主催者挨拶 / 工藤泰志(言論NPO代表、「東京会議」実行委員長)

工藤泰志
言論NPO代表、「東京会議」実行委員長


  皆さん、こんにちは。言論NPO代表の工藤泰志です。今日はお忙しい中、こんなに多くの方々に集まっていただき、本当にありがとうございます。まず、主催者を代表して皆さんに御礼を申し上げたいと思います。


 「東京会議」は、2017年に私たち言論NPOが、世界10カ国の世界を代表するシンクタンクの皆さんと一緒に立ち上げた世界会議です。


 当時から、世界では自由や法の支配、そして、民主主義自体が多くの試練に直面していました。こうした規範を守るだけではなく、世界が力を合わせて世界の課題に取り組むために、我々、民主主義国のシンクタンクも努力しようと考えました。そして、何よりもこの東京、日本で議論を行い、強いメッセージを世界に届けたいと思ったわけです。


 私たちは、こうした歴史的な局面で、日本はもっと大きな世界の役割を果たすべきだと考えています。今年の「東京会議」に参加するのは、世界の最も重要なシンクタンクの代表だけではありません。10の国際機関の関係者、世界の要人を含めて38名の方に集まっていただきました。皆さん、それぞれの現場で世界の困難に取り組んでいる方ばかりです。なぜ、こんなに多くの方が、「東京会議」の議論に集まってくれたのか。それは間違いなく、国際社会が今、岐路に立っているからだと私は考えています。

 ロシアの侵略で始まったウクライナ戦争は2年を経過しても収まらず、ガザへのイスラエルの攻撃では3万人の住民が虐殺されています。



 長期化する戦争の影響は世界経済のリスクと不確実性を限りなく高め、さらに気候変動危機の深刻化でかなりの数の人々が戦火や災害から故郷を離れ、人道援助を必要としています。


 私たちが問題としているのは、こうした局面にもかかわらず、国際協力は後退し、世界は力を合わせるどころか、むしろ対立と分断に向かっていることなのです。


 私たちが今日の会議のテーマに、「多極化、分断化する世界で国際協調をどう回復するのか」を据えたのは、この世界の複合的な危機の局面で、どのように世界が力を合わせるべきなのか、そのためにどのような努力が問われているのか、その答えを出すことに挑むためです。私たちは、まさにその解決に向けた新しい一歩を踏み出すために、この会場に集まったのです。


 私たちが今回の会議で、特に大事だと考えているのは民主主義国の行動です。


 民主主義国が、これまで以上に世界の課題や平和秩序の修復に率先して取り組むことは、世界の巨大なグローバルリスクへの対応やこれからの世界のあり方にとってきわめて重要なことです。


 ところが、今年予定される民主主義国の選挙結果如何によっては、これからの世界の協力への障害が拡大しかねないという問題があります。


 また、ウクライナ戦争で欧米や日本は結束しましたが、それが世界の結束にはならず、ガザへのイスラエルの攻撃では、欧米の対応は「ダブルスタンダード(二重基準)」だという苛立ちが世界で広がっています。


 私たちが問題としているのは、先進民主主義国と「それ以外の世界」との間で溝を、これ以上広げるわけにはいかないということです。私は、分断が進む世界の協力の修復は民主主義国の責任で行うべきであり、日本こそがその先頭に立つべきだと考えているのです。


 すでに、私たちは昨日から非公開の場で議論を始めており、考えがまとまれば世界に対するメッセージをこの東京から伝えることになります。このメッセージは、今年のG7議長国イタリアの駐日大使にこの会議の場でお渡しするとともに、岸田首相には国会の関係で今日の「夕食会」で受け取っていただくことを目指しています。



 では、私たちは今回の議論をどのように設計しようとしているのか。それをご理解いただくために、この2月に行った有識者アンケートのいくつかの結果をここで紹介させていただきます。言論NPOの活動や議論に参加したことがある2000人を対象に行ったもので、441人の方に回答していただきました。


 まず、地政学的な対立や欧米諸国とグローバルサウスとの溝が拡大しようとしている中で、世界はこのまま分断や多極化に進むのか、ということです。この問いには79.8%と8割が「そう思う」と回答しています。


 ところが、そうした対立構図の中で世界の協力、つまり国際協調が、「完全に崩壊していく」との見方は4.5%に過ぎません。「全体的に国際協調は維持されて行く」は16.1%にとどまっていますが、最も多いのは「全面的な協調は困難でも一部の課題では国際協調自体は可能」の76.6%です。つまり、国際協力の努力はまだ可能、またはその努力は必要だと9割の人が答えているのです。


 これは、平和の課題でも同じです。今の世界では、平和構築の努力をしていくこと自体が難しい局面なのか、という設問では、「難しい」という声も28.8%と3割近くありますが、「そうは思わない」という声は63.5%と6割を超えているのです。


 さらに、世界経済の今後に関しても、「ブロック化が進む」との懸念は19.3%と2割ありますが、「保護貿易は進むが、自由貿易は完全には崩壊しない」が71%と7割を超えています。


 ウクライナ戦争の行方に関しては、「膠着状態が続き、勝利者はいない」が53.5%で最も多く、半数を超えています。「数年以内にロシアの勝利で終わる」は22.2%ですが、「数年以内にウクライナの勝利で終わる」とみる人は5.2%しかいません。こうした状況認識から、「今が停戦に向けた努力を始める局面」だと思う人は65.1%と6割を超えており、「そうは思わない」の24.5%を大きく上回っています。


 また、イスラエルのガザ攻撃は「国際法違反」と考える日本の有識者は74.6%と8割近くおり、「そうは思わない」は10.7%です。戦後のガザ地区の統治は誰が中心となって行うべきかでは「パレスチナ自治政府」が60.3%、「国連」が48.1%で、この二つが圧倒しています。


 これらの二つの戦争に対しては、グローバルサウスの国々から、ロシアのウクライナ侵略を国際法違反としながらもガザ攻撃を続けるイスラエルを擁護する米欧の態度を「ダブルスタンダード」だとする批判があります。この批判に「賛同する」日本の有識者は71.9%と7割を超えています。また、「賛同できない」は18.1%です。


 さらに、こうしたグローバルサウス諸国で苛立ちの声が強まり、世界に亀裂が生じている状況の中、欧米などの先進民主主義国は何をなすべきか、という設問では、「世界の平和秩序の修復に向けた努力」が60.3%で最も多く、次に「ダブルスタンダードのような態度を取らず、法の支配を貫徹すること」が47.4%と半数近くで続いています。これに「世界の課題解決に向けて強いリーダーシップを発揮すること」の39.9%を加えた3つが、日本の有識者が求めていることなのです。


 最後になりましたが、この「東京会議」はパンフレットに記載された11の企業のご支援によって成り立っております。時間の関係上、個別名は差し控えさせていただきますが、この場をお借りして御礼申し上げたいと思います。


 それでは、お待たせいたしました。これより「東京会議2024」を始めさせていただきます。


 ご清聴ありがとうございました。