世界では大国の力による行動によって分断が深まる等、歴史的な困難に直面しています。しかし、そうした状況下でも、日本の未来に関する議論は国内にとんどありません。最も考えるべきことは、将来世代に課題を先送りにするのではなく、持続的な日本をどのように作っていくか、ということです。

言論NPOは創立以来、日本の政策がきちんと日本が抱える課題に見合った形で立案されているのか、政府の政策評価や政党の公約評価で厳しく点検してきました。私たちが評価作業を一時中断したのは、政党が選挙で政策実現を掲げて有権者の信を問うサイクルが事実上機能しなくなり、選挙自体が単なるイベントと化したためです。

しかし、私たちは日本の未来のために様々な課題に真剣に向き合い、その解決を目指さなければなりません。「日本の課題を考える」は私たちが考えるべき政策課題を明らかにし、その解決に挑む場です。ここで日本の未来に対する論点を明らかにします。

今、取り組んでいる議論

この議論をフォロー!

イラン戦争の行方と揺らぐ国際秩序の中で問われる日本の戦略―エネルギー・同盟・外交をめぐる複合的課題 言論フォーラム「イラン戦争の行方と日本の立ち位置」

image

米国とイスラエルによるイラン攻撃は、イラン側の報復攻撃とホルムズ海峡の封鎖によって長期化する様相を見せるともに、世界経済にも深刻な影響を及ぼし始めている。こうした中で、米国と同盟関係があると同時にイランとも長年良好な関係を築いてきた日本はどう対応すべきなのか。

日本の専門家は、戦争は当初の想定を超えて長期化し、停戦の見通しが立たない不透明な局面にあるという見方で一致。とりわけホルムズ海峡をめぐる緊張は、単なる軍事衝突にとどまらず、エネルギー供給や国際経済に波及する問題となっていることへの強い懸念を示した。

こうした状況の中で、日本は難しい立場に置かれているとの認識でも三氏は一致した。安全保障と外交ではアメリカとの同盟関係に依存する一方、エネルギーの多くを中東に頼る構造があり、両者の間でバランスを取らざるを得ない。戦争が長引けば、この二つの関係の間で日本はより厳しい選択を迫られる可能性があるとの懸念が相次いだ。

さらに、大国による力の行使が常態化する中で、法に基づく秩序をいかに維持するかが問われており、日本も自らの立ち位置を再考する必要に迫られているとの問題提起も相次ぎ、イラン戦争は、日本にとって遠い地域の問題ではなく、自国の安全保障と経済に直結する課題であることが議論を通じて浮き彫りとなった。


                                                           詳細な議論を読む

 言論フォーラム「イラン戦争の行方と日本の立ち位置

参加者:坂梨祥(日本エネルギー経済研究所中東研究センター長)
    鈴木啓之(東京大学大学院総合文化研究科特任准教授)
    松下知史(ジェトロ・アジア経済研究所中東・南アジア研究グループ 研究員)
司会者:工藤泰志(言論NPO代表)

坂梨祥氏(日本エネルギー経済研究所中東研究センター長)要旨

・停戦協議が進んでいるが、米国とイランが互いに譲歩せず、先行きは不透明

・米国は軍事的成果を強調する一方、ホルムズ海峡の封鎖を解除できず、軍事力の限界が露呈

・イランも体制維持の姿勢を崩しておらず、双方が譲らないため衝突回避の道筋が見えにくい

・日本にとって最大の課題はエネルギー安全保障。原油の約95%を中東に依存しており、依存構造の脆弱性が改めて明らかに

・備蓄で短期対応は可能だが、中東依存の即時解消は困難で、長期的には多角化が必要

・米国の国際法に必ずしも則らない軍事行動により、湾岸諸国で同盟見直しの動き

・日本でも米国との同盟関係の意味を再検討する必要性が浮上

・日本は中東依存が今後も続くことを前提に、不安定な地域情勢の中で安定的なエネルギー確保に向き合う必要がある


鈴木啓之氏(東京大学大学院総合文化研究科特任准教授)発言要旨

・停戦協議が継続しているが、核問題やホルムズ海峡の航行の自由をめぐり米国とイランの溝は埋まらず、先行きは不透明

・仮に米イラン間で停戦が成立しても、イスラエルが体制転換を掲げて単独で攻撃を継続する可能性があり、紛争長期化のリスク

・中長期的には、イランと湾岸諸国の関係悪化が地域不安定化の要因となる可能性

・米国がイスラエルを軸に構築してきた地域秩序が、イランとの対立を固定化させる懸念

・日本にとってはエネルギー安全保障が極めて重要。原油の9割以上を中東に依存しており、供給リスクが高い

・安全保障・経済では米国、エネルギーでは中東に依存する「二兎を追う」立場にあり、対立激化で選択を迫られる可能性

・日本は戦闘の早期終結と国際関係の正常化を重視し、多国間協調を軸に対応する必要

・エネルギー多角化や備蓄活用など、オイルショックの教訓を踏まえた政策推進が重要

・状況に応じた柔軟な外交対応の検討が求められる


松下知史氏(ジェトロ・アジア経済研究所中東・南アジア研究グループ 研究員)発言要旨

・停戦協議が続いているが、核問題やホルムズ海峡の航行の自由をめぐり米国とイランの溝は埋まっておらず、見通しは不透明

・双方が譲歩しない中、イラン側には交渉が時間稼ぎではないかとの不信感もあり、実効性ある合意形成は困難

・イラン体制は当面崩壊の可能性が低く、内部対立を抱えつつも一致して交渉に臨んでいる

・中長期的には、イランと湾岸諸国の関係悪化が新たな不安定要因となる可能性

・戦争前は建設的関与で一定の安定が保たれていたが、攻撃により相互不信が強まり、関係改善の見通しは不透明

・日本にとって最大の課題はエネルギー安全保障。原油の約95%を中東に依存しており、紛争の長期化は供給と価格の両面で影響

・停戦と国際関係の正常化は日本の国益に直結

・日本政府は武力行使の法的評価を慎重に回避してきたが、国際秩序の観点からは法の支配の回復を重視する姿勢が必要

・日本の対応としては、仲介努力への側面支援、国際機関を通じた停戦枠組みの形成支援が重要

・エネルギー・食料面で脆弱なグローバルサウスへの支援を通じ、国際的安定の回復に寄与することが求められる

日本の課題を考える

言論フォーラム「イラン危機に日本のエネルギー確保は大丈夫か」

4月30日(木) 17:00~18:00

お申し込み
締め切り間近

日本の課題を考える

言論フォーラム「日米同盟の意義と、今後の同盟関係」

5月25日(月) 18:00~19:00