今秋の開催に向けて本格的な準備に入った「東京-北京フォーラム」 ~「第15回 東京-北京フォーラム」事前協議報告~

2019年5月18日

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 今秋に北京で開催予定の「第15回 東京-北京フォーラム」の事前協議が5月17日、北京で行われました。日本側からは、同フォーラム実行委員長の明石康・元国連事務次長、同副委員長の宮本雄二・元在中国大使、同副委員長の山口廣秀・元日本銀行副総裁、運営委員長の工藤泰志・言論NPO代表の4氏が出席、中国側主催団体である中国国際出版集団の関係者らと意見交換しました。


日本側が提起したテーマは「世界の繁栄とアジアの平和で、日中両国が背負うべき責任」

 まず中国側主催者を代表して、高岸明・中国国際出版集団副総裁(中国外文局副局長)は、今秋に予定されるフォーラムでは、中日関係が好転する中、こうした大きな変化をフォーラムにどう反映させていくか、が課題だと語りました。特に、中国のデジタル技術が大きく発展する中、昨年のフォーラム(東京)で評判の高かったデジタル経済など、新しい社会の変化を話し合った「特別分科会」のテーマを更に発展させ、「デジタル経済やイノベーション時代の中日協力について、もっと議論できるのではないか」との考え方を示しました。また昨年、話し合われた「中日の未来を担う若い世代による対話」では、より具体的に、若者による相互信頼でマスコミにできることは何か、との提案もなされました。

 これに対し、日本側主催者を代表して工藤は、「なぜ私たちは、この対話をやっているのか」と改めて自問し、それは単にイベントではなく、「対話を通じて、日中間の困難や、この地域や世界で責任を果たすため」と語ります。そして、「時代に向き合い、解決策を提案していく」姿勢こそが、日中対話に生命力を与えていくと指摘しました。さらに、米中の貿易戦争が厳しくなっている時に、世界経済の分断はあってはならず、ルールベースのリベラル秩序を、更に新しい状況に合わせてアップデートし、発展させていくことこそ重要だ、と強調。こうした問題意識から、全体のテーマとして、「世界の繁栄とアジアの平和で、日中両国が背負うべき責任」を提案しました。

 そして、「政治・外交」分科会では、「日中の新しい協力関係」、「経済」では、「開放経済と自由秩序の発展」、「安全保障」では、「朝鮮半島のどういう将来を考えて、日中は協力しようとしているのか」、「メディア」では、「相互理解と協力でのマスコミの役割」、最後に特別分科会では、「新産業革命やAIの未来と目指すべき日中の協力」をテーマとして、それぞれ挙げました。

 工藤の発言を受けて宮本氏も、「日中の世界像に大きな差はない」と前向きでした。さらに、今の国際秩序が基本で、そこに修正、補強を加えていくこと、さらに国際秩序はどうあるべきで、日中はそこに、どういう姿勢で臨むべきか、という次元での議論を日中で真剣にやるべき、と呼びかけました。一方、「政治、経済など各分野で制度疲労が起きている」と、指摘したのは山口氏でした。続けて、デジタルを中心として大きな変革期を迎え、新たな制度が必要な時期にも来ていると指摘し、制度疲労の実態は何なのか、制度の見直しはどうすればいいのかと語ります。そして、「お互い共通の利益を、どこまで追求でき、共通理解をどうやって作っていくのか」が重要と話す山口氏は、次回のフォーラムは、「新しい時代を切り開くものになるかどうか」と、貴重な視点を示すのでした。

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政府間外交が曖昧な合意を、肉付けして解決を図っていくことが民間の役割

 事前協議終了後には、次回のフォーラムの開催概要について記者会見が行われました。会見の冒頭、宮本氏は、「中国は今年、建国70周年、日本は平成から令和と新しい時代に入った。同時に、日中関係は改善し正常に復帰した。将来、荒波が起こっても、それに耐えうる新たな日中関係をどうやって作ったらいいのか、次回のフォーラムの大きな課題だ」と挨拶しました。

 日本人記者からは、「民間対話を重視しているフォーラムだが、民間だからできることを、どのように考えているのか」という質問がなされました。これに対して工藤は、「過去に、世論というものが政府間外交を壊してしまうのを、私たちは見てきた。だからこそ、困難がある時は、まず民間が先に動かなければいけない」と語りました。その上で、民間の役割はアジェンダ設定で、尖閣諸島の国有化時には、領土問題という外交問題よりも、戦争を起こしたくないというアジェンダを設定した」と指摘。その腕、「政府間外交は、様々な困難の中で合意を形成するために、いろいろなものを曖昧にすることはある。しかし、それを肉付けして解決を図っていくのが民間の役割だ」と民間対話の重要性を指摘しました。さらに、メディアも含め、こうした課題を考える人たちの力がないと、アジアの繁栄と平和はない、と日中両国のメディアに対しても協力を求める工藤でした。

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 今回の事前協議を経て、フォーラムの準備は今後、更に本格化していきます。準備状況については、随時ホームページで報告していきます。