新たな日米連携の軸は、安保条約2条でも掲げられた「自由秩序」の維持・発展 ~日米の外交関係者ら10氏が確認

2020年1月20日

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 言論NPOは1月20日、翌日の「アジア平和会議」発足を前に、3回目となる「日米対話」公開フォーラムを東京・六本木の国際文化会館で開催しました。

 このうち「米中対立の今後と日本に求められる立ち位置」をテーマとした第1セッションでは、この会議のために来日したクライド・プレストウィッツ元商務省審議官ら日米の外交・安保・通商関係者10氏が、米国の対中政策の帰結や、それに対する同盟国・日本の役割について議論しました。10氏は、具体的な方法論では意見が分かれましたが、異質な価値観を持つ中国の台頭を、日米が連携してマネージすべきだという意見で一致。その軸は、60年前に日米安全保障条約2条で掲げられた、自由で開かれた秩序の維持・発展による世界の平和・繁栄への貢献である、という点を確認しました。


3回目の日米対話の目的は
「北東アジアの平和」と「世界の自由秩序のための日米協力」

HIR_4273.jpg 開会にあたり、言論NPOの工藤泰志が、今回の日米対話が持つ二つの目的を説明しました。

 第一に工藤は、言論NPOが翌21日に立ち上げる日米中韓の多国間協議枠組み「アジア平和会議」を紹介。「北東アジアには様々なリスクが存在し、大国間関係も安定しているわけではない。にもかかわらず、この地域には現在の危機管理と信頼醸成、そして将来の持続的な平和を議論する多国間の枠組みもない。同会議は、そのためにまず民間が日米中韓による対話の枠組みをつくるという歴史的な挑戦だ」と語り、その前に、同盟国である日米が、この地域の平和にどう取り組むのか意思統一する必要がある、と対話の意義を語りました。

 次に、工藤は第二の論点として「米中対立」を提示。工藤は「米中の競争が長期化するとみられる中、同盟国である日本の立ち位置が問われている」とした上で、その出口は相互主義、つまり公平な競争条件のもとで米中を含む国際社会の各プレーヤーが共存できる世界であるべきだ、と主張。そして、この文脈で、前日19日に調印60周年を迎えた日米安全保障条約に言及し、中でも「その自由な諸制度を強化することにより、これらの制度の基礎をなす原則の理解を促進することにより、並びに安定及び福祉の条件を助長することによって、平和的かつ友好的な国際関係の一層の発展に貢献する」と定めた2条の今日的意義を強調。「日米が自由や民主主義に基づく秩序を支え、それによって世界の平和と繁栄に貢献する」ことの重要性を、この条文は教えてくれている、と語り、「これらの目的を理解した上で、最後まで議論に耳を傾けてほしい」と、会場を埋めた150人の聴衆に呼びかけました。

miyamoto.jpg 続いて、「アジア平和会議」の日本側準備委員会の座長、また言論NPOのアドバイザリーボード・メンバーでもある宮本雄二・元中国大使が挨拶を行いました。宮本氏は、「北東アジアが不安定の度合いを強め、同時に世界情勢が流動化していく中で、このアジアの平和を議論する場が必要だ」と同会議の意義を説明。「アジアの平和に日米が中心となって取り組まなければいけないという点で、日米の対話がますます重要になっている」とし、「この動きがさらに大きくなるよう、支援いただきたい」と訴えました。

 第1セッションではまず、80年代の日米構造協議における対日交渉担当者で、米中関係にも精通するプレストウィッツ氏が、米国における対中認識の変遷を説明しました。


「中国の自由経済化に賭けたのは誤りだった」という米国の認識

p.jpg 初めに同氏は、東西陣営間の経済的交流がほとんどなかった冷戦が終わった当時、西側社会では「貿易や投資を通じたグローバル化の進展が、平和と繁栄の未来をもたらす」という楽観論があふれていた、と振り返り、90~00年代の米国の歴代政権もその考えのもと、中国をはじめ東側諸国との経済連携を促進していったと紹介。とりわけ、2001年のWTOへの中国加盟が、日米欧の企業の中国進出や米国の対中貿易赤字増大の転機になった、と述べました。

 そしてプレストウィッツ氏は、米国ではこのような期待感がここ1~2年で一変した、と発言。具体的には、中国が自国のインターネットの世界からの遮断を進めることで、「インターネットの進歩が、中国に言論の自由や法の支配に基づくリベラルな社会をもたらす」という期待が裏切られたこと、また、中国に進出した日米欧の企業の間で、強制技術移転や共産党の企業経営への関与など、様々な国家介入への不満が高まっていることを挙げました。

 その象徴として、プレストウィッツ氏は、自由経済の最大の擁護者とされていたエコノミスト誌が2018年3月に特集を組み、「西側は中国に誤った賭けをした」という主張を展開したことを紹介。同誌によると、中国では国家がAIやロボット、航空などの重点産業を指定して大々的に補助金を出す形式で産業発展を進めており、冷戦終結時の「中国は西側経済に統合されることで市場競争原理が浸透し、国有企業の重要性が減じていく」という予測とは全く逆の方向に進んでいます。加えて、南シナ海や東シナ海に見られるように、中国の軍事力が向上。それにより、日米など西側各国にとって、「中国との戦争を避けつつ、中国市場からの利益により自国の経済発展を進めていく」という、中国に対峙する上での新しい局面が出現しています。

 プレストウィッツ氏は最後に、米中が相互の関税発動を見送った1月15日の合意も一時的な「休戦」に過ぎないと指摘。自身に近い専門家の間では、世界のシステムは分裂しつつあるという認識になっている、と紹介し、「だからこそ米国や同盟国は、中国に対処する上でどう歩調を合わせていくかが問われている、と主張。10分間の問題提起を締めくくりました。

 これに対し日本側からは、こうした米国の動きをどう見ているのか、元防衛事務次官の西正典氏と、東京大学公共政策大学院特任教授の河合正弘氏が発言しました。


日本は、米中対立がエスカレートしないよう両国を説得できる唯一の国

nishi.jpg 西氏は防衛省(旧防衛庁)に長く務めた経験から、中国は、「主権」や「戦略」などにおいて西側のつくり出した「国際社会」と異なる概念を持つ「異質」な国であり、その認識は防衛庁内では90年代から主流だった、と紹介。その観点から、プレストウィッツ氏と同様、現在の米中対立は構造的なものであり長期化する、という見通しを示しました。

 そして、地理的に西側と中国のはざまに位置する日本は、米中対立が最悪の事態に発展しないよう米中双方を説得できる可能性を持つ唯一の国であるが、それは困難であり、日本が米中の間に立つ対話の場を作ると同時に、その調整が破綻した際のプランを作らなければいけない、と悲観的に語りました。

 さらに西氏は、冷戦時のソ連と異なり、今の中国はグローバル経済の中心であることを指摘。そのため、中国経済を変調させることは世界経済の崩壊につながるが、そのリスクを抱えながらも中国に物を言っていかなければいけない、という西側諸国の課題を語る西氏でした。


トランプ氏の方向性は、むしろ中国との相互依存の強化?

kawai.jpg これに対し、経済を専門とする河合氏は、中国の台頭は必ずしも西側が経済的優位を失うことを意味しない、と語ります。河合氏は、中国は2030年代にGDPで米国を抜き世界一になると展望しながらも、同時に米国も欧州も経済が伸び続け、さらにインドの経済規模が中国に迫っていくことから、自由民主主義の国全体で見れば、50年後も経済的にはなお中国を上回り続ける、との見方を提示。

 この観点から河合氏は、米国の安全を守る上で最も重要なのは、欧州や日本など自由や民主主義の価値を共有する「同志国」との連携だと述べ、その意味でトランプ政権の「米国第一」政策は完全な誤りだ、と断じました。


 さらに河合氏は、今の米中関係は「分断」とは逆の方向に向かっているのではないか、と、プレストウィッツ氏とは異なる見方を披露。1月15日の米中合意に、中国の米産品輸入拡大や、中国の金融市場の対外開放が盛り込まれていることを指摘し。米中の「分断」はファーウェイの政府調達排除のような一側面にすぎず、トランプ政権はむしろ中国との相互依存を強めようとしているのではないか、という見方を示しました。

 最後に河合氏は、「米欧日が連携すれば中国は覇権を取れない」とし、同時に、中国との相互依存を高めるのは米欧日にとってもメリットが大きい、と主張。WTOやRCEPなどの国際的な枠組みを通し、中国自身がより市場経済化する方向に働きかけることが、日本や欧州の役割だと語りました。

 続いて司会の工藤は、プレストウィッツ氏の問題提起に関連し、「米国の対中認識が根本的に変化しているとすれば、同盟国の日本はそれにどこまで同調しているように見えているのか。また、米国が日本に求める役割は何か」と、米国側のパネリストらに質問しました。


米国の対中戦略に対する日本の貢献度の評価は

 プレストウィッツ氏は、米国の戦略に対する日本の協力姿勢を疑問視。その理由として、「日本のメディアでは、米中貿易摩擦はトランプ大統領が仕掛けたもので、日本にとっては他人事であるかのような論調が強い。また、東シナ海や南シナ海での中国への対処で、安倍政権は東南アジアやインドにも働きかけているが、米軍と自衛隊の連携について将来の具体像を示しているわけではない」と語りました。

 また、国と企業の関係や国際関係において、中国が持つコンセプトの「異質」さに改めて言及。これを外から交渉によって変えるのは非現実的とし、日米が協力して、そうした中国の価値観が変わらないことを前提に経済政策や安全保障政策を組み立てていくべきだ、と主張しました。さらに、「米国の防衛費はGDPの3%を占めている」とし、GDP比1%にとどまっている日本の防衛負担の増加をも要求しました。


d.jpg 一方、オバマ政権で国防次官補を務めたデビッド・シェア氏は、日米同盟に対する安倍政権の貢献を高く評価します。シェア氏はまず、「トランプ大統領は、東南アジアなどの『同志国』を自由や開かれた経済などの規範に巻き込み続ける努力を放棄した」と述べた上で、安倍政権はTPP11の発効などを通じ「その穴を埋めてくれている」と評価。また、2015年の日米防衛協力のための指針(ガイドライン)改定や南シナ海への海上自衛隊派遣などにより、日本は「中国との関係を維持しつつも、日米同盟の抑止力を強化し、この地域の中で中国のプレゼンスを『相対化』することに努めている」としました。


アプローチの違いはあるが、日米が連携して中国の台頭を抑制すべき、という点で米国側は一致

p.jpg ブッシュ(子)政権で大統領特別補佐官を務めていた、カーネギー国際平和基金ディスティングイッシュド・フェローのダグラス・パール氏は、「西洋による中国の体質転換の試みは、16世紀の欧州の布教活動以来500年続いているが、全て失敗に終わっている」と、プレストウィッツ氏と同様にその難しさを指摘。一方で、共産党体制の本質は力による支配だとし、そこから生じる外交政策の特徴を「相手国が抵抗に出るまでは強硬な態度を続ける。また、圧力をかけても相手国の行動を変えられないなら引き下がる」と分析。実際に、南シナ海では中国の行動に批判が高まって以降、中国がASEANとのCOC(行動規範)策定に踏み出していることを引き合いに出しました。そして、この点が、日米など同志国が中国に対峙していく上でポイントになるという視点から、「少なくとも中国の体制を変えられないのであれば、対外的な行動を抑制するチャンスをとらえるべきだ」と主張しました。

HIR_4429.jpg パシフィック・フォーラム名誉理事長のラルフ・コッサ氏は、日米同盟への日本の貢献についてはシェア氏の評価に近く、むしろ米国が同盟を弱体化させることへの懸念の方が強い、と指摘。その上で、これまで米国側から出された意見を総括し、アプローチの違いはあれ、日米が協力して中国の台頭をマネージするという点では一致している、と語りました。

 同時に、コッサ氏は中国国内の変化に着目。2001年のWTO加盟時の中国は、市場経済化による改革開放を進めた鄧小平の理念がベースになっていたが、ここ10年ほど進めている国家管理の強化を見ると、その哲学が受け継がれなくなっている、と指摘。それを元に戻すことが日米連携の目的になる、と述べました。

 続いて、日米同盟における日本の役割について、日本側のパネリストらが発言しました。


日中の「第三国協力」が日米同盟に与える影響は

koda.jpg 元自衛艦隊司令官の香田洋二氏は、米中対立の本質は数十年後の世界のリーダーシップをかけた争いであり、「軍事的な戦争はできないため、経済面と技術面で死力を尽くした戦いが始まっている」という認識を示しました。そして、今回の貿易協議における第1段階合意は一時的な休戦にすぎず、しかも第2段階の交渉は大統領選の後であるため、「トランプ氏が再選された場合、選挙への影響を気にせず大胆な行動に出られる」と、対立が一層先鋭化する可能性を指摘。

 そして、こうした厳しい競争に臨んでいる米国への協力という点で、「日本は適切な対中通商政策を実行しているのか」と疑問視。2018年10月、日中が第三国での50件のインフラ投資での協力に合意したことを取り上げ、「建前上は違ったとしても、これは実質的な一帯一路への協力だ。それをやめる必要はないが、協力の内容によっては日米の同盟関係にも影響する」と主張しました。


kawano.jpg 前統合幕僚長の河野克俊氏も、米中対立の構図において「日本は米国側に立つべきだ」と明確に主張。その理由として、海洋国家という日本の性格を挙げ、「最大の海洋国家である米国との連携を第一に考えて政策を考えるべきだ」と語りました。そして、「経済発展が海洋進出の重要性を高めるのは必然だ」とし、日中の安全保障面での摩擦の要因を、鄧小平時代、改革開放と同時に行われた海軍力の増強と海洋進出に求めました。

 さらに河野氏は、昨年11月に成立した「香港人権・民主主義法」にみられるように、米国の対中批判が中国の人権問題にまで及んでいることに着目。「共産主義に基づく統治において、人権の制約は避けられない」と指摘し、米中対立は体制間対立の側面を持つ奥深いものになっていることを強調しました。


中国が長い期間をかけて変わっていくまでの間、
平和を保つための外交戦略が日本に必要

takahara.jpg 一方、東京大学公共政策大学院院長の高原明生氏は、米国が中国との長期的な覇権争いを戦う決意を固めているとの見解を示しながらも、その中で「日本が、米中どちらかにつく、という立場をとるのは非現実的だ」と、香田氏や河野氏と異なる意見を提示。「米中の戦い方は単純なものではなく、例えば今回の第1段階合意は、米中の経済交流を深めようとするものだ。日本としても、日米同盟と日中関係発展を両立させていくことに一番の利益があり、米国が中国との分断に踏み出していけば、日本、そして世界中が困ることになる」と語りました。

 また高原氏は、米国側で複数のパネリストが提起した「中国は変わるのか」という論点に対し、短期的には悲観的な、長期的にはやや楽観的な認識を示しました。中国政治を専門とする高原氏は、「現在の中国は、国内では国民の統制、対外的には海洋進出という悪い方向に向かっている」としながらも、中国が統制強化を進める理由を、共産党政権が、少子高齢化やエネルギー供給といった「より深いレベルでの変化を恐れているからだ」とし、今は、中国がゆっくりと良い方向に変わっていく上での過渡期だ、と位置付けます。そして、「その長い変化の間、平和をどう保つのか」が日本に問われているとし、ある部分では米国との協力で抑止力を強めながらも、中国と協力できるところは協力して利益を得る、という難しいバランスをとることが、日本の外交に必要だと述べました。


 元駐中国大使の宮本氏は、「安全保障においては、日米同盟による中国への対峙以外の選択肢はない」としつつ、「それは、日本が米中の経済面、軍事面での衝突を容認することを意味しない」と主張。「長期化する米中対立の中で衝突回避の策を提案する役割は、日本にある」と述べました。そして、日本が米中双方と対話する中で、米中が互いを誤って認識している点を把握し、両国に注意喚起する、という、今後の日本外交のあり方を提案しました。


日米同盟は、安全保障をはるかに超えた意味を持っている

 ここで、司会の工藤は、米国がファーウェイなど中国のハイテク企業を政府調達から排除し、さらに再輸出規制、つまり、中国へ輸出する日本製品に米国製部品が一定程度含まれる場合の輸出規制を強化する動きがあることに言及。こうした動きが「中国を最大の貿易相手とする日本との同盟関係を弱体化させかねない」と指摘します。そして、冒頭の挨拶で紹介した日米安保条約第2条に改めて触れ、「戦後の自由で開かれた秩序を守るという視点を、日米の対中連携の前提とすべきだ」と訴え、日本に難しい踏み絵を迫るよりも、日米の技術協力により、5Gなどのハイテク分野で中国勢に対抗する企業を育てるなどの策を考えるべきなのでは、と訴えました。


 シェア氏は、安保条約2条に関する工藤の主張に同意し、「日米同盟は安全保障の取り組みと考えがちだが、それをはるかに超えた意味を持っている」と発言。「米国が中国と向き合う上では北東アジアで外交のゲームを戦わなければいけない。その中で日本の影響力をテコにし、中国に米国が望む行動を促すことが重要だ」と語りました。

 そしてシェア氏は、トランプ大統領が同盟の価値を疑問視する言動を繰り返していることで、「日米同盟は危機を迎えている」と指摘。一方、1960年の安保闘争などを例に、「日米同盟はこれまでも危機を迎えたが、それを乗り越えるだけの強靭さを持っている」との認識を提示。安全保障や経済の分野で日米の識者が連携し、同盟の意義を訴えていくべきだ、と呼びかけました。

 プレストウィッツ氏はこれまでの議論を、「同盟の根本的な意義では全てのパネリストが一致している」と振り返りました。その上で、日米とも経済的に中国にかなり依存していることが、日米連携の弱みになる、と指摘。「米国は5G技術のファーウェイ依存を防ごうとしており、日本もそれに協力しているが、その範囲をもっと広げるべきかもしれない」と述べ、半導体製造装置に強みを持つ日本が、米国の半導体輸出規制と連動した形で中国への製造装置輸出を制限するなど、産業政策面で日米連携のさらなる深化が必要だとしました。同時に、一帯一路に投資する中国のファンドが、中国の金融開放によって米国の運用会社から出資を受けるようになっていると紹介し、中国の世界での影響力拡大を抑えるため、金融面でも規制が必要だと語りました。


 パール氏は、中国が国境を接する14の国の多くが、日米と中国の中間的な立ち位置にあると指摘。日米が協力してこうした国々との連携を強化し、中国の影響圏からの独立を守るようにすべきだ、と主張しました。

 コッサ氏はシェア氏と同様、日米同盟の強靭性を強調。ツイッターでは日米同盟について様々な発言をするトランプ政権だが、「米国のアジア太平洋政策の基盤が同盟関係であることは変わらない」との見方を提示。具体的には、トランプ政権下でアジア政策について出された四つの戦略、すなわち国家安全保障戦略、国防戦略、国防総省と国務省それぞれのインド太平洋政策にも全てこの点が書かれており、それは従来の米政権から継続している、と述べました。


世界の変化の中、日本自身の立ち位置をどう描き、
世界に語るのかが問われている

 一方で日本側の河合氏は、日本も米国の姿勢に若干の不信感を持っている、と表明します。河合氏は、自由秩序の発展やそのためのアジア重視と矛盾する米国の行動として、中国に改革を促す意味もあるTPPから離脱したこと、日米貿易交渉で自動車の関税引き上げの可能性を示唆したこと、昨年末のASEAN関連の首脳会合にトランプ氏が欠席したこと、を列挙。共有利益の多い日米が互いに不信感を指摘するのは良いことだし、対話を通じて認識のギャップを埋めていくことが重要だ、と語りました。

 西氏は、米国で日本への不信感が生まれる要因を日本自身に求めました。西氏は、「強くておおらかな米国も英国もいない、群雄割拠の世界の中で、日本の立ち位置をどう描き、それを他国にどう共有するのか。その声が聞こえてこないことへの不満が米国にあるのだろう」と指摘。「戦後70年以上、自国の立ち位置を語らずに済んでいた日本だが、世界の変化の中、いよいよその訓練を急がなければいけない」と訴えました。

 最後に司会の工藤が、「日米同盟をより発展させる上でも、日米がいろいろな議論をし合える環境が大事だ」と語り、第1セッションを締めくくりました。