風評被害を乗り越え、食品の安心をどう取り戻すか

2011年7月2(土)収録
出演者:
生源寺眞一氏(名古屋大学大学院生命農学研究科教授)
澤浦彰治氏(グリンリーフ株式会社代表取締役)
阿南久氏(全国消費者団体連絡会事務局長)

司会者:
工藤泰志(言論NPO代表)


 7月2日、言論NPOは、言論スタジオにて生源寺眞一氏(名古屋大学大学院生命農学研究科教授)、澤浦彰治氏(グリンリーフ株式会社代表取締役)、阿南久氏(全国消費者団体連絡会事務局長)をゲストにお迎えし「風評被害を乗り越え、食品の安心・安全ブランド再興のためにどう取り組むのか」をテーマに話し合いました。


 まず代表工藤から、「震災後、日本の強みとされてきた食品の安心ブランドが崩れてしまった。これを立て直すためには今後どのような課題があるのか」と問題提起があり、①今回の震災による風評被害がどれほど深刻なものなのか、②被害を解消する流れをつくるために、政府や生産者、消費者それぞれにとって何が必要なのか、③日本の食品の安心、安全ブランドを立て直すために、日本の農業や消費者に求められていることはなにか、をトピックとして、話し合いが行われました。

 第一の点について、生源寺氏は、「アジア向けを中心に農産物の輸出は落ちており、食品の輸出を農業の活路の一つにしていたが、かなり厳しい状況にある」として、被害が被災地のみならず、全国的に波及していることを指摘しました。阿南氏は、「政府の安全対策が後手後手で、どこを信じたらいいか分からなかった」と述べ、そのため消費者としては、とにかく買わないという自己防衛策を取らざるを得なかったとしました。一方、生産者の観点から、澤浦氏は、「放射能の暫定基準値で見ていけば、一部地域を除いてはすべて安全になっているが、その基準値を信用しないということになると、安全であっても安心出来ない」と述べ、安全の基準のあり方自体が揺れている現状を説明しました。

 第二の点に関しては、阿南氏は、食品安全に関する消費者庁の対応が、消費者の不安解消に対応する動きが全くとれなかった、ことを指摘し、「政府が消費者の立場に立って常時数値を測定した上で、万が一に備えて対策を明確に示す。消費者の安全を優先させる仕組みを着実に構築することでしか、信頼回復の道はない」とするとともに、消費者としても、「正確な知識を消費者自身が得ていくことが必要だ」としました。さらに生源寺氏は、専門家が言っていることに幅があることを問題視し、「科学の観点から、科学者を評価することも必要ではないか」と述べ、一般市民の科学者に対する信頼を向上させる仕組みの必要性を指摘しました。

 最後にこの状況を立て直すための方策について、「消費者が問われている」と強調する阿南氏は、「生産者からの悩みを受け止める消費者はたくさんいる。コミュニケーションをしながら、一つ一つ解決策を模索する場をつくり上げ、広げていくことが今、必要なことだ」と指摘、澤浦氏も「生産者としてみたとき、いま出荷されているものは安全。生産者にとっては、安心をどう伝えていくかが課題であり、食べていただく消費者とコミュニケーションをしっかりやっていくことが重要」と述べ、消費者と生産者によるコミュニケーションの重要性をともに強調しました。最後に、風評被害をめぐる諸外国のコミュニケーションについては、生源寺氏は、「最も説得力のあるメッセージは日本の消費者の行動。生産者とのコミュニケーションがきちんとあり、安全だから食べている、という消費者の行動が海外に伝わることが重要」としました。

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