言論NPO代表の工藤泰志は6月24日、韓国・済州島で開催された第21回済州フォーラム(平和と繁栄のための済州フォーラム)に出席。「『つながり』から『協力』へ 分断された世界において、グローバル・フォーラムはいかに協働を再創造するか」をテーマとしたセッションに登壇した。
工藤はその冒頭で「From Connection to Cooperation ― 対話は本当に政治的対立を超えられるのか」と題して講演。まず、世界で大国間対立が深まり、「力の政治」が広がるなかで、平和と安定を維持するためには国際社会の協働が不可欠だと指摘。そのうえで、「協働」の前提としてまず問うべきなのは、「対話は政治的対立を超えられるのか」という問題だと提起した。
そして、20年以上にわたり携わってきた日中民間対話「東京―北京フォーラム」の経験を紹介。歴史問題や領土問題などで日中関係が悪化した時期にも継続してきた同フォーラムが、昨年初めて中国側の判断で延期されたことに触れ、「対話さえ止まってしまう時代に入ったのかもしれないと不安を感じた」と率直な思いを明かした。
しかし工藤は、だからこそ民間対話の役割が重要になると強調。グローバル・フォーラムが政治的対立を乗り越えるためには、政府から距離を置くだけではなく、社会から広く支持される「対話の正当性」が必要だと指摘し、「対話を支える社会的基盤を強くすることこそ、今のグローバル・フォーラムに求められている」と主張した。
また、対話の目的は意見を一致させることではなく、異なる立場を維持しながらも共通課題への責任を共有することにあると説明。戦争の防止や世界経済の分断回避、気候変動やAIといった地球規模課題は一国だけでは解決できず、「共有された責任」がこれからの国際協力の基盤になるとの考えを示した。
講演の終盤では、「東京―北京フォーラム」の延期後に日中双方の関係者から寄せられた励ましの言葉を紹介しながら、「20年間で得た最大の成果は会議でも報告書でもなく、人と人との信頼だった」と語った。そして、「対話がすべての問題を解決するわけではない。しかし、対話なしに解決できる問題はない」と強調。「だから私は対話を絶対に諦めない」と力強く訴え、未来への責任を共有する人々とともに対話を協働へと発展させていく決意を示して講演を締めくくった。
その後に行われたパネル討論では、モデレーターを務めるキム・ボンヒョン氏(より良い未来のための潘基文財団 対外協力局長、元駐豪大使)による司会進行の下、ピーター・グルク氏(ブレッド戦略フォーラム事務総長)、キム・ヒウン氏(アジア太平洋戦略センター会長/CEO)、張軍氏(ボアオ・アジアフォーラム事務総長)とともに、分断が進む世界の中でのグローバル・フォーラムの役割と可能性について議論を交わした。
◆済州フォーラム(平和と繁栄のための済州フォーラム) 概要
韓国・済州島で毎年開催される東アジア有数の国際対話フォーラム。2001年創設。韓国外交部や済州特別自治道などが主催し、世界各国の元首脳、政府関係者、国際機関、研究者、企業、市民社会のリーダーが集い、平和構築や安全保障、経済協力、気候変動など様々な地球規模課題について議論する。近年は日韓協力や国際秩序の再構築をめぐる対話の場としても注目を集めている。
今回の第21回フォーラムでは、「分裂の時代、協力の再構想」という全体テーマの下、地政学的対立、中東紛争、エネルギー危機といった外交・安全保障の課題をはじめ、経済や文化・教育など幅広い分野にまたがる約70のセッションを開催。さらに、今年選出される次期国連事務総長の候補者が出席し、国連と多国間主義の未来に関するビジョンを共有する「国連事務総長候補者招待対談」なども行われた。
