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「言論NPO」 vol.5 「日本の企業経営のガバナンスを問う」

「言論NPO」 vol.5 「日本の企業経営のガバナンスを問う」

発行元:言論NPO

価格:¥ 1000 (税込)



目次

巻頭言「改革の核心は企業経営の立て直しにある」
工藤泰志

特別対談「日本の改革の障害と可能性」
ドナルド・P・ケナック/マーク・ノーボン/司会:イェスパー・コール

特集1 日本版ビッグバンはまだ成功していない

座談会「ビッグバンのシナリオはどこで狂ったか」
西村吉正/ポール・シェアード/蝋山昌一

座談会「ビッグバンの建て直しをどう進めるか」
斉藤惇/佐野角夫/津川清/松井道夫

インタビュー「政治の介入を排除し規制緩和を徹底せよ」
榊原英資

ベンチャービジネス座談会「日本は挑戦者を評価する国に生まれ変わるか」
亀井孝明/徳田一/永野恵嗣

第5回言論NPOエコノミスト会議
「税制改革と「骨太の方針第2弾」を総合評価する」
ロバート・フェルドマン/イェスパー・コール/高橋進/益田安良

特集2 みずほ問題とコーポレート・ガバナンス
言論NPO調査報告全文
「みずほ」システム障害問題の考察

対談「企業のガバナンスをどう構築するか」
北城恪太郎/横山禎徳

論文「取締役会はなぜ機能しなかったのか」
矢内裕幸

論文「銀行のガバナンスをどう回復するか」
田村達也

論文「みずほ問題と日本のコーポレート・ガバナンス」
ニコラス・E・ベネシュ

論文「持ち株会社は法的責任隠ぺいのシステムか」
上村達男

論文「みずほに見る日本的経営の欠陥」
中井省

論文「ガバナンス回復には強行手段が必要」
志賀敏宏

論文「みずほ問題で浮かび上がる銀行経営ビジョンの欠如」
斉藤誠

論文「みずほは統合を考え直すべきではないか」
川本裕子

巻頭言より

改革の核心は企業経営の立て直しにある

この1ヵ月、言論NPOでは民間経営の問題をテーマに揚げ、議論を行ってきた。「みずほ」のシステム障害から始まった経営のガバナンスをめぐる論議は、コーポレート・ガバナンス(企業統治)の論議を出発点に金融業の経営問題、そして金融ビッグバンの総括へと建設的に発展した。このような論議の展開は当初から期待していたものだった。一致点や問題意識の共有化を図り、論点を建設的に発展させなくては政策提言につながる意味のある論議にならないからである。

言論NPOが発足して8ヵ月が経ったが、私たちが取り組んだ議論は、政治や政策形成自体の問題から経済政策とかなり難しいものとなった。それだけ今の日本の状況は追い詰められているからだが、私が悩んだのはこのような難しいテーマでは発信者が専門家に限られ、議論の空間が広がらないことにある。発信の裾野を広めるためには議論のための判断材料が必要になる。6月初めに言論NPOが独自にみずほ調査報告書を公表したのは、議論の発展に資する独自の材料を提供したいと考えたからである。

コーポレート・ガバナンスの問題は、日本企業が収益性を重視した経営姿勢に転換することと同じである。経営者は富の創出に結果責任が問われ、株主に約束したものに説明義務を負う。経営にプレッシャーをかけるのは株主と、よりアグレッシブで公正な競争だが、この数年、明け暮れたのはむしろ内向き、内輪の議論であり、こうした中で象徴的に表面化したのが「みずほ」の問題だった。

次の論点として日本版ビッグバンの総括に踏み込むことにしたのは、こうした株主民主主義と金融ビッグバンが目指した思想は表裏一体の問題でもあるからだ。だが、市場立脚のシステム転換に大きく舵を切り替えようとしたにも関わらず、変化は遅く、市場は活性化していない。当時、計画を立案した当事者からも「ビッグバンはまだ成功していない」という発言が相次いでいる。97年に開始したビッグバンが証券市場などの抜本的改革を進めたのにその目的が達成できなかった背景には、銀行のバランスシートをどう縮小させて直接金融市場に誘導するのかなどの間接金融のビジョンの欠如もあるが、結局は政府の救済を期待し、「自己責任」で挑戦し収益を生み出そうとする経営の革新が遅れていることにある。

日本の構造改革の問題の核心もまさにそこにある。小泉改革派経済に対する官の部分にメスを入れようとしているが、企業経営を立て直し、収益を取れる企業をより創出することに重点が置かれなくてはならない。経済の新しい可能性はそこから始まるからである。

言論NPO代表 工藤泰志



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