日中関係の将来を考えた上での共通の利益とは何か(安全保障対話:後半)

2014年9月29日

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 後半の中国側基調報告を行った姚氏は前半から議論してきた空での危険性について、「中国の飛行機のウェブサイトに中国と日本の飛行機の動画が掲載されている。中国政府も安全な距離を測るように専門的な技術を持ち、飛行することを要求しており危険性はない」と安全性について言及しました。その上で、朱氏が挙げた25項目について、行き過ぎではないかと指摘しました。

140928_nakatani.jpg 続いて中谷氏はCICA会議(アジア信頼醸成措置会議)の上海宣言にふれ、自国中心の大国間秩序を謳う狙いはどこにあるのか、疑問をなげかけました。それに対して姚氏は、2011年の中国の平和発展白書における主張の延長であるとし、経済的に持続可能な安全保障体制を提案したものであると指摘。続けて呉懐中氏は、「この会議が海洋国である米国主導のアジア安全保障体制を、内陸国が集まって補う性格である」と述べ、対テロ対策で意義が大きいと指摘しました。

 金田氏は姚氏の提案について、メカニズムを作る前提として、共通利益の追求が必要な旨を指摘。「軍事に限らずシーレーンの保全や資源の開発など協同できる分野があるのではないか。また協同作業が進み、共有する価値を持てるようになれば、関係を深めることができる」としました。さらに国際法上の裏付けも考慮すべきでは、との指摘に対して姚氏は「法律に従うことは当然だが、価値観は定義が難しい」と語りました。

 山口氏はメカニズムの作成にあたって、「EUの経験が参考になる。大国は自制し、小国に拒否権を認める配慮が必要だが、それには時間がかかる」と指摘。続けて姚氏はEUも石炭鉄鋼共同体という共通利益の追求から始まったとし、北東アジアにおいてもエネルギー資源開発などのテーマがあがるのではないか、と日中の共通利益についての模索を提示しました。東郷氏も、「日本と中国はもともと長い交流の歴史の中で、共通する価値観があるはずだ」と日中共通の利益について協力できる可能性がある旨に言及しました。

140928_jinbo.jpg これに対して、神保氏からは、安全保障の面から「バランスオブパワーを制御できない制度は機能しない。米ソの冷戦時代と違い、アジアにおいては大国主導の安全保障制度は、バランスを欠くことにならないか」と指摘。張氏からも、「EUとは条件が違うことから新たな対話を始めることが必要だ」との指摘がなされました。

 これに関連して中国側から、日中首脳会談が実現するためには、まず閣僚の靖国参拝をやめてもらいたいとの要望がありました。宮本氏からは、どちらかの主張のみを受け入れることは困難で、お互いに負けではない形を作ることを考えるべきではとの提案がなされました。

 その他の安全保障問題について小野田氏は、「北東アジアの安全保障メカニズムにとって核兵器の管理は根本問題となる。解決には核保有国との戦略的対話を続けるしかなく、テロリストに流出するリスクをさけるためには最優先に取り組むべきである」としました。

140928_go.jpg 呉懐中氏は東京財団が主張する、多層協調的安全保障戦略に賛同し、軍事以外のさまざまな対話が必要であるとしました。それを受け、神保氏は「非伝統的な安全保障分野である、災害支援協力などは、政治的配慮なしに協調を進めるべきである」との提案がなされました。

 最後に会場から質問を受け付け、中国側、日本側のパネリストが応えました。
その質疑応答の中で、姚氏は「安全保障メカニズムはアメリカが主導する現在秩序への挑戦ではない」ことを強調し、「多層的な対話を通じて、関係を深めようということであり、たとえば中国からは、日本を核攻撃しないという宣言を出すことが可能ではないか」という注目すべき提案もありました。
 その後も、活発な意見交換が行われ、安全保障対話は終了しました。

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