを評価しましたが、日米安保の尖閣への適用が、度々アメリカ政府から明言されていることは懸念材料との認識を示しました。

 また、日本の政治状況についても言及。第二次大戦前のレジームに回帰し、軍拡あるいは自衛隊の役割拡大、さらには憲法9条を改正し、専守防衛からの転換を図ろうとしていることや、核武装論が出始めていることなどについて懸念を表明しました。

 続けて、「日本はアジア太平洋の安全保障の枠組みについて、どのような将来的なビジョンを持っているのか」と日本側に問いかけました。姚雲竹氏は、アメリカがグローバリズムから後退する中、経済面ではTPP11で見られたように、日本が世界の中でリーダーシップを発揮していることを評価した一方で、安全保障面では、依然として日米同盟という2国間の枠組みにとらわれていると指摘。2国間の同盟は「排他性があり、仮想敵を設定するなど、まさにゼロサム的な発想に陥りやすく、グローバリズムの観点からは問題が多い」と主張しました。その上で、「日本と中国のアジア太平洋での協力関係の拡大は、多国間の枠組みで取り組んでこそ効果的。しかし、現在日本は日米豪印からなる『インド太平洋』構想を打ち出すなど、中国を排斥するかのような展開を見せているが、果たしてそれはこの地域の将来を考える上で妥当なのか」と疑問を投げかけました。

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対話の空白を作らないことが大事

A30X0528.jpg 松本剛明氏(衆議院議員、元外務大臣)は、自身も外相時代に取り組んだ連絡メカニズムの進展について、「対話を継続したからこその成果だ」と評価。政治に求められることは「まずは会うこと。不満があっても、ともかく会って直接言うこと」であり、対話の空白を作らないことが大事だと語りました。

 また、これからのアジア太平洋の秩序を考えていく上で、中国をどのように位置づけるかによって衝突のリスクが左右されるとの見方を示した上で、「中国が自らの位置付けに不満があるのであれば、対話で不満をぶつけてほしい」と呼びかけました。

A30X0562.jpg 松本氏はさらに、「第13回日中共同世論調査結果」で、中国が国際社会のルールを守らない傾向にあることを不満に思う日本人が多い結果が出ていることを踏まえ、これから「責任ある大国」になるだろう中国に対しての注文として、「国際的なルールやマナーは守ってほしい」と語りました。同時に、「日本では当初、一帯一路やAIIBに対して不信感があったが、国際ルールに則ったものだと分かったら理解が広がってきた」とし、ここでも不信感を取り除くための対話の必要性を強調しました。


混迷する世界は日中の新たな共生関係を構築するチャンス

A30X0593.jpg 楊伯江氏(中国社会科学院日本研究所副所長)は、1648年のウェストファリア体制以降、国際社会のガバナンスやルールが欧州主導で作られてきたことを振り返った上で、特に冷戦後、多極化し、国益同士が複雑に入り組んでいる現状を「既存のガバナンスがうまく調整できていない」と指摘。また、新興国の成長に伴う世界経済への寄与拡大にもかかわらず、そうした国々の声が反映されにくい仕組みであること、さらには、貿易ルールや規格自体が時代の変化に対応できていないことなどを挙げ、既存のガバナンスの問題点を浮き彫りとしました。

 それと同時に、様々な展開が見られる地域協力についても、「構造が断片化し、相互に排他的になっている」ため、互いにマイナスの影響を及ぼし、ウィンウィンの関係にならず、政治不信まで引き起こしていると分析しました。

A30X0604.jpg しかし楊伯江氏は、こうした状況は、日本と中国が「新たな共生関係を構築する大きなチャンスである」と主張。その上で、「一帯一路」は、9月の安倍首相と習近平主席の首脳会談で、実務レベルでの協力拡大に言及されていたことから、日中協力拡大の大きな機会となると強調するとともに、「アジアの両大国の新たな協力関係の象徴となる」と訴えました。もっとも、その際に大切なことは、「中国の役割を真摯に直視すべき。都合よく注目したり無視したりと態度を変えるべきではない」とも注文を付けました。

 各氏の発言を受けて、最後に宮本氏は、魏建国氏の「新しい理念」という言葉を振り返りつつ、午後からの分科会の各分野でこうした理念や発想を日中両国のパネリスト達が見つけ出していくことに期待を寄せ、全体会議を締めくくりました。

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