北東アジア戦略会議 報告

2014年9月29日

 「第10回東京-北京フォーラム」閉幕後の29日午後、都内ホテルにて言論NPOが主催する非公開会議「北東アジア戦略会議―日米中トライラテラル会議―」が開催されました。

 「北東アジア戦略会議」は、言論NPOが創設の準備をしている、北東アジアの平和的秩序の構築に向けたマルチラテラル対話の序章として行われ、日本、アメリカ、中国の3か国から安全保障の専門家が参加しました。


 司会を務めた工藤は、会議の冒頭で「北東アジアに平和的な環境をつくっていくためには、どのようなアジェンダ設定をすればよいか」と参加者に問いかけました。これに対し、日中・米中間で起こっている戦闘機の異常接近事件などを念頭に「海と空での危機管理メカニズムの構築」を挙げる声が多く寄せられました。同時に、その前提となる信頼関係が、関係諸国間(特に日中間)にないことへの指摘も相次ぎました。

 では、信頼関係を構築していくためにはどうすればいいのか、民間の役割は何か、ということについて、中国人パネリストからは「日米中韓で安全保障の枠組みを再構築する。そのためにトラック2(民間レベル)でセミナーやフォーラムを立ち上げ、協力のあり方を話し合うべき」との意見が出されると、日本人パネリストからは「トラック1(政府レベル)は、効果は大きいが、ちょっとの障害でもすぐに止まる。トラック2は、効果は小さいが、継続性は高い。この2つのトラックを組み合わせることが大事」と指摘。アメリカ人パネリストは「小さな協力をすることから始めていく。ホットライン構築もそのステップの先にある」など、他のパネリストからもトラック2外交の役割に肯定的な声が寄せられました。

 また、他のアジェンダとしては、すべてのパネリストからテロリズム、気候変動、災害、感染症対策など「非伝統的安全保障」を挙げる声が寄せられました。日本人パネリストは「非伝統的安全保障分野で協力していくことが、伝統的安全保障にも好影響を与える」と主張し、中国人パネリストも「非伝統的安全保障分野での協力は、相互信頼の醸成に資する」と述べました。

 工藤は、昨年10月の「第9回 東京-北京フォーラム」で日中間で合意した「不戦の誓い」に触れ、「この枠組みを日中間だけでなく、東アジア全体に共通した理念としていくことは妥当か」と問いかけました。これに対し、日中間における理念としては大変有意義なものである、という評価では、パネリスト間で見解は一致しました。しかし、東アジア共通の理念とすることに対しては、日本人パネリストから「日米中3カ国なら意味がある」という肯定的な評価もあったものの、アメリカ人パネリストからは「安全保障政策における制約要因になり得るので、アメリカ政府は歓迎しないのではないか。例えば、台湾問題を考えるとかえって『不戦の誓い』の価値を弱体化しかねない」との懸念が寄せられ、中国人パネリストからも「日本だけではなく、『誰とも戦争をしない』という意味になると、中国にとっては難しいものになる」との意見が出され、政府レベルでの合意とすることは難しいとの見解が相次ぎました。ただ、中国人パネリストからは「教育上の理念として、国民間に広めていくこと自体は良い」との意見も寄せられました。

 北東アジア戦略会議では、今後も海外の専門家をお招きしながら、北東アジアの平和的秩序の構築に向けたマルチラテラルな議論を展開していきます。関連情報については言論NPOのホームページで随時公開していきますので、今後の議論にも是非、ご注目ください。

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