「日中関係の立て直しは可能か」。言論フォーラムに出席した専門家4氏は、対立はかなり長期化するとした上で、「お互いの重要性を本質的に考え直さないと事態の解決はあり得ない」との厳しい見方で一致しました。

2025年12月26日


今回の対立は意図せざる形で起こったわけだが、起こるべくして起こった対立である

I 井上正也氏(慶應義塾大学法学部教授)

今回の高市首相の発言それ自体は何か計算されたものではないし、これまでの方針を転換するという考えでもなかった。ただ、よりもう少し時間軸を伸ばして大きな視点から見ると、2020年代に入って台湾を巡る安全保障環境が緊迫化していく中で、日本が徐々に台湾に対する安全保障上の関心を顕在化させてきていたということは事実だ。今回の対立自体は確かに意図せざる形で起こったわけだが、起こるべくして起こった対立だった。

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日中関係がなぜ重要なのか、政治指導者間でコンセンサスを持てる状況になれば、関係は安定化していく。

I 加茂具樹(慶應義塾大学総合政策学部教授)

二国間関係がなぜ重要なのかという認識について、お互いの政治指導者間でコンセンサスを持てる状況になれば、関係は安定化していくだろう。

中国に対応していくにあたっては、日本は一体これからどういう国家でありたいのか、ということをもっと明確に中国に訴える必要がある。その際、日本外交はどうあるべきか、ということについての国内のコンセンサス作りも同時に突きつけられてくる。そういうタイミングに来ているのではないか。

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本当に解決をしようとするのであれば、日中間に知恵はいくらでもある

I 朱建栄(東洋学園大学客員教授)
関係改善を目指す上でヒントになるのは1985年、当時の中曽根康弘首相の靖国神社公式参拝をめぐる対立とその収束の事例だ。中国で猛烈な反日デモが起こったが、後藤田正晴官房長官が中国側と裏で交渉して日本国を代表する三役は在任中に靖国参拝をしないようにした。その他の政治家が参拝した場合には、中国は批判はするが外交問題にはしないという暗黙の了解が交わされた。本当に解決をしようとするならば、日中間にはこうした知恵はいくらでもある。
しかし、その際重要になるのは信頼関係だ。中曽根首相と胡耀邦総書記の間にはそれがあった。双方の指導部から信頼されているパイプ役もいた。だから今回も、首脳同士の信頼の回復が必要であり、そのための意思疎通が必要だ。外務省の局長クラスで話をするだけでは無理なのではないか。

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日中間で両国の重要性が揺らいでおり、異常な状況を正常化する努力が必要な局面
I 工藤泰志(言論NPO代表)
今回の問題の根底には、世界が大きく変化し、不安定化する中で、日中両国民が「日中関係はなぜ重要なのか」ということを分からなくなってきていることにある。これは私たちの世論調査結果にも表れている。
非常に悪いタイミングで対立が起きてしまったが、逆に言えば今、本質的に日本外交のあり方を本気で考える局面に来ているということではないか。
戦争を起こさないための最低限の危機管理も必要になる。
民間の人々も含めて、今の異常な状況を正常化するための取り組みをまず始めるべきだ。