日韓の国民感情はやや落ち着いたが、依然冷え込んだ状況両国の閉塞状態に改善の兆しは見られるか

⇒ 第9回日韓共同世論調査結果

言論NPO代表 工藤泰志

 日韓の国民意識は、2018年の韓国での徴用工に対する判決や2019年の日本政府による輸出制限などを受け、日本では2019年から、韓国では2020年の調査で激しく国民感情が悪化したが、一年が経った今もその影響を払しょくできない状況にある。

 2021年の日韓共同世論調査の結果は一言でいえば、両国民の相手国への印象や現在の日韓関係に対する国民意識は、昨年よりはやや落ち着いたものの依然、冷え込んでいる状況にあるということである。

 ただ、その背景には様々な意識の変化や揺れが存在している。その中で私たちが特に注意して観察したのは、国民意識の中に両国関係の改善を促すような兆しが見られるかという点にある。それを明らかにすることが、今回の世論調査のもう一つの目的と言ってもいい。

 過去数年間、急速に広がった日韓の国民間の感情悪化は相手国政府の行動に対するそれぞれの反発である。両政府が修復に取り組まない限り、こうした国民感情は改善しないが、政府行動が変わるためには、それを促す国民意識の変化が必要なのである。

 そのためにも、冷え込む両国の国民感情の中に、改善を促す未来志向の意識が育っているのか、それを注意深く点検することが大事な作業だと考える。

 日韓関係の不信を決定的にした韓国の文在寅大統領は来年3月の選挙で交代し、日本の菅義偉首相はこの10月に交代となる。両国の新しい政府がこの局面で改善に取り組まない限り、この状況は長期化し、構造化する可能性もある。

 ただ、私たちの基本的な問題意識はそうした余裕が両国にあるのか、ということにある。

 中国の台頭とそれに伴う、米中対立の深刻化。世界に分断の危険性が高まり、アジアでも緊張が高まっている。北朝鮮の挑発的な行動も始まっている。米国と同じ同盟関係にあり、民主主義という共通の価値を持つこの二つの国が、このまま反目し続けていいのか、ということである。

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