緊急世論調査結果に見る「漂流する日本政党政治の今後」

言論NPOは12月8日、日本の政治・民主主義に関する世論調査結果を発表しました。

七月の参議院選挙を踏まえて、日本政治の構造にどのような変化が始まったと思うかを尋ねたところ、「新興政党の台頭と既存政党の退潮という政治構造の本格的な転換が始まった」との見方は12.4%と1割程度に過ぎず、「政治構造の転換につながるかまだわからない」と「現段階では判断できない」を合せると、73.1%と7割を超えます。

その一方で、日本の将来ヘの不安や様々な課題の解決を、現在の日本の政党や政治家に「期待できる」との回答は12.6%に過ぎず、「期待できない」は79.2%と8割近くを占めており、昨年調査から大きな変化は見られませんでした。

また、日本に自分の意見を代弁している政党が一つ以上「ある」という回答は25.6%で4分の1程度である一方、「自分の意見を代弁している政党がない」という回答は38.8%と4割近くを占めています。

今回の調査結果からは、日本国民は政党や政治家に対する根強い不信感を強く持っており、先の選挙結果で示された参政党や国民民主党などの躍進を本格的な政治構造の転換だとする見方に多くの国民が疑問を持っているという現状が、調査結果から浮き彫りになりました。

 ※この調査は9月6日から28日にかけて全国で訪問留置法で行われ、回答者は1,000人です※

日本の政党政治がどのように変わろうとしているのか、専門家が解説

日本の政治・民主主義に関する世論調査結果を日本の識者はどう見たのか。同志社大学の吉田徹教授(比較政治学)と神奈川大学の大川千寿教授に話を聞きました。

参院選では新興政党が躍進しましたが、今回の調査結果を受けて両氏は、「多くの有権者は日本政治の構造変化が始まったとまでは考えていない」との見方を示したものの、特に吉田氏は「日本国民は政党政治の先行き不透明さに戸惑っている」と評しました。

両氏は、課題解決能力の欠如など規制政党に対する有権者の根強い不信も依然として変わっていないと語り、吉田氏は「日本政治が一気に流動化を加速している」と分析しました。これに対し、大川氏は「有権者の根深い政党政治不信は、新興政党の短期的な台頭だけでは解消できるものではない。既存政党を含めた政党全体が、政治に希望を持てるよう有権者に真正面から向き合い、社会の多様な価値観を柔軟に受け止めながら、代表性を再興していく抜本的な努力が求められている」などと今後の課題を挙げました。