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マニフェストをいかに読み解くか
言論NPOはそのための情報を発信しています

聞き手:田中弥生氏 (言論NPO理事)


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マニフェスト評価と実績評価

田中:工藤さん、こんばんは。あさって公示ということで、言論NPOの工藤さん、そしてスタッフの皆さん、佳境に達していると思うのですが、今、何をされているのですか。

工藤:今は、マニフェスト評価の作業をするために、みんな徹夜状態です。12党になってしまったので、そのマニフェストの評価、田中さんも含めて評価委員の方にやっていただいているところもあるのですが、それを私たちがきちんと検証して評価をまとめるという作業をやっています。同時に、自民党と民主党に関しては、マニフェストが非常に分かりにくいので、この前まで4人の政治家に突撃で話を聞きに行って、マニフェストを読み解くためにも必要な議論をぶつけていますので、これも近く全部、公開します。あと、いろいろな形で、複雑なマニフェストを読み解くための専門家の意見を公開して、有権者が今回の選挙できちんと判断できるような仕組みを作るための情報提供に毎日取り組んでいます。

田中:マニフェストの評価という前に、民主党の実績評価というのも主要な分野ですよね。

工藤:そうですね。その前に一つ言わなければいけないのは、私たちは2003年からマニフェスト評価と実績評価をやっています。選挙になると、いろいろな団体が評価しますが、この前の選挙では民主党にかなり高い評価をする団体が多かったのです。言論NPOはその時も非常に低い評価をしました。それは、私たちの評価基準に基づいてきちんと評価をしているので、今回もそれがどうだったのかということを有権者に伝えないといけないということで、民主党の実績評価を公開したのです。今、採点表とその理由に関してはインターネットで全てオープンにしていますし、あと部門別に、10分野くらいですね、田中先生がやっている市民社会も含めて、近日中に全て公開することになります。実績評価をすることによって、今度のマニフェストでは政党は何を課題解決として出さないといけないのか、ということをはっきりとさせるためにやっているので、今やっているマニフェスト評価と実績評価を組み合わせて読んでいただければ、選挙のときもいろんな形で判断できるのではないかと思っています。

田中:実績評価について少しだけ補足しますと、全部で167項目ですよね?

工藤:そうですね、あと5原則という政権運営の原則がありますが、それも全部評価しました。

田中:それにこの間は、毎日新聞と実績評価を2面使って公開されましたね

工藤:そうですね、私たちが評価をやった上で、やはり日本のメディアがそういう評価に取り組むということは大事なので、共同でやりました。採点は毎日新聞との合同でも5点満点で2.2点ということなのですが、言論NPOは言論NPOとして既に評価をやっていますので、それも併せて見ていただければと思います。

田中:そうしますと、現政権の実績評価、そしてこれからの選挙に向けての12党のマニフェスト評価、そして主要な政党については、大事な政策について政治家にインタビューをしてそれを公開する、そして各政策の専門家に、今回のマニフェストを読み解くポイントをインタビューして公開されているということですね。

工藤:そういうことですね。

田中:ただ、少しだけ厳しいことを言いますと、言論NPOの発表する評価書は、確かに非常にクオリティは高いのですが、難解だという意見もあります。このあたりは、何か工夫はされていますか。


政党間の違いがわかる6つの基準

工藤:まさにその通りで、ただ今回、一番私たちが困ったのは、マニフェストそのものがかなり形骸化してしまったわけですね。つまり、例えば、できないことを書いているのが問題だから、できることだけを書くべきだ、という党首がいました。だけどそれは間違いで、やらなければいけないことを書くべきであって、できることを書くのだったら誰でもできる。それから、有権者に批判をされたら困るので、できるだけ中長朝的に書きたい、だいたいそのような形になってしまったわけです。ですから、その内容を読み解くということになると、その背後まで読み解かないとなかなか分からないのですね。

 ただ、ある側面からみると、非常に明確に、今回の政党間の違いが分かるものがあるのです。それは、政権公約そのものの書き方・書かれ方、それを6つの基準でチェックしているのです。まず基礎的に、各政党の公約を、有権者への約束として読み解くための違いを明らかにし、その上で言論NPOがやっている専門的な評価と連動して、詳しく知りたい人はそれを読んでもらう、という形の2段階でいけないかな、と思っているところです。

田中:確かに、あいまい、抽象的にしてしまう、それから非常にハードルを下げてできることだけ書く、というのは、他の評価でもよくあることなのですが、少しだけ、その6つの基準を教えていただけますか。

工藤:これはあるテレビの人に、私たちの評価基準は非常に難しくて視聴者には分かりにくい、と言われたので私たちも考えたのですが、このマニフェストというものを「国民との約束」として考えているのか、ということですね。マニフェストは12党全部出揃っていていろいろな違いがあるのですが、表紙に「国民との約束」という文言、それから「マニフェスト」と書いているのはどこの党なのか、全く書いていないのはどこか、と明確に分かれてしまうわけです。

田中:マニフェストという言葉をやめてしまった党もありますからね。


党首の顔が載っている 載っていない?

工藤: やめたのは、民主党のマニフェストがあまりにひどいので、もうマニフェストを書きたくないという政党もありましたが、しかしその党は「国民との約束」と書いているのです。その「約束」とか「マニフェスト」と書いているのが、12党のうち5党あったのですよ。

 それから、面白いことに、政党の党首の顔をマニフェストに載せているところ、載せていないところと、はっきり分かれたのですね。党首の顔を載せているということは、よく考えてみると、党のガバナンスがきちんと機能していることと言えるわけですね。出せないところは、結果として誰が党首なのか分からなかったり、党首になった人と現場の人との意見が違ったり、公示直前なのに意見がまとまっていないところなのですね。こういう形で、党のまとまりがきちんとしていない党を選んでしまうと、この前の民主党もそうなのですが、やっても結局、党内で反対したり、やめてしまう。これではマニフェストとして体をなさないだろう、と。だから、極端な話かもしれないですが、党のガバナンスの度合いを測る指標としては意外におかしくない。

 そして、メッセージがきちんと国民に伝えられているか。

 表紙に「約束」、「マニフェスト」という文字があるか、党首の顔写真があるか、それから具体的なメッセージがあるか、ということだけでも全然、違うわけですよ。

 言論NPOの評価は一つ一つの言葉の裏側も全部、判断しますが、3つの基準でペラペラ眺めるだけでも分かるのですね。

田中:具体的なメッセージは、現政権の批判ばかり書いてあるものもありますが、これをメッセージとは言わないということですね。


政党の本気度を見抜く法

工藤:完璧なメッセージは残念ながらあまりありませんでした。けれども、例えば「日本をこうします」という形ですね。自分たちの意見をきちんとするという形を選んでいるようなところは、メッセージ力が強いと判断せざるを得ないわけです。だからそういうところをまず見てほしい。全くメッセージが書いていないところもあるわけですから。

 まず、電話帳のような政権公約はもうダメだ、と。それは党内で課題解決の課題を絞り込めていない。

 今度は、その絞り込んだ課題が、今、日本が直面している課題と見合っているか。私たちは既に、有識者2000人へのアンケートを通して、日本の課題は6つあると提案しています。原発を含めたエネルギー、経済成長、社会保障、財政再建、外交・安全保障、そして国会改革や定数是正のような民主主義の有様。政党がそういうところにきちんと絞り込んでいるか、というところを見ました。

 そして最後に、正直に、今、日本が抱えている課題を説明できているか。読み込まなくても基本的に分かります。こんな大変な時でも、何でもばらまいてサービスだけを提案しているところもありますし、税金を含めた負担というものに関して、少しは触れているところと全く触れていないところもある。中身から見る本気度という点であれば、絞り込んでいるか、絞り込んでいるものが課題に向かい合っているか、これは誠実だということですね。あと正直さ、これは、マニフェストを読めばすぐ分かってしまいます。

 ただ、これだけでは当然足りないので、その後、正直度が課題解決としてどうなのか、といったことは評価の体系になるので、言論NPOのサイトをぜひ読んでいただきたいのです。そこまでいかなくとも、この6つで政党がかなり明確に分けられてしまいます。マニフェストがどうだとかいろいろな議論はあっても、しっかりとしたものを書かない限り、国民に向かい合った約束とは言えないということがはっきり示されるわけですよ。ひょっとしたら、ここからスタートしてもいいのではないか、と私は思っているのです。

田中:なるほど。やはり党の考え方がはっきり定まっていれば、それはきちんと公約なりマニフェストの形に表れてくるのではないか、逆に定まっていなければマニフェストもあやふやになってくる、ということですね。

工藤:そう、スローガンになったり、自分の言いたいことだけを言って、何も具体的ではない、となってしまう。つまり、国民にどれくらい本気で向かい合っているか、それだけでもやはり政党を判断できるな、と私は思うのですね。

田中:わかりました。非常に分かりやすいチェックポイントを教えていただきました。私もその目でもう一回見直してみたいと思います。ありがとうございました。



⇒ 「私たちは政治家に白紙委任はしない」の呼びかけへの賛同はこちらから

 

2013年1月 1日 00:00

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