言論スタジオ

人口減少が急速に進む中、少子化対策・雇用政策は進んでいるのか

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2016年6月18日(金)
出演者:
加藤久和(明治大学政治経済学部教授)
池本美香(日本総研主任研究員)
久我尚子(ニッセイ基礎研究所准主任研究員
白河桃子(相模女子大学客員教授、ジャーナリスト)

司会者:
工藤泰志(言論NPO代表)



第三話:人口減少という大転換に私達は何を考え、政治はどう答えるべきか


工藤泰志 工藤:選挙が目前に迫っています。先程来、議論されたように人口減少と高齢化という大きな問題が、日本の将来像に繋がる話でありながら、そのプロセスにおいては、多くの問題を同時進行で動かしてしまっている。これに対して、政治の取り組みをどう理解すればいいのか、ということで今まで議論してきました。しかし、民主主義の社会では有権者がきちっと発言し、投票行動を取ることが重要ですから、有権者からみれば、人口減少という大きな転換に何を考えればいいのか、そして政治は、選挙中にどう答えればいいのか、皆さんにお聞きしていきたいと思います。

政党は、将来の日本像を提示し、だれが負担をするのかを逃げないこと

 加藤:いろいろ言いたいことはたくさんありますが、絶対に言いたいことは、負担をどうするかという問題から逃げてはいけないということです。これは、消費税の問題だけではなくて、工藤代表が言われたように、高齢化が進む中で、かなり大きなお金が社会保障に使われています。その負担を誰が、しかも、今の世代なのか、将来の世代なのかも含めて、どういう人達が負担するのかということを逃げないでこの選挙を戦って欲しいと思います。

 消費税にしても、短期的な経済へのマイナスの影響はあるかもしれませんが、消費税の引き上げをやらないことによって、長期的にどういうことが起きるのかというところまできちんと国民に選択肢を示すこと。さらに、与党と野党といった政党間の話だけではなくて、政治家個人が、課題について自分達は何を考えているのか、そして、その負担はどうあるべきなのか、というところまで踏み込んでもらわないと我々は選択のしようがありません。いつまで同じように先送りしていくのか。というところは今回の選挙で見ていくべきところだと思います。

 もう1つ申し上げたいのは、将来像をどのように示してくれるのかという問題です。最初の議論にありましたが、日本がこれからこうなっていくのだという将来像を示した上で、「私の政党はこういうことをやっていきます」、「我々はこういう方向で考えていきます」というような形のものを見せて、それに対する方向性をしっかり示していく。4年間だけではなく、50年先の日本を見据えた選択肢を提供してくれる選挙になればと思います。

国民の負担が有効に政策に反映される全体像を描ける政党が選ばれるように

 池本:私は出生率の低下の背景には、先程も述べましたが、海外と比べてリスクが多すぎるということがあると思っています。フランスの「産める雰囲気」というのは、雇用が続かないとか、保育園に入れないというリスクがカバーされているので、産める雰囲気があるのですが、日本ではあまりにリスクが多すぎる。だから、子供を産んだら、こういうふうな働き方で、保育園には入れて、保育の質も確保されていて、という生活が待っていると思い描けるようななことが必要だと思います。そういった生活を実現するためには、どういう負担が必要で、どのような政策を打っていく、という全体像を示して欲しいと思います。

 加えて、無駄という部分でいえば、例えば、海外で保育園と幼稚園を別々の省庁が所管している国というのはほとんどありません。そもそも、同じようなことをやっているのに、2つの省庁があり、2つの法律をつくることは、ばかばかしいと海外は考えています。そうした無駄をきちんと排除して、国民が投じたお金が有効に政策に反映されているということが描ける政党に投票するという形になって欲しいと思います。

久我:私は若年層のことが気になってしまうのですが、人口も少ない上にさらに選挙離れも進んでいる。その背景としては自分達が生まれてから、ずっと日本経済は低迷していて、高齢化も進行し、自分達が声を上げてもどうにもならない、どうせまた高齢者が優遇されるのだろうという空気が醸成されてしまっている。若者たちが明るい気持ちで将来を思い描けるために、不安感を払拭するような雇用の安定が一番大切であり、そうした政策を掲げるべきだと思います。

政策をウォッチし、声を届け、投票し、自分達の力を見せていくことも重要

 白河:今回の選挙の争点を考えることは、非常に難しいなと考えています。なぜなら野党よりも自民党の方がリベラルな政策を打ち出していっているところがあるからです。例えば、野党が長時間労働の是正や同一労働同一賃金を求めていますが、自民党も同じ政策を打ち出している。しかし、与野党一致していても「やりましょう」とはならない。争うばかりではなく協調できるところは協調して、現実的に前に進めることが非常に大切だと思います。そのためには選挙離れせずに、特に投票行動をしないという世代が自分たちにも票があるということを見せていくことが、非常に重要だと思います。

 選挙で一票を投じることはもちろんですが、「保育園落ちた」のブログが話題になった時のお母さんたちの行動力は素晴らしかった。すぐに2万8千人の署名を集め、私のところにも来ましたし、いろいろな党に働きかけて議論を促していきました。それをプロではなく、普通のお母さんたちがそこまでできた。保育園の保護者の層がそういう層になってきているということもあるのですが。働きかけをしたら動くのだ、声は届くのだという希望を捨てずに、皆さんがしっかりウォッチしたり、投票行動したり、この人の言っていることはいいなと広めたり、そういったことも重要なのだと思います。

 もう1つは、政策の違いが各党で見えづらいので、どこの政策がいいとかというのは無いと思います。ですから、公約の中でどの政策を最初に書いているか、順位付けというものが結構重要なのではないかと思います。これよりもこれを先に書いてくれているなら、この人はこっちに思いがあるのだという風に見ていくのもポイントかなと思います。

工藤:いまの話は非常に分かりやすくて良かったと思います。最後に皆さんにお聞きしたいのは、将来像の推計は、ある程度「人口減少」として目に見えています。その状況の中で1.8という希望出生率を打ち出すことによって、2060年にはある程度の人口が確保され、働き方も変えて、65歳以上でも働けるようにするなど労働人口を確保して、そのなかで2060年の人口マクロモデルを作るということになるのかと思います。

 まず1.8という希望出生率が本当に可能かどうか。つまり今ある政策体系の中で可能だと、皆さん思っているのか思っていないのか。一般の人から見て、大きな前提として見えてないということが、将来不安につながっていく。いろいろな働き方があることを提示され、将来の姿が提示され、こういう状況だから、私たちの将来はこういう風に考えれば良いのではないかという具体的な形までいけば、有権者が参加できるベースができるのではないかと思います。先ほど、白河さんがおっしゃったように、政策の争点がなく、各党のベースが同じであれば、ある程度のことをみんなが合意した上で、働き方はこっちを優先するということになれば選挙で選べます。まだまだ段階的に足りないような気がして、選挙で選ぶといっても、争点があまりなく、先ほど言ったように順番くらいでしか判断できないと思うのですが、いかがですか。

高齢者、子育て世代、若者、子どもと課題が分散する中で何をするべきか

加藤:おっしゃった通り、だんだんと成熟化していけばみんな意見が同じになってくるので、選択というのはなかなか難しいと思います。そこで大切なことは選択の仕方です。例えばどういう風な形で負担をしていくのか、消費税なのか所得税なのか、というような形での選択の仕方はいろいろあると思います。それから希望出生率1.8の件ですが、2025年に1.8、2035年には2.07に戻さないと、50年後に1億人を維持できません。そこまで考えてどう政策を打っていくのか。ある意味で1.8は目標値に過ぎず、それが達成できるかどうかというのは、やり方として僕はあると思っています。

 諸外国を見ますとやはり、家族に対する支出を多く出している国ほど出生率が高いのです。例えばいまの高齢者のための支出をいかにして若い人に向けていくのか。そういう選択の仕方もあると思います。そうした選択をするのかしないのか、というところを争点にしてくれれば、物事が非常に分かりやすくなる。例えば1.8や2.07という出生率を優先するのであれば、高齢者の給付を減らして若者に持ってくるという選択肢と、高齢化社会を支えるためには高齢者のための政策をやっていこうとする選択肢がある。いろいろやり方はあるが目標はみんな同じ。基本的にはみんなやっていかなければならないと思います。

工藤:確かに政策的にはいろいろな幅広い政策論争ができるのですが、果たして目標は同じなのでしょうか。つまり重要なのは、国民が課題を共有していないと、政策論争やその先のレベルまでいってないのではないかと思うのですが。

加藤:最初の状況は今日の議論でもありましたが、どういう現状なのかということを明らかにすることが大事で、その上での選択という風に捉えていただければと思います。

工藤:池本さんどうですか。今回の選挙を巡って。

池本:国の単位で考えれば1.8という数字についてはあった方がいいと思うのですが、個人にとってはその数字自体あまり関係がありませんし、出生率目標や人口が減っていくということに関しても、危機感がないと思います。それよりも子どもの問題の方が先であると考えます。たとえ出生率が2.07に上がったとして1億人を維持したとしても、その人たちが貧困であったりだとか、全然幸せを感じられないような人たちであったりするなら1億人を維持する必要があるのか。1億人を維持できないけど、むしろみんながハッピーであることを目指せないのか、そうした選択肢もあるのではないか、と思います。

工藤:それはチャレンジする価値があると思います。ひとつの政策体系の違いがあります。そういうことが出てくれば、国民も考えるきっかけの1つになるのではないかと思います。

久我:希望出生率1.8に関しては、希望している方々が子どもを産むと1.8になるということです。いまの団塊ジュニアくらいまでを分析すると、結婚している夫婦はだいたい2人くらい子どもを持っています。だからもし結婚をすれば、もしかしたら1.8は実現可能なのかもしれないと、私は考えています。そのためには若年層の雇用の安定化というのが大きな課題となってきますので、もう少し実効性の高まるような政策を掲げていただきたいと考えています。

白河:みんな自分の課題がありますので、子育て世代はいかに子育てしやすいようになるか、といったことで選べばいいのだと思います。雇用不安定で不安だという若者は、そこを一生懸命やってくれている人を選ぶ。自分の課題で良いと思います。大きなことまで考えて投票する人は、そこまでいないのではないかと思います。ただ自分の身近な課題を社会的な課題として解決してくれそうな人を選ぶというのは重要です。

 それからずっと議論になっている財源の問題ですが、保育園とかのお金を保護者がもう少し負担してその分税額控除で戻ってくるような仕組みがずっと検討されているのですが、なかなか実現しません。いいことばかり言わないで、「あなたたちもこれ位負担しましょう。負担したらこれだけ返ってきます。」というようなことを言ってくれる人がいたらいいなと思います。選挙だとどうしても良いことしか言わなくなってしまいます。でもそうではなくて「現実的にここは負担してください。だけどこういうこともあります。」という辛いことも言える人が良いなと思います。

工藤:今日は日本にとって最大のテーマである人口問題の難しさを改めて感じました。いま生活している人たちにとっては、非常に大きな問題です。その問題の解決を政治に問わなければならないと同時に、その問題を解決することが将来の大きな傾向という問題に裏付けられていくものと連動しています。人口減少という問題を政治がどのように考えていけばいいかということは、非常に難しい問題だと感じました。ただ逆にいえば、課題があるということを多くの人たちが考え、今、目の前の問題に対してその課題を自分で考えていくという流れが始まれば、政治は課題解決から逃げられなくなると思います。消費税を上げないということで与野党一致してしまいましたが、ラクな方向ばかり考えてしまうと、絶対に大きな被害が将来的に出てくるだろうということをもっと考える必要があります。

 そういうことも踏まえながら、今回の選挙の意味が、私たちの人生にとっては直接かかわっているという難しさ。将来の問題として大きな議論はできるのですが、皆さんがいま発言された様々な課題が、今現在の大きな問題として存在しているのです。それも踏まえて、これから考えなければならないなと感じました。ただこの話はまだもう少し追及して、いろんな議論をしていきますので、皆さんもぜひ活用して頂きたいと思います。

 今日はありがとうございました。


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