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「第3回日韓未来対話」を振り返って 日韓パネリストインタビュー

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更なる裾野を広げていくことが今後の課題

聞き手:工藤泰志(「第3回日韓未来対話」日本側主催者)

[韓国側パネリスト]  李淑鍾 (イ・スクジョン)
(東アジア研究院(EAI)院長)


工藤:お疲れさまでした。今回の「第3回日韓未来対話」は、日韓両国の未来をベースにした議論が初めて本格的に行うことができ、かつ成功裏に終わったと思っていますが、李淑鍾さんは、今回の対話を振り返って、どのようにお考えですか。

李淑鍾:今回の日韓未来対話は、これまでの2回の対話と比べて、非常に未来志向の対話になったと考えています。現在、日韓関係は政府間レベルでは冷え込んでいますが、こうした関係を改善し、両国関係を市民の力によって発展させていく、という強い意志が盛り込まれ、建設的な対話になったと感じています。

 また、今日(6月22日収録)は日韓国交正常化の署名がなされた日でもあることから、両国関係者が関係改善に向けた強い意志を持って臨んだことで、昨日の対話のようにいい結果に結びついたのだと思います。

工藤:昨日、日韓の外相会談が行われ、ようやく政府間レベルでも関係改善に向けて動き始めたのですが、こうした政府間の動きに対して、民間の私たちが対話を行う意味ということは、どういうところにあるのでしょうか。

李淑鍾:韓国の日本大使館で50周年の記念式典が行われますが、韓国での記念式典には朴槿恵大統領が参加し、日本の韓国大使館での記念式典には安倍総理が参加されるということで、両国にとって非常にいいシグナルが出ていると考えています。

 また、今年8月15日は、韓国にとっては独立開放70周年、日本においては終戦70周年の記念日になります。こうした記念日を迎えるにあたり、両国首脳がスピーチを行うと思いますが、このスピーチがより未来志向で、大きなビジョンを持ち、両国間において共通の価値観、国益に基づいた政府レベルの声明が出されることを期待したいと思っています。この未来対話に参加された市民、またはオピニオンリーダーの皆様には、ぜひとも政府にいいスピーチの内容になるように働きかけていただきたいと考えています。

工藤:私たちの民間対話というのは、市民が日韓関係やアジアのことについて、自分の問題として考え、向かい合わない限り、本当の意味での交流は実現できない、との思いを持って取り組んでいます。こうした私たちの対話というのは、今後、北東アジアや日韓関係を考えていく上で、どのような役割を果たしていくべきなのでしょうか。

李淑鍾:外交政策というのは、民間や市民の影響を非常に受けると思います。市民の中には、政府が現実的な国益を追求してくれるのであれば、自国の利益を超えた形で、北東アジア地域や、世界における平和や繁栄、更には人権や民主主義など、共通の利益に関心を持ち、能動的に積極的に行動してくれる人たちがたくさんいると思います。

 ですから、こうした動きを個人の動きにとどめるのではなく、共同して知性を働かせることで、より積極的に政策に提言していくことができるようになると思います。そして、そうすることで、市民レベルで、さらなる政策へのかかわりがでてくるのではないかと思います。

工藤:最後になりますが、そうした中で、私たちの「日韓未来対話」が来年以降、果たす役割についてはどのようにお考えでしょうか。

李淑鍾:私たちが現在取り組んでいる「日韓未来対話」は、これまでの日韓間においての様々なフォーラムと比較してみると、共同の世論調査に基づき対話を進める点で大きく異なっています。その結果、両国民の相互理解の認識について、何が真実で、何が誤解されている部分なのか、ということを明らかにするという大きな役割を果たしていると考えています。ですから、これまでの対話の中でなされた議論を、さらに一般市民レベルに拡大していきたいと思います。

 昨日の対話も、多くの日本の方々にご参加いただきましたが、特に、「日韓未来対話」の特徴は、議論の内容を公にしているという点だと考えているので、今後は、市民代表や市民団体の指導者に、パネリストとしてご参加いただき、さらに底辺を広げていくことが1つの大きな役割ではないかと考えています。

工藤:そのために、今後も一緒に努力したいと思います。ありがとうございました。

李淑鍾:ありがとうございました。


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