国際社会が転換点を迎える中で、日本外交の在り方が問われ始めています。
冷戦終結後、世界で築かれた多国間協力やルールを基盤とした秩序は、大国の「力の行使」と「取引」によって変更を余儀なくされています。こうした大国の動きは一時的なものなのか、それとも世界の支配的な構造になっていくのか、日本外交はこのままでよいのか――日本を代表する外交・国際政治の専門家は、厳しい見方をしていることが、分かりました。
議論では、これまで日本の国益を支える重要な要素であった多国間主義やルールベースの世界秩序が揺らぎ、「力の秩序」が構造化し始めていることと、さらに、米国自身が同盟国である日本に対しても経済・軍事両面で要求水準を引き上げている現状に強い懸念が相次ぎました。
議論に参加した3氏は、対米中心で進めてきた従来の日本外交のあり方は見直しを迫られているとの認識で一致、日本は米国の政策転換にどう備えるのか、同盟の戦略的自律性をどう確立するのか、に議論が進みました。
I 言論フォーラム「日本外交はこのままでいいのか」
参加者:古城佳子(東京大学名誉教授)
中西寛(京都大学大学院法学研究科教授)
宮城太蔵(中央大学法学部教授)
司会者:工藤泰志(言論NPO代表)
司会を務めた工藤は冒頭、米国を含む大国の行動に見られるように、国際社会は力の行使や取引が前面に出る局面に入っていると指摘しました。そのうえで、大国による「力の秩序」が一時的な現象にとどまらず、今後の国際社会の構造として定着していくのか、各氏の見方を尋ねました。
I 大国の不満が既存秩序を不安定化。中小国が追随すれば「力の秩序」は構造化する
古城氏は、既存の国際秩序が存続するかどうかは「その秩序に不満を抱く国が出てくるか」に左右されてきたのが歴史だと振り返りつつ、「今は大国自身が不満を抱いている」と事態の深刻さを強調しました。中国は以前から、西側諸国を中心に成り立ってきた国際秩序に不満を抱き、自らを途上国の代表と位置づけながら異なる秩序をつくろうとしてきたと指摘。ロシアについても、ソ連崩壊以降に自国が縮小する一方でNATOが拡大してきたことへの不満が長く存在してきたと述べました。
さらに古城氏は、米国もまた、国際公共財の維持に負担してきたにもかかわらず「その負担が報われていない」という不満を、特に現政権が表面化させていると指摘しました。大国が不満を抱く状況そのものが、より直接的に既存秩序を不安定化させているとの見方を示しました。
そのうえで、秩序の安定を取り戻すには不満を解消しながら調整していく必要があり、歴史的にはそれが外交の役割だったとした一方で、大国がそろって不満を抱く状況では調整が極めて難しいと述べました。こうした大国の行動に中小国が追随すれば、「力の秩序」は構造化してしまうと懸念を示しました。