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 マニフェスト評価で一番伝えたいメッセージとは

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マニフェスト評価で一番伝えたいメッセージとは

聞き手:田中弥生氏 (言論NPO理事)


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※テキスト部分は、一部加筆しています。


マニフェスト評価で一番伝えたいメッセージとは

田中:工藤さん、こんばんは。
工藤:こんばんは。


候補者に何を実現するのか、緊急アンケートを行っています

田中:投票日まであと4日になりましたが、現在、言論NPOではどんな活動をされているのでしょうか。

工藤:各党のマニフェスト評価は、一応完成しまして、130ページの評価書が出来上がりました。それを色々なところで普及しています。またインターネットからも見られるようになりました。それから、自民党と民主党の公約が分かりにくいので、私が政治家に話を聞きに行ってきたのですが、その動画を、今日から公開しています。

 そして、今、スタッフ全員で立候補者に電話かけをしています。候補者に緊急アンケートを行い回答してもらおうと思っています。政党の評価はある程度行ったのですが、政治家が今の日本の課題に対してどう考えているのか、ということをもっと表に出そうと思っています。それが間に合うかどうかギリギリのところなのですが、可能であれば、投票の前に全部オープンにしたいと思っています。

田中:先ほどの130ページ余りのマニフェスト評価書ですが、時事通信日経新聞毎日新聞など、かなりメディアでも取り上げられて話題になっていますね。


マニフェスト評価で一番伝えたいメッセージとは

工藤:それ自体はうれしいことなのですが、取り上げられ方には納得がいっていません。結果として点数はつくのですが、それよりもこの評価書に書いてある一番伝えたいメッセージは、国民との約束を軸にした政治をどうしても取り戻さなければいけない。そのためにも、自分たちでマニフェスト、公約を手にとって、それを自分たちで評価するための手法を、きちんと伝えているわけです。その手法をやってみた中で、私たちが今度専門的に評価すると、発表したような点数になる話です。つまり、マニフェストというのは政治が国民に向かい合うための道具なのですね。これを生かすも殺すも、僕たち有権者側にかかっています。

 今のマニフェストはあまりにひどくて、約束になっていません。それに対して、きちんとマニフェストを読みながら、政党を選んでもらうための1つの手がかりを私たちは提供しています。そういう風にマニフェスト評価を見ていただければいいと思いますし、言論NPOのホームページを見てもらえればと思います。

田中:それは、政治側に対する要求でもあるのですが、有権者も、あるいは報道機関もだと思いますが、単純に点数だけ並べて、それで短絡的に選んでしまうのではなくて、なぜこの点数になったのか、どうしてこういう判断が必要なのか、というところを考えることが重要なのですね。

工藤:そうですね。既に公開している工藤ブログでかなり話をしているのですが、なぜこの点数になったのか、ということに1つひとつに意味があるのですね。結果的に似通った点数になったとしても、その後ろにある理由は全然違うわけです。特に、「評価の視点」というのを読んでほしいのですが、社会保障や財政政策など、いろいろな政策課題の中で、政治は国民に何を伝えなければいけないのか。それに対して、誠実に、真剣に伝えているところが結果として点数がよくなっています。また、それを実行できる仕組みがあれば、さらに点数は良くなっています。そういうことがあって、相対的な点数になっていくわけです。


公約に基づく約束になっていない、政治家の「約束」

 ただ、それ以前に、今回の約束が、本当に国民に対する約束になっているのか、ということが非常に気になっています。私もテレビで政見放送を見ていて、政治家が、これを約束しますとか、「約束」という言葉を多用するわけです。しかし、それは率直に言って嘘だと思うわけです。つまり、彼らが「約束」と言っていることを、その党の公約集に戻って見てみると、ほとんど約束にはなっていない。だけど、話をするときは「約束」になったり、非常に勇ましいことを言ってしまう。だから、こういう風なことに騙されないためにも、このマニフェスト、公約という存在が、改めて重要になってきているのです。だから、今回こそ、ぜひ公約集を手に取って読んでほしい。一方で、国民に分かるようにしっかりと、マニフェストに書いてもらうような政治に、これを機会に作り直していかないと、危ういなということを感じています。

田中:おっしゃる通りで、私も毎朝、政見放送を見ていますが、非常にスローガン的で、ワンワードで、単なるコマーシャルにしか見えません。政策課題について、きちんと議論してほしいのに、そこがないというのは、これまでと比べてかなり後退したと思いました。また、新聞を見ていても、賛成と反対とか、短絡的な説明に陥ってしまっていますよね。

 でも、工藤さんの今の話によれば、マニフェスト評価も単に点数だけを見て判断するのでは、同じ問題に陥ってしまうということですよね。


政治と有権者の間に、緊張感ある関係を作り出すためのマニフェスト評価

工藤:そうですね。つまり、僕たちがなぜ評価を行っているのか、ということにもかかわってきます。この評価は2004年の頃からやっているのですが、有権者が主体の政治をどうしてもつくりたいと思ったからなのですね。つまり、政治は色々なことを言っても何も実行しない。そういう政治をただあてにして、お任せするような社会ではなくて、有権者が主体的に今の課題に対して考えて、政党が出す公約に対して、それは違うよとか、プレッシャーをかけるような強い民主主義をどうしてもつくりたいと思って、評価をやっています。だから、私たちの評価は、やはり厳しくなってしまいます。新聞には「辛口評価」と出るのですが、有権者側からすれば、今のマニフェストや公約の中身に満足したらまずいと思います。あまりにも内容がない、という状況です。そういう緊張感を作り出すための僕たちの評価なので、その評価の中身を読んでいただかないと、表面的な結果だけになってしまうと、非常に残念だな、と思うところもあります。

田中:報道もそういう感じになりがちですが、私たち有権者としては、点数の背後にある情報を言論NPOのサイトから読んでみることが必要ですね。

工藤:そういうことです。ただ、一言言うと、僕たちの評価はかなり難しいというのも事実です。そこで、今回は、公約を手にとって簡単に見る方法も提供しています。例えば、項目が重点的に絞られているとか、課題に対してきちんと答えを出しているとか。

 僕も、昨日、テレビで政党の党首の討論会を見て、気になったことがあります。消費税を増税するかどうかが争点みたいになっているのですが、僕は、それはおかしいと思います。消費税の増税はもう決まっていて、経済的な問題でやるかどうかの時期の議論はあると思います。しかし、消費税の増税をやらないというのであれば、逆に、増税分のお金をどのようにして捻出して、急増する社会保障費や累増する国債残高に関してどうするのか、ということについて代替案を示さなければいけないですよね。

 やはりもっと正直な議論を政治側もしてほしいし、私たち有権者も既に気づいているとは思いますが、今回みたいな重要な局面の中で、選挙をやっているということを、改めて認識してほしいな、と思います。


マニフェスト評価自体の問題点とは

田中:マニフェストの可能性については、今お話いただいたのですが、あわせて限界といいますか、問題点はないのでしょうか。

工藤:2つあると思っています。つまり、マニフェストというのは、政権公約ですよね。つまり、マニフェスト評価は、政権を競い合い、いろいろな課題解決をやっていくためのプランを評価するものです。でも、ある政党においては、別に私は政権を競わないけど、ある程度の役割、つまり政権党が暴走しないためにチェックをする、というような役割の政党があってもいいわけです。そうなると、私たちが全ての政策の評価を行ってしまうと、結果として政権を目指さない党は、点数がかなり低くなってしまう可能性があるわけです。私は全ての政党が未来に向けて競争すべきと、基本的に思っていますが、多様な民意の代表としての政党の役割も否定していません。むしろそうした党の存在そのものを否定してしまうということになると困ります。

 マニフェストの評価は、政権を選ぶための評価だ、ということを皆さんも十分にしっていただいて、判断してほしいと思います。

 それから、評価団体側の問題もあります。言論NPOにも意見があれば寄せてほしいのですが、基本的に評価の作業とは有権者側に立って民主主義のサイクルに連動しなくてはなりません。有権者がまず自分たちの代表を選び、代表が有権者の代表として仕事をする。その仕事の評価を次の選挙で表明する、というサイクルが民主主義のサイクルです。しかし、選挙の時だけ評価する団体が出てくることがよくあります。私のところにも選挙になると、評価を一緒にできないか、と言ってくる人がいます。

 しかし、自分たちがやった評価がどうだったのか、ということを検証していかない、また、評価した政権が続いた場合、その実績をきちんと評価しない評価団体というのは、かなり無責任で問題だと思います。

田中:評価する側にも責任があるということですね。

工藤:そうです。言論NPOは04年から選挙時、それから選挙が終わった後の政権の実績評価をやって、自分たちが行っている評価の検証もいるのですが、残念なのは、実績を評価する団体があまりないということです。

 今回も私たちは、マニフェスト評価の前に、民主党政権の実績評価を行い、選挙時に国民に約束した公約がどうなったのか、当時の評価と比べて分かるようになっています。

 しかも、評価する団体は中立でなくてはなりません。特定の利害に関係したり、評価団体が高い評価を出した後に、その政権に協力するなんて、ことはあってはいけないのです。しかし、前回の選挙後、そうした団体やシンクタンクもかなりあるのです。

 言論NPOは中立で全ての利害から独立しており、それを外部評価にも出してその結果を公開しています。評価団体のガバナンスも問われなければいけないと思っています。

 そういうことを乗り越えて、有権者に向かい合う政治というのを作らなければいけない。そういう意味で、このマニフェストの役割は非常に重要です。また、それをきちんと評価し、議論するという市民社会がどうしても必要だと思っています。

田中:有権者もレベルアップしないといけませんね。

工藤:知的武装をして、政治に騙されないようにしないといけない。メディアも色々やっていますが、そのための判断材料を私たちも出していきますので、最後まで付き合ってほしいと思っています。

田中:ありがとうございました。



⇒ 「私たちは政治家に白紙委任はしない」の呼びかけへの賛同はこちらから

 

2012年12月13日 14:11

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