両国間の信頼関係が大きく失われている中では今回の日中対立は長期化する
日中関係の重要性を再確認するとともに、対中外交のあり方を再考すべき局面に来ている
~言論フォーラム「日中関係の立て直しは可能か」~
参加者:井上正也(慶應義塾大学法学部教授)
加茂具樹(慶應義塾大学総合政策学部教授)
朱建栄(東洋学園大学客員教授)
工藤泰志(言論NPO代表)
司会者:辰巳知二(共同通信社元中国総局長)
台湾有事が存立危機事態になり得るとした高市首相の国会答弁を機に日中両国の対立が深まる中で、言論NPOは12月17日に「日中関係の立て直しは可能か」をテーマに日本と中国の4人の専門家が議論を行いました。
I 日中両国民が日中関係の重要性を理解できなくなった中で、起こるべくして起こった今回の対立
まず最初に、今回の日中対立をどう見ているか問われた加茂氏は、「対立の構造には四つの要素がある」と指摘。一つ目は高市首相の存立危機事態に関する答弁に対して、日本側の意図と中国側の受け止めの間に一定の距離があるということ。二つ目は、中国は、高市首相の就任時に祝電を送らなかったけれども首脳会談は実現させたというように、高市政権に対する認識に揺れがあること。三つ目は、米中関係、それから日中関係自体が大きく流動するタイミングにあるということ。そして四つ目には、既存の国際秩序や世界のパワーバランスも大きく流動しているタイミングにあると分析。「この四つの要素が同時に連動している中で、問題が発生して相互に影響し合いながら議論が複雑化している」と語りました。
井上氏は、「今回の高市首相の発言それ自体は何か計算されたものではないし、これまでの方針を転換するという考えでもなかったのだろう」としつつ、「ただ、よりもう少し時間軸を伸ばして大きな視点から見ると、2020年代に入って台湾を巡る安全保障環境が緊迫化していく中で、日本が徐々に安全保障上の関心を明確に顕在化させてきていたということは事実ではないか」と指摘。2021年の日米共同首脳会談の共同声明では、「台湾海峡の平和と安定」という言葉が登場しましたが、「これは1969年の佐藤ニクソン会談以来52年ぶりだ。従来からの方針転換をより日本政府としてははっきり表に出すようになってきていた。その後、安倍元首相が『台湾有事は日本有事』と発言し、さらに今回の高市首相の発言が来て中国側が反発した。そう考えると今回の対立自体は確かに意図せざる形で起こったわけだが、起こるべくして起こった対立だったのではないか」との見方を示しました。
朱建栄氏は、「日中関係がここまで大きく揺れたことの原因は...