言論スタジオ

人口減少が急速に進む中、少子化対策・雇用政策は進んでいるのか

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2016年6月18日(金)
出演者:
加藤久和(明治大学政治経済学部教授)
池本美香(日本総研主任研究員)
久我尚子(ニッセイ基礎研究所准主任研究員
白河桃子(相模女子大学客員教授、ジャーナリスト)

司会者:
工藤泰志(言論NPO代表)



第1話:少子高齢化・人口減少「問題」の原因、影響、対策は何か

工藤泰志 工藤:言論NPOの工藤泰志です。さて言論NPOはこの7月に行われる参院選に向けて議論を開始しています。今回の参院選で私たちが問いたいのは、日本の将来についてです。日本の将来を考えた場合、私たちは様々な課題に直面しています。にもかかわらず、そうした議論が政治も含め、いろいろな場で十分になされていない。そのため、多くの国民は日本の将来に不安を感じていると思います。本来であれば日本の政治は、国民に対して将来の課題と解決プランを説明する時期であるにもかかわらず、そうなっていない。今回の選挙が、こうした状況を変えていくための選挙になればと思い、私たちは議論を始めています。

 今日はその第2回目になりまして、まさに急激に進む人口減少に伴う日本の将来をどう提示していくのか、という問題について考えてみたいと思います。今日のゲストは、明治大学政治経済学部教授の加藤久和さん、日本総研主任研究員の池本美香さん、ニッセイ基礎研究所准主任研究員の久我尚子さん、政府の一億総活躍国民会議の委員も務められている相模女子大学客員教授でジャーナリストの白河桃子さんの4人にお越しいただきました。皆さん、よろしくお願いいたします。

国内外で日本の少子高齢化・人口減少問題を指摘する声が多数となった

 ということで今日は議論を進めていきます。まず、私たちは3月にアメリカ、カナダ、イギリスのジャーナリストを招聘して、東京で議論を行いました。その際に、アメリカのジャーナリストを対象にアンケートを実施し、「日本について関心のあるテーマは何か」と尋ねました。私は、アメリカのジャーナリストは日本や中国との関係、地政学的に大きな対立問題、そういう問題に非常に関心があるのではないかと思っていたのですが、驚いたことに、6割の方が関心を持ったのが日本の人口減少についてでした。つまり世界が日本の人口減少とそれに伴う高齢社会のマネジメントをできるのか、ということに非常に関心をし始めている。この問題を今回、日本がきちんと考えなければならない局面に来ているのではないかと、私たちは考えています。

 そうした認識の下、5月に、私たちの議論にご協力いただいている方々を対象に参議院選挙に向けたアンケートを実施し、「日本の将来についてどのように考えているのか」を問いかけましました。そうすると、日本の将来に不安を抱いているとする有識者が58.7%と6割近くに上りました。そこで、どのような点で、日本の将来に対して悲観的に考えているのか、と尋ねたところ64.7%の人たちが「日本で進む少子高齢化に対して有効な政策がまだ提示されていない。そして議論が始まっていない」という回答でした。それに続くのが、「メディア報道をはじめ日本の言論界がそうした課題に十分に取り組んでいない」という回答が54.9%、「日本の政治そのものがそうした課題に取り組むよりも、国民の不安に迎合するようなポピュリズムの政治を行っているのではないか」との回答が53.5%と続きました。これは非常に大きな問いかけであって、まさに日本の将来に向けてこの人口減少という問題を、私たちが考えなければならない局面にきているのだということが明らかになしました。

 そこで、まずこの問題から皆さんにお話を伺いたいと思います。日本の将来を考えた場合、人口減少問題、そしてそれに伴う様々な問題に、多くの人たちが不安を強めている。皆さんはこうした状況をどう思っているのでしょうか。

政治は選挙で「2、30年後の日本をどう考えるか」という視点で議論すべき

 加藤:2月に2015年国勢調査の結果が出たのですが、2010年つまり5年前と比べるとだいたい95万人、和歌山県と同じくらいの人口が減少しています。景気が上がったとか、為替がどうだ、株価がどうだ、という短期的な数値は、日常我々がよく見る数字ですが、人口の増減については、なかなかそれが分かりづらいのが現状です。気が付いたら5年間で95万人が減少している。これから、45年から50年後には日本の人口は、現在の3分の1ぐらい減ってしまう。これは本当に大きな危機なのです。

 さらに、人口が減るだけではなく、高齢化が進んでいきます。今、75歳以上の人口割合は8人に1人なのですが、2060年になると、4人に1人が75歳以上となります。これが何を意味するかというと、社会保障の問題、つまり、医療や介護、年金の制度を支える若者が少なくなることから、そうした状況を財政的にどう支えるのかという問題に発展してくるのです。また、人口減少という問題は、こうした社会保障の問題に関わらず、日本の経済成長や雇用も含めて、全てに大きく影響してきます。しかし、なかなか人口減少問題を包括的には取り上げてもらえない。一部で人口が減少したことは取り上げられるし、出生率がどうかということも取り上げられるが、それが全体として何を意味するのかというところまで幅広く議論することができないという点が非常に心配です。

 出生率や少子化の問題もそうですが、人口減少というのは相当長期の問題で、短期的な議論の中になかなか組み入れられない。つまり、衆議院議員の任期は4年、参議院の任期は6年、政権は4年やれば長い方ですが、人口問題は、20年、30年という先の話までできるような土壌がないと難しい。どうしても選挙になると目の前の政策、消費税の引き上げをどうするか、というだけの話になってしまいますが、もし消費税を引き上げないと日本はどうなるのか、という視点がない。つまり、消費税の引き上げという問題が、日本全体の中でどういう位置づけなのかという幅広い議論を通して、20年後、30年後の日本をどう考えていくのかという視点で、選挙期間も議論をしてもらわないと、なかなか国民の不安というものは払拭できない。そうした議論を先送りしないで、いかに政党がこうした議論を行ってくれるのか、ということが今回の参議院選挙の大事なところではないかと思います。

工藤:今、加藤さんが重要な問題を指摘されました。日本の人口が大きく減少している。しかも減少の中身が昔とは違って、高齢化がかなり強まる中で、減少していくという構造です。そして選挙で政治は、長期的な問題を考えるよりも、短期的な問題を議論しているために、多くの人たちがその先行きに不安を感じるしかなくなっている。この問題をきちんと考えなくてはいけないという指摘でした。

少子化対策といっても「子どもを増やせばいい」というだけの問題ではない

 池本:今、少子化という事で子どもの数が減っているという「数」の問題にすごく焦点が当たっているのですが、私は、「数」だけではなく「質」の面での低下を今、一番心配しています。例えば子どもの貧困率が非常に高まっていて、子どもに夕食を出す「こども食堂」が日本のあちこちでできてきています。そうした学力を伸ばさなければいけない、という以前の段階で、そもそもきちんとご飯を食べられるかどうかわからない、というレベルで困っている子どもが増えていることについて、非常に心配しています。

 また、大学についても、どんどん優秀な子どもが育ってほしいという期待が強まっている一方で、奨学金返済のために授業の時間を削ってバイトをしなければいけないという問題も発生していて、子ども自身が学力を伸ばす環境にもない状況も存在しています。

 それから、保育所の問題も、今は保育所に入れるか入れないかという点で大きな議論になっていますが、入れたから安心かというわけではありません。現在でも保育施設で毎年10人くらいの子どもが亡くなっているという問題もあります。海外では、保育所の時代から子どもの能力を最大限に引き出すということをやっているわけですが、日本では単なる子どもを預かる場所になっている点心配な点です。後は、学校現場も子ども達が安心して能力を伸ばせる環境になっていないという点なども、議論すべきところだと思います。

工藤:今の話はとても重要です。つまり人口減少のプロセスの中に色んな問題が色んな形で進行していますが、その中で、現在進行形で子ども達が貧困化していて、将来さらに貧困の人たちが増えてくるという問題は、私たちも非常に気になっている問題です。

 言論NPOにはインターンの学生が来ています。今回の参議院選挙から、18歳選挙権が導入されることもあり、日本の将来に対して議論していたところ、将来の社会保障の財源のために消費税の引き上げは必要ではないか、と言ったところ、彼らはバイトをして将来のために貯金をしているのだと言います。だから、貯金をしている今、消費税を上げられると困るという議論になり、政策的な考え方が非常に乏しくなってきていることを感じています。

 様々な場面で、1つの問題のみならず、多くの問題が進行しているのだということを、池本さんは発言されました。

既婚者対策だけでなく、未婚者対策、特に雇用の安定化などに注力すべき

久我:私は人口減少の問題では、少子化のところに課題があるのだと思っています。私は、少子化対策において、未婚者の対策と既婚者の対策の2種類があると思います。しかし、少子化に関する政府の対策などを見てみますと、少子化対策として「結婚をすること」、「第一子を産むこと」、「第二子を産むこと」、「第三子を産むこと」という4つの壁があると言われていますが、既婚者対策が多いのが実状です。また、少子化社会対策白書や政府の成長戦略、今回の一億総活躍会議の報告書などを見ても既婚者、既に結婚をして子どもを産む、または子どもをさらにもう1人産むというというような層に対しての政策は進んでいると思います。例えば待機児童問題の解消は喫緊の課題として当初から取り上げられていましたし、女性の活躍促進で育休環境の整備なども進んでいます。ただ未婚の若者、その未婚の背景には若者の雇用の不安定さがあるのですが、若者の雇用の安定化というところにかけては、項目としては並んではいるものの、女性の活躍促進や待機児童の解消などに比べて、数値目標などが掲げてられていなかったり、実効性が少し乏しかったりという印象があるのが実状です。

 少子化対策というところで、若年層の雇用の安定化、さらに実効性に高まるように何らかの数値目標や、企業などへの努力義務などの政策も講じていかなければならないのではないかと思います。

工藤:今、働き方の指摘がなされました。現在の若者の状況を見てみると、やはり将来に対する大きな不安を抱えており、雇用の問題なども併せて考える必要があります。

ここ数年の間に、「子供を産める空気」の土台を作れるかが鍵

 白河:私は、少子化という問題を女性の目線から長年見てきました。そうすると国のために何人の人口が必要だからこうなって欲しいという問題ではなく、私の教え子が、あるいは私の友人の子どもが、将来、結婚して子どもが欲しいと思った場合、どのようなハードつが横たわっているか、それをいかに取り除いていくか、という視点で政策を取らざるをえないと思っています。フランスなどでは、産んでも大丈夫だという「産める空気」の土台作りをずっと主張してきています。

 これまで、少子化問題は女性や子どもの問題としてずっと議論されてきましたが、加藤勝信大臣が少子化担当大臣になり、国の大きなところで議論されるようになり、やっと女性と子どもだけの問題ではなく、男性の働き方の問題であるといった視点から議論が行われるなど、今回非常に進んだと思います。働き方の問題は何とかしていかなければならないと感じています。

 今、日本の未婚者の平均年収は、女性が200万円台、男性が300万円台なのですが、この状況で子育てするとなると、共働きはもちろんですが、「共育て」も必要になります。しかし、現状では、そうした「共育て」の状況にはなっていません。女性が働きづらいのも、男性が一緒に子育てできないのも、「働き方」の問題だと思いますし、そうした問題についてスピードを上げて解決していくしかない。特に少子化の問題に関してスピード感が一番大事かというと、現在、人口ボリュームゾーンである団塊ジュニア世代の一番下の方が41歳です。私もずっと不妊の問題などをやってきましたが、43、44、45歳ぐらいになると妊娠するのは極めて難しくなります。ですから、今、子どもを望んでいる人たちが、本当に産んでも大丈夫」という実感が得られるようになって、その方たちが駆け込み出産をしてくださる気になるなら、実はあと2年しか時間がないということです。その2年のうちに何かスピード感のある「産める空気」の土台ができないと、100年後に人口は4割減ってしまう。今、少し頑張ってドラスティックな転換をして、「あ、産んでも大丈夫!」という空気ができれば、100年後の人口は現在の7割ぐらいに止まるのです。これは選択する未来委員会の報告の中にもありますが、意外に時間はないのだということです。

工藤:皆さんから、多面的な視点で現在の状況と不安の正体を語っていただきました。こうした課題を、これから、もっと全体像から解き明かしていきたいと思っています。人口減少という問題は、景気分析と違い、ある程度シミュレーションで見えているので、はっきり言って出生率などが大きく改善するなり、何か突発的な問題が起きない限り、間違いなく人口は減少していきます。そうした中で、高齢化が同時に進んでいきます。今、お話には出ませんでしたが、もう1つ気になる問題は高齢化です。団塊世代の人たちがこれからどんどん後期高齢者になり、介護が必要となってくる状況下で、対応するお金も施設も人もいない。その結果、介護離職者の問題につながります。

 人口減少と高齢化という問題の中で出てくる問題として、介護の問題と、子育ての問題という、大きく言えば2つに分けられます。今皆さんが仰っている話は、後者のための議論だったのですが、いま直近で出てきている問題は高齢化に伴う問題が多く存在しています。この高齢化という問題は対応可能なのでしょうか。

日本の社会は、急速に進む高齢化に伴う介護問題に対応できるのか

加藤:基本的に僕は対応可能だと思います。1つは、高齢化の問題は多面的な議論が必要だということです。今までの議論は、高齢化に対して後追いの政策が多かったのですが、もう少し積極的に戦っていくことが必要だと考えています。例えば介護のお話も出ましたが、2025年問題、あるいは2035年問題、つまり、団塊の世代が85歳を超えるときに、相当介護の需要が増えてきます。私も参加した研究会の中で経済産業省の試算で出された数字ですが、介護の人手が2035年には67万人不足するということが示されました。そのままにしておくと、まさに介護離職の話に繋がってしまうのですが、それに対してAIやロボットを使うことによって、また様々な制度を改善することによって何とかなるだろうと考えています。介護という問題をただ単に後ろ向きの問題と捉えるのではなく、成長戦略に絡めることで積極的に解決する方向性もあるのではないかと思います。

 もう1つは、医療や年金についても、もう少し、負担と給付のバランスを考えないと、高齢化だからといって全部だめになるのではなく、医療や年金に関する負担と給付のバランスを考えたら、もう少し維持可能な社会保障制度を作っていけるのではないかと思います。

工藤:今の話は、非常に関心があるテーマなので、あとでまた伺いたいと思います。皆さんは高齢化など様々な問題が家庭生活に反映していると思いますが、これは管理可能、対応可能なのでしょうか。ご専門ではないかと思いますが、どう見られていますか。

池本:保育士と介護士、共通して職業の処遇が低いのが現状ですが、彼らがやり甲斐のある仕事と思えるような仕事の設計を考える、賃金を上げていくなど取り組んでいかないといけない。後はロボットの話も関心があります。

工藤:私は対応できないのではないかと思っています。お年寄りの痴呆を面倒見ている家族が余りにも悲惨すぎて、仕組みもできていないし、今後、70万人、80万人と増えていく中で対応できないような気がしています。こうした事態は、数年後に迫っています。このあたりは女性の研究者の方々の関心はいかがでしょうか。

久我:実際の人手よりも私は財源が気になっています。今、消費増税が取り上げられていますが、歳入を増やすという議論が非常に多く存在しています。一方で、歳出の部分で社会保障費への切り込みがいつも甘いという印象があります。今後、少子高齢化でどんどん社会保障費、医療費、介護費などが増えていく中で、まず財政がパンクしてしまう。もっと受益者の方でも負担を増やすために、歳出をカットしていくような財政面が非常に気になっています。

工藤:今のお話は、ある程度受益者が負担、つまり、増税などで増やさないといけない。ただし、歳出の中身を仕組み的に変えなければならないと考えられているのですね。白河さん、高齢化という問題はかなり大きいと思いますが、いかがでしょうか。

白河:先日発表された少子化社会対策白書にも、結婚する際の不安の中に「介護」というのがあって、結婚する前に介護のことを心配しています。特に女性のほうは配偶者の親の介護を背負うのではないか、ということをかなり心配していることがわかります。既に、晩婚晩産の時代なので、「子育て」と「介護」の両方が一度に来てしまう人が非常に多いのです。今現在でも、日本の女性は世界で最も寝ていないくらい、十分に活躍しています。これ以上の負担は無理だと思いますので、介護の社会化と、介護離職をさせないことはものすごく重要なことだと思います。

 また、保育士も介護士も際限ない長時間労働になっています。お給料ももちろんですが、際限のない長時間労働で疲弊した現場というものがある限り解決しないので、労働時間の厳しい上限を導入いくことが様々なことを負のサイクルから正のサイクルに回していく、レバレッジ・ポイントであり、長時間労働の是正をまずやるべきだと思います。

工藤:続けて伺いたいのですが、多くの人が介護の不安を抱えていますが、それほど高齢化の進展が早い現状で、この問題は解決可能だと思っていますか、それとも、加藤さんが話されたように今何かすれば間に合うと考えていますか。

白河:既に、自分の問題になっている方もいると思いますが、女性の空気としては、「誰かが解決してくれる」とは思っておらず、いずれ、自分が背負うのだと思っている人が非常に多いと思います。

工藤:政府は三世代同居を提唱しましたが、家族の中でどのように考えられているのでしょうか。

白河:子育て中の女性に関しては、思考停止しないと怖くてもう何もできない、それくらい実は切迫した問題になっています。

工藤:加藤さん、やはり将来が見えないということでしょうか。育児、労働問題など目に見える問題を何とかするということも大事なことですが、今後、間違いなく表に出てくる問題に目をつむるしかないという点については、どう考えられていますか。

現時点で「見えない問題」を「見える化」することが政治家や国の仕事

加藤:確かに見えないということが一番大きな問題だと思います。また、ミクロとマクロの問題を分けて考えなければならないのですが、介護保険制度は、家族の介護から介護の社会化という流れになってきていて、介護事業者が出てくることによって、相当助かっている面もあるので、その点を議論していく必要があると思います。ただ、確かに、工藤代表が指摘するように、「見えない」というところが一番大きいのではないかと思います。「将来介護はこれだけ大変になる」、「医療はこれだけ大変になる」と皆、思っているけれども、それが具体的に見えてないので、不安になってしまう。だから、見えないところをいかに「見える化」するかが、政治家にとっても、国の仕事としても大事だと思います。

工藤:いまの加藤さんの話が第一セッションのポイントを上手くつかれたと思います。

 東京圏では高齢化が進展しており、介護の問題はすでに起き始めていると思います。高齢者が誰も頼ることができず、独りぼっちで孤独死する。そして、自分達の将来も必ずそうなるのではないかと多くの人が感じている。そうした不安の中で子育てをしているという状況にある。こうした状況下では、一体何が必要なのでしょうか。先ほど、加藤さんから、政治家や国が不安を「見える化」するべきという話がでました。もっと将来が見通せるような、自分が将来のことを考える仕組みが必要だと思うのですか、どのようにお考えでしょうか。

池本:考えないということが一番いけないことだと思います。介護だけではありませんが、日本では、そういう分野での研究が充実しておらず、研究予算も削られています。海外では、具体的に良い例を広めていくとか、研究者も様々なことをやっていくことができるのですが、そこも日本は遅れています。しかし、この点は勉強する、研究する、情報を蓄積いく中で解決策を見出していくしかないと思います。

工藤:先日、NHKスペシャルを見ていたら、公務員の人でも面積要件などのため、夫婦が同じ施設に入所できないという話がありました。また、お年寄りが家族から「邪魔だから、何とか出て行って欲しい」と扱われている話もありました。高齢化の弊害が社会現象として、すでに現実化しているのではないかと感じました。私も自分の将来に不安を感じますが、久我さんはいかがでしょう。

久我:先程、白河さんもおっしゃっていましたが、私の世代は団塊ジュニアの下の世代で、ちょうど、子育て真っ盛りなのですが、介護とか高齢化の問題よりも、目の前の仕事と育児の両立に四苦八苦しています。また、同世代では雇用が不安定な人もかなり多いので、自分達の目の前の生活が大変すぎて、先のことまで思いが及ばないというのが現実だと思います。

工藤:それは非常に分かります。白河さん、こうした状況は良くないですよね。

白河:良くない状況だと思います。女性は、夫婦の中でも自分が後に残ることを考えてしまいます。一方、男性は、自身の夫などを見ていても、ほとんどノープランで、自分が先に新で、私が看取ってくれると思っているのかな、と感じることはあります。例えば、男性の人たちと話すと、「前のめりに死にたい」とか「ぽくっと死にたい」ということをよく耳にします。だから、皆、具体的なことは考えていない。先日、詩人で社会学者の水無田気流さんが、子育て世代がしっかり夫に家事や育児をやらせないと、将来的に夫婦2人になって奥さんが倒れた場合、男性は結局みっともないからと言って人には頼れない、でも家事も何もできない、家のことを何も回せないということになってしまう。その結果、男性は本当に恐ろしいほどの閉塞感を感じ、奥さんを殺してしまうという話まであるぐらいです。ですから、水無田気流さんは「いま、夫に家事を仕付けないと夫に殺されますよ」ってすごく強く言っていたことに、非常に納得しました。

工藤:加藤さん、かなり本質的な問いかけかもしれません。

加藤:そうですね。統計的に見ても、男性のほうが先に死ぬということで、私自身も先に亡くなることを前提に物事を考えてしまっています。今日帰ったら、まずは家事をやろうと話を聞きながら考えていたところです。

工藤:私自身、非常に面白いなと思いながら、皆さんの話を伺っていました。目に見える問題を生活感覚の中で問題化するアプローチも大事だと感じましたし、そうした視点で有効な手段が描かれていない。さらに、そうした有効な手段を講じるための背景には、仕組みやシステムを設計するという段階がありますが、その仕組みやシステムの設計は将来像と結びついた問題になるために、結果として、政策論の展開も将来像に制約されてしまう。そうした中で、男性は、システムの面から考える傾向があり、システム設計がかなり厳しい段階に来ていると考え、どういう政策論を組み立てれば良いかと悩んでいました。しかし、皆さんのように生活感覚で目に見える問題を問題化していくアプローチの話を聞いていると、数年前と比べ、かなり手遅れになっていると感じました。

加藤:毎年、手遅れになっているなと感じています。今が最後のチャンスだと、今が最後のチャンスだと思いながら、ずっと先送りしている状況だと思います。同時に、先がどうなっているのか、見てもらわないと話が進まないということもあるのだと思います。

 例えば、人口が減ってきていて、社会がどうなってしまうのか。2年前に日本創生会議が、地方消滅という話をしたのですが、基本的には将来を見てもらうことで、議論が沸き上がってきて、「じゃあどうするのだ」という形での議論が行われました。そういうことが大事だと思います。そうしたことが功を奏したのか、「新・三本の矢」、「一億総活躍」の中でも、希望出生率1.8という話を政府が出したということは、非常に大きなことです。こうした対策を取らなければ、本当に大変なことになってしまう、という見せ方をしたのは安倍政権がある意味初めてだったのだと思います。

 そうした意味では、着眼点は非常に評価しているのですが、一番重要な財源をどうするのか、という点はまだ語られていませんから、これから考える必要があります。ただ、先を見せることで、議論の遡上に載せていくということは凄く大事だと思います。

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