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2010年7月 9日

投票日、有権者は何を判断すべき

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聞き手:田中弥生氏 (言論NPO 監事)


田中: 工藤さん、こんばんは。いよいよ投票日が近づいてきましたが、かなり短期間のうちで色々なことをなさってきましたよね。マニフェスト評価、それから各党の政調会長のヒアリング、最後に参院選立候補者に対する個別のアンケートを公開されたようですけれども、どのようなことが分かったでしょうか。


工藤: 今回僕たちが気にしたのは、有権者が、どこに投票すればいいのか悩んでいるのではないかということです。今回の民主党のマニフェストも国民に向かいあったものではありませんが、各党のマニフェストも政策集とか、主張集になっていて、これだけでは選べない。一方で、今の日本が直面している課題に対して、日本の政党がどういう答えを出したのか、というのも定かではない。そのような状況の中で、僕も個人的にそうですが、皆悩んでるんだろうなあと思ったんですね。そこで、言論NPOがその手がかりを出すためには、まず、各党の政調会長にこの課題に対してどのような解決策を出したのか、ということを聞きたかった。それでも分らなければ、候補者自身が有権者に自分の信任を問うていくわけだから、候補者自身が課題認識と解決策をどう考えているか、明らかにしなければ今回の選挙は何のために行われているのかわからなくなってしまう。そう思っていたので、インタビューと候補者アンケートの2本立てでやって、ようやく公表できました。ですから、言論NPOのHPでは、どこに、誰に投票すればよいのかという手がかりは出せたのではないかと思っています。


田中: 例えば私が、有権者の立場になると、言論NPOのHPには色々な情報がありますが、どの点に着目し、どのように考えればよいのでしょうか。


工藤: 今回の民主党のマニフェストが、「強い経済、強い財政、強い社会保障」というように転換したということには意味があって、どんな政党も日本が直面している問題からは逃げることができないわけです。強引に民主党政権は課題に引き戻された。つまり、日本の社会の持続性(財政・社会保障)に代表されますが、少子高齢化という問題が急速に進む中で、若い世代から見れば、自分たちの将来が見えないという状況にあるわけです。

 そういう状況を、政治が国民に説明しなければいけない。それがまさに、「財政」と「社会保障」と「経済」なのです。民主党政権はそこに戻された。つまり、課題に向かわないと、日本の政治が未来に対して何の主張も展開できない、ということがはっきりとわかったわけです。ということになると、有権者は、政党や個人が日本の課題をどう認識していて、それにどういうプランを持っているのかということを、今回の選挙では、判断すべきだと思います。それで、マニフェストを掘り下げるための政調会長へのインタビューと、今回の候補者アンケートを作成し、候補者たちに本音レベルで何を考えているかということを問うてきました。また、地元では選挙演説とかもあると思うので、それらを見ながら、どのようなプランを出しているかということを自分で見て判断するしかないと思います。


田中: 私も、立候補者別のアンケートを拝見しましたが、一番面白かったのが、全体の集計というよりも、個々の立候補者の回答の有無、回答している場合には、どういう回答をしているか、自由記入欄も含めてすべて見比べられるようになっている。これはかなり画期的だと思ったのですが。


工藤: そうですね、今回わたしたちは400人ほどにアンケートを出して、そのうち181人が回答してくれました。設問は13問ですが、これに回答することにより、候補者本人が日本の課題に関してどのような考えをしているのかということがかなりわかるようになっている、凝った設問です。それに181人の方が回答してくれたということのほうが非常にうれしい。逆にいえば、それ以外の人は回答してくれませんでした。僕たちは何度も連絡を入れましたが、選挙戦でそれどころじゃないという感じだったと思うんです。

 また、政党のマニフェストに書いていることと、候補者が言っているのが違っていることが結構多い。たとえば、菅政権は消費税の問題を一生懸命言っていますが、民主党の議員の中で消費税の増税に賛成している人は2割ほどしかいません。ほとんどの人は反対だったり、無回答だったりします。それから、今の日本が直面している課題について、当選後すぐに取り組みたい課題は何か、と聞いたところ、ほとんどの候補者は「雇用対策」や「経済成長」でした。おそらく、日本の経済がかなり厳しくて、雇用に吸収力がないということを多くの人が考えているということです。ただ、政党レベルの議論は財政再建、消費税がアジェンダになっていますよね。しかし、財政再建や消費税をやりたいと言っている人はほとんどいない。ですから、候補者と政党間に意見のズレが見えましたし、また同じ党内の候補者間でもかなりの意見のちらばりがみられました。こういう問題をどのように考えなければいけないのか。僕たちは日本の政治は一つの大きな曲がり角に来ているということを感じます。つまり、日本の政治は今大きく変わろうとしているということです。日本の課題に向けて、その解決策を競おうという段階に来ているというのは間違いない。ただ、そのプランに関して、政党・候補者も、具体的なものを提示される方はまだまだ少ないわけです。

 だからこそ、今度の選挙は、この課題にどう政治家が向き合っていて、どう答えをだしているかを僕たちは見なければいけない。そうしなければ、せっかく投票した政治家が参議院議員になったとしても、本当に仕事ができるかどうかがわからないわけです。ですから、課題の認識と解決プランを有権者が認識するという非常に大事な局面にきたなと考えています。


田中: まさにその、アンケートの個別の回答を見ることにより、この候補者はどういう課題を認識して、どういう解決方法を考えているかということを一つひとつ、私たち有権者が確認していかなければならないということですね。


工藤: そういう局面になっているということですね。完全なプランを出すのは非常に難しいですが、少なくとも課題認識を間違っていたら話になりませんよね。先程の財政再建や社会保障、経済について真っ先に取り組みたいと考える候補者というのは、課題認識をしている人だと思います。一方で、それに対して具体的なプランがないにしても、それに対してどのように政治家として迫ろうとしているのか。その方法論や姿勢が感じられないと、その候補者はレトリックばかりで、本当に政治の仕事をしないかもしれない。このあたりまでは判断ができると思います。


田中: なるほど。この言論NPOのアンケート結果にはすぐコメントが入っていましたが、そこのコメントを拝見すると、「よく知らない名前の政党が、どんどん短期間の間に増えていった。でも、ここのアンケート結果を見ると、政党内でも様々な意見が出ており、政党間での再編の可能性があるのではないか」という意見も出ているのですが、このあたりどうですか。


工藤: まったくそのとおりで、海外にいる人たちからたくさんコメントが寄せられてきています。間違いなく、日本は現在の課題を解決しながら、政治レベルで未来に向けた競争が始まろうとしているわけですね。ただ、単なる政治レベルの話に任せてしまうと、そのような競争が起こらない気がしています。有権者は、課題に対して、日本の政治家や政党はどう考えているのか、というプレッシャーをかけ続けないといけない。政治はその課題に向き合い続けているわけです。有権者がその課題に取り組むべきだとプレッシャーをかけつづければ、おそらく課題解決を一つの軸にした政界再編や、新しい仕組みが始まるような気がします。僕たちは、日本の政治が変わろうとするまさに過渡期の真っただ中にいるのだと思います。ただ単に、今の政治はだめだよと考えるのではなく、政界が変わろうとする一つのプロセスとしても大事だと考えなければいけないし、有権者の責任というのは重要な局面にきていると思います。投票日は絶対に選挙にいくべきですね。


田中: ありがとうございます。頑張ってください。


(文章は、動画の内容を一部編集したものです。)

投票日、有権者は何を判断すべき

聞き手:田中弥生氏 (言論NPO 監事)

投稿者 genron-npo : 14:43 | コメント (0) | トラックバック

2010年7月 4日

9党政調会長インタビューを終えて見えてきたものとは

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今回の選挙で国民に対し説明するべき政策は何か、各党のマニフェストの真意に迫るため、9政党政調会長(代理)突撃インタビューを行いました。

聞き手:田中弥生氏 (言論NPO 監事)


田中: 工藤さん、こんにちは。今、全政党の政調会長にインタビューをして回っていると伺ったのですが。

工藤: そうですね。僕たちは、マニフェストの評価をしているのですが、今回のマニフェストがかなりひどかったのですね。本来、マニフェストは政権公約なので、去年のマニフェストが本当のマニフェストで、今回の参議院選挙でのマニフェストは、ある意味で、昨年のマニフェストに基づいて政権の中間評価を行なうということです。それにしても、今回のマニフェストが従来型の選挙公約に戻ってしまいました。
一方で、菅さんの民主党も、自民党もそうなのですが、経済や財政、社会保障など、今、日本が直面している課題に対して、何か論戦が始まりかけているのですが、民主党内も一枚岩ではないため、益々分からなくなってきています。ただ、せっかく、今の日本の課題に向けて議論が始まろうとしているわけですから、政党が何を考えているのか、聞きに行かなければいけないと思い9政党を回ってきました。

田中: 確かに、私たちも全党のマニフェストを読むという機会はなかなかないのですが、実際にインタビューをした内容と、実際にマニフェストに書かれていることに違いがありましたでしょうか。

工藤: とにかく、僕たちの映像を見てもらいたいのですが、民主党は政権に就いたものの、ほとんど言い訳みたいな状況でしたね。僕は、マニフェスト型の政治というものを何のためにやっているかというと、国民に向かい合う政治を実現するためだと思っています。つまり、政治のための道具ではなくて、国民のための道具だと思っています。だから、もし、今までのマニフェストなり、公約を止めるのであれば、堂々と「こういう事情でこの政策をかえるのだ」と言った方が、国民からの支持を集めやすいと思うのですが、奥歯に物が挟まった感じでした。

 それから、自民党を含めた他の政党もそうなのですが、やはり痛感するのは、党の中で政策をつくるということが、十分に機能しているのか、ということが非常に気になりました。というのは、政治家自身にはそれぞれ個人の意見があるわけですが、その個人の意見と今度の選挙に出しているマニフェストが違うわけです。例えば、あることを一所懸命説明してもらっても、「それがマニフェストに書いていないのはなぜですか」と聞くと、「それは印刷が間に合わなかった」など、そういう話が公然とされてしまうわけです。それは、僕たちから見れば考えられない話であって、選挙自体が国民に対して政党の主張を説明し、約束を取り交わすという本当の大きな舞台なのに、それに対して「印刷が間に合わなかった」とか、言っていることと違ってしまうし、選挙を軸にして国民に向かい合う形が、党内にちゃんと設計されていないのではないか、ということが心配になりました。

田中: なるほど。確かに、他の国の様子を見ていても、マニフェストというものは、選挙の直前につくるのではありませんよね。マニフェストをつくるプロセスで、例えば有権者との対話の機会を設けたりして、じっくり醸成プロセスそのものを大事にしていると聞いているのですが、そのプロセスが日本の全政党にわたって見えないと言うことでしょうか。

工藤: 全政党というわけではありません。今回の新政党というのは、自民党を離党した人ばかりで、まだ小さい政党ばかりです。だから、党としてのガバナンスなどが十分に機能していないようなこともあると思います。また、昔からの政党というのは基本的には長い歴史がありますから、政策に対してはかなり熟れているわけです。熟れているのですが、自党の主張を書いているだけなんですね。その主張を選挙でどういう風に約束の形に変えていくのかとか、目標はどれで、そのために何をいつ実現するのか、ということが曖昧になってしまうわけです。全てを否定しているわけではありませんが、選挙を軸にして政策がきちんと党で熟れて、国民に示す、という感じはまだまだこれからだという感じがしました。

田中: なるほど。それがインタビューを通じて、よく見えてきたというわけですね。

工藤: 見えてきたわけです。今回、僕たちがインタビューを通じて思ったことは、映像を見てもらえれば分かると思うのですが、政党がダメというよりも、政治家はかなり政策を勉強していますし、かなり詳しい。だから、僕は分からないことについては、かなり突っ込んで聞いていきますから、議論しているとかなり激しいやり取りになるのですが、しかしインタビューが終わり、カメラが止まった後、今日の議論は面白かったという風になるわけです。というのは、みなさん政策が好きだし、日本の社会について考えているということは、さすが政治家だなと思うわけです。しかし、それを国民に伝えるというところの問題がちゃんと成熟していないわけですね。だから、そこが成熟しないと、本当の意味でのマニフェスト型の政治、つまり単なる公約がどうとかではなくて、国民に向かい合う政治にはなっていかないと思います。だから、やはり政治家に絶えず会って、話をしていかなければいけないのではないかと。そういう意味では、今回、インタビューに行ったことは、非常によかったと思っています。一方で、政治家が今何を考えているのかということも、多分この映像を見ると、みなさん分かると思うんですよ。

田中: 今の話で、なるほどと思うことがありました。昨年、言論NPOでは、民主党と自民党で政策別討論会を行ないましたよね。その際に、かなり深いところまで突っ込んで議論されて、バックグラウンドをみなさんお持ちだったのに、マニフェストになると急に、抽象的になってしまう。このギャップは何でしょうか。

工藤: 一つはメディアの問題を含めて、有権側が政策論議をきちんとしてくれ、というプレッシャーをかけていかないといけません。また、本来約束としておかしいのだけど、選挙ではなるべく争いにならないような感じで、みんなに何かのサービスを提供するというマインドになりがちです。マニフェストを全部読むと、何となくサービス提供型、支出増型のマニフェストに大体なっているわけです。選挙というものはそういうものだけれど、国民に伝える際に、政治側のそういう傾向が強すぎます。しかし、国民が知りたいのは、本当にその課題に対してその政党がどういう解決のプランを出して行くのか、そのプランで各政党がどういう競争をしているのか、それを知りたいわけですね。だから、市民や有権者もそういう風にしてほしい、ということを発信していく必要があると思います。ただ、本来はメディアがそういうプレッシャーをかけないといけない。

 今回、各政党を回って分かったのですが、新聞やその他メディアで報道されていることとやはりちょっと違うんですよ。メディアでの報道を見ると、全然ダメかなと思っていたのですが、意外に考えていました。やはり、まだまだ政党や政治家が今考えていることが表に見えていないということを非常に感じました。

田中: 今、政治家の意見と仰いましたが、政調会長へのインタビューと同時に、政治家へアンケートを行なっていると聞きました。

工藤: そうです。実をいうと、今アンケートを行なっている最中なのですが、今回のマニフェストのあり方をみて考えたのは、どんな政党が政権をとろうと、日本が直面している課題から逃げられないわけです。人口減少と高齢化が進み、それに伴う仕組みができていない。財政も破綻する寸前になってきていると。だから、それに対してプラン競うという点で、政党のマニフェストがそうなっていないといけないけれど、多くの政党のマニフェストはそうなってはいません。だとすれば、政治家自身は何を考えているのだろうということに、非常に関心を持つわけです。事前に言論NPOが行なった有識者アンケートの結果見て、おやっと思いました。日本の目指すべき政治は、二大政党ではないという声が半数を超えているわけです。それから、既成政党についてはあまり信用ができないという声が出てきています。また、理想とする政治の枠組みについても、さっぱり見えないという声が3割ぐらいあるわけです。そうなってくると、今行なわれている政治は大きな変化のプロセスじゃないかという感じが、すごくするわけです。ただ、そのプロセスがどういう風にして形になっていくかといえば、やはり日本が直面している課題なんですね。課題に対して、政治家がどう考えていて、どう競い合っているかということによって、政治の姿が国民に見えてくるわけです。だから、この政治の大きな変化の中で、有権者が本当の政治を選ぶということが難しくなってきたからこそ、僕たちは政党のマニフェストだけではなくて、政治家とか候補者自身に対して見解を求め、それを有権者に明らかにしていくという材料を提供していく必要があると思っています。

田中: そうすると、ある意味政党政治のマップが大きく変わろうとしているので、今は政治家個人に注目するということが必要だ、ということですね。

工藤: 本来は、政党政治の中でマニフェストを競い合うべきです。しかし、マニフェストが機能しなくても、政治家は立候補しているわけです。だとしたら有権者は、その政治家が本当に今の日本の課題を認識して、国会で仕事をしてくれるのか。それを見極めない限り、どこに投票すればいいかわからなくなってしまいます。だから、大きく日本が変わる時なので、僕たちがそういうことをやらなければいけないと思っています。ただ、今回の政調会長(代理)へのインタビュー動画、それからアンケート結果をこれから公表しますが、ぜひ見てほしいと思います。多分、僕の質問自体も甘くて、もっと厳しくやれという声があるかもしれませんが、政治家は嫌がらないで、こちらの質問に答えようとしていました。それに対して、僕たちはアジェンダに対するちゃんとプランがあるのかということを、どんどん聞いていったわけです。こういう緊張感が、日本の政治の中に必要だと思うので、言論NPOはそこもやっていかないといけないなと思っています。

田中: とても楽しみしています。

工藤: ぜひ、見てください。

(文章は、動画の内容を一部編集したものです。)

9党政調会長インタビューを終えて見えてきたものとは

聞き手:田中弥生氏 (言論NPO 監事)

投稿者 genron-npo : 23:01 | コメント (0) | トラックバック