復興財源は確保したが、生活基盤確保のためのきめ細かな対応は不十分
福島原発は、国が前面に立って責任を果たしているとはいえない
昨年:2.8点
評価の視点
・東北復興のビジョンを描けているか
・被災地の復旧事業を早期に実現する政策がどのように動いているのか
・福島第一原発の廃炉への道筋など、福島の再生をどのように進めようとしているのか
東日本大震災の復旧・復興において、主に、被災地の復旧事業を早期に実現する政策がどのように動いているのか、そして福島第一原発の廃炉への道筋など、福島の再生をどのように進めようとしているのか、という点が主な焦点となる。
安倍政権は民主党政権の失敗を学び、高台移転、土地区画整理、がれき処理などについてこれまでの目標を適宜見直しながら、加速を図ろうとしている。また、東京電力福島第1原発問題では、除染、廃炉、汚染水対策など国主導で対処しようとしていることもあり、「復興分野」においては個別の政策はそれぞれ動いているが、現在でも約18.7万人が避難している状況であり、自民党になってから復興は加速しているものの、まだまだこれからである。
一方で、個別の政策は動いているものの、どのような復興ビジョンを描き、その実現に向かってどのように対処していくのか、という大きな方向性は見えてこない。地域の復興は地域が考えるという立場から復興ビジョン・復興計画は被災自治体によって策定されているが、広域大震災と原発事故という国家レベルの有事に直面し、当該政策及び目標の体系そのものが本当に被災地の復興のために寄与するのか、そしてその政策が実現した際に、現政権はどのような復興のビジョンを描いているのか、そういった点はあまり見えない。
また、福島県の復興、特に福島県原発周辺地域では帰還できる条件になく、仮に早期に帰還したとしても、病院や学校、スーパーなど生活の基盤整備などはまだまだ不十分だと言わざるを得ない。一方で、福島の各自治体が復興計画を作っているが、本来であれば県や国、各自治体間が協力して被災地のなどが、この地域でどういう生活が成り立つか、ということを考えていく必要があるが、そうした状況が示されていないことは評価を下げざるを得ない。
次に、原発事故からの復興についてである。もちろん、前述したとおり、除染、廃炉、汚染水対策に対して国主導で対処しようと表明しており、それぞれの対策は進んでいる。
しかし、原発の事故という歴史的にも未曽有の事故により、福島の避難地区では雇用機会としての原発及び関連産業が失われ、広域生活圏の中心である自治体の帰還が困難な状況にあり、広域的な経済基盤・生活基盤が崩壊してしまった。現在進めている除染と東電による補償金対策を進めても簡単な復興・再生は難しいかもしれない。仮に復興・再生ができたとしても、もともと基盤が弱かった農業・畜産・特用林産物・漁業がなどの地域産業は風評被害も手伝って復興のめどが立っていないのが現状である。また、汚染水問題については、安倍首相が2013年10月15日の所信表明演説で示し、2013年参院選、2014年衆院選のマニフェストとして約束されたものであるが、公約の立ち位置としては明らかに後退している。さらに、新しく就任した林幹雄経済産業相は15年10月12日、「国が前面に立ってしっかりやっていく」と述べているものの、国が廃炉・汚染水対策を主導していく方針を明らかにしているが、廃炉の工程の遅れや、汚染水対策について、政治からの説明は限られており、国が前面に立っているとは言い難い。
そういった現実を踏まえながら、やはり国は原発事故に見舞われた福島の復興ビジョンをどのように描き、進めようとしているのかを示すと同時に、国民に説明しなければならないと考えるが、現時点でそういうビジョンは見えてこない。やはり、この点において、評価を下げる点である。
【復興・防災】個別項目の評価結果
被災現場の実情や将来展望等に合わせた細やかな施策を展開できるよう必要な財源確保に努める。
【出典:2014年衆院選マニフェスト】
復興計画を総点検し、必要な財源やマンパワーを確保。復興庁を機能させ体制を強化
【出典:2012年衆院選Jファイル】
3点(5点満点)
昨年:3点
復興期間の10年間で総額32兆円、財源確保には努めたと評価できる
政府は震災後の2011年7月に「東日本大震災からの復興の基本方針」を策定し、「復興期間」を10年としたうえで、当初の5年間(2011年~2015年)を「集中復興期間」と位置付ける復興の枠組みを決定した。安倍政権成立後、政府は民主党政権時代から復興予算の6兆円の上積みを行い、25.5兆円を確保した。さらに、15年6月24日の復興推進会議で、16年~20年度の復興予算の歳出規模は6.5兆円を確保することを決定し、同時に国が事業費を全額負担する制度を見直し、被災自治体にも総額220億円の負担を求めた。これで、10年間の復興期間の予算総額は32兆円となった。ここまでの集中復興期間において毎年5兆円程度の予算が措置されているが、これは日本の防衛費を超える額であり、日本の厳しい財政状況を鑑みると、最大限予算措置が取られ、現時点では財源確保に努めたと評価できる。ただ、過剰の予算だったということも指摘されており、決算ベースでは今後の教訓として精査する必要がある。
住宅再建・復興まちづくりのめどはつきつつあるが、
生活基盤確保のための、きめ細かな対応は不十分
次に、復興という点では、住宅再建・復興まちづくりは被災地復興の最優先課題である。そこで、生活基盤を事業の進捗を点検し、遅れを加速化するために、13年3月の復興推進会議において「住まいの復興工程表」を公表すると同時に、13年3月から14年5月までに加速化措置を第5弾まで実施した。また、15年1月にはこれまでの加速化措置等の実施状況を踏まえ、追加措置を加えた「総合対策」をとりまとめ、復興の加速化を図っている。後追い的にではあるが、土地収用手続きの迅速化、被災市町村への人的支援など規制緩和が進み復興の加速化は進んだと評価できる。
15年12月現在、高台移転(防災集団移転)の99%、災害公営住宅の94%が着工しているが、15年度末での高台移転完成は45%、災害公営住宅は59%となっており、18年度末の住まいの確保に関する事業の完了に向けて進んでいるものの、被災者へのニーズ調査などによって、多少のずれは生じることから、目標の修正を行いながらも実現に向けて努力しており、かつ、工程表という形で国民に説明がなされているといえる。但し、災害公営住宅は建設しているものの、旧来の公営住宅法の枠の中でつくっているために、あらかじめ介護施設を入れ込んだりはできないために、災害公営住宅が作ってから検討することになっており、建築の際に様々な施設を併せられるようなことができれば、入居後もスムーズに生活基盤を取り戻せる。そうした点は、今後、教訓として反映させていく必要がある。
人材不足の改善については、現時点では困難と言わざるを得ない
被災自治体の職員確保のため、全国に自治体からの職員派遣、公務員OB、民間実務経験者などの施策がとられているが、全国の自治体の職員派遣は年々減少している(2014年4月1日:2229人、2015年4月1日:2199人)。
但し、復興庁による青年外界協力隊帰国隊員、国家公務員OBなどの採用による市町村業務支援の人数は増えており、一定程度成果を上げていると言える。それでも、宮城県が15年10月1日時点で沿岸15市町の状況をまとめたところ、計237人分の人出が足りないとされており、被災地の自治体では慢性的な人手不足に陥っている。景気回復や2020年の東京五輪に向けた建設需要増加の影響のため、土木など専門職を中心に他自治体からの追加派遣による確保も厳しい状況が続いており、復興に伴うマンパワーの十分な確保には至っておらず、着手して動いているものの、目標達成は困難だと言わざるを得ない。
水産業の水揚げ、企業の売り上げも改善しつつあるが、まだまだ不十分
最後に、被災3県における人口は、減少傾向にあるもののその度合いは鈍化しており、社会増減率は、沿岸市町村においても震災前の水準に戻りつつある。
水産業では、被災した漁港の約7割で陸揚げ岸壁の機能が全て回復し、約9割で陸揚げが可能。水揚げ量も約8割まで回復するなど、一定程度復旧している。一方で、水産加工施設は約8割で業務再開しているものの、青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県の5県全体では、震災直前水準以上に売上げが回復した水産加工業者は13%にとどまり、売上が8割以上回復した水産加工業者は40%と、売上の回復が遅れている。
グループ補助金交付先アンケートでは、現在の売上げ状況が震災直前の水準以上まで回復していると回答した企業は40.3%と、2012年2月(29.9%)に比べて10.4ポイント増加している。加えて、2014年の被災3県の工場立地件数は145件(岩手18件、宮城82件、福島45件)と、2013年に比べて29件増えるなど、水産業、工業・サービス業などで概ね回復傾向にあるが、元の売り上げとは開きがあり、産業などが元通りの水準に戻るかは、現時点で判断できない。
放射性物質汚染廃棄物(指定廃棄物)の処理については、福島県のみならず関係5県においても、市町村長会議や有識者会議での検討を踏まえ、候補地の選定を進め、風評被害対策や地元振興策を含め、地元の不安を解消し、理解が得られるよう最大限努力していきます。
【出典:2014年J-ファイル】
2点(5点満点)
昨年:4点
放射性物質汚染廃棄物の処理について、目途立たず
2014年衆院選時のJ-ファイルにて、「放射性物質汚染廃棄物(指定廃棄物)の処理については、福島県のみならず関係5県においても、市町村長会議や有識者会議での検討を踏まえ、候補地の選定を進め、風評被害対策や地元振興策を含め、地元の不安を解消し、理解が得られるよう最大限努力していく」こととされている。
現在、東京電力福島第一原子力発電所事故で発生した指定廃棄物は12都県で発生しており、特に発生量が多い宮城、栃木など5県で、放射性物質を含む下水汚泥などの指定廃棄物の処分場建設を計画しているが、地元の反対などでいずれも建設のめどが立っておらず、着手して動いてはいるが、目標達成は困難な状況と言わざるをえない。
政治が率先して復興の課題としてアジェンダ設定することが必要ではないか
ただ、指定廃棄物が一番多い、福島県で、県内の指定廃棄物を同県富岡町の管理型最終処分場で処分する国の計画を巡り、福島県と富岡町、搬入路にある樽葉町が計画受け入れを決定した。こうした動きは、福島県内の復興を実現していく上で1つの契機となるが、他の5県についても現時点では実現のめどが全く立っていない。また、こうした状況を政府が主導し。何としても指定廃棄物処理を実現するという状況にはなっておらず、政治家側が率先して復興の課題として、議論の遡上にあげ、アジェンダ設定を行うことが必要である。
がれき処理については、被災3県で目標はほぼ達成した
一方、東日本大震災による津波に関するがれきについては、東日本の太平洋沿岸部を中心に、13道府県にわたり災害愛器物役2000万トン、津波堆積物役1100万トンが発生したが、目標としていた2014年3月末までに、福島県を除く12道県で災害廃棄物及び、津波堆積物の処理は完了している。さらに、福島県についても15年3月現在、98%(災害廃棄物97%、津波堆積物99%)の処理が完了しており、がれき処理についてはほぼ達成し、2012年に掲げた目標は実現したと評価できる。
また、がれきの広域処理については、環境省は当初の推計では401万トンと予想していたが、13年1月25日に公表した震災がれき処理計画の見直し版では69万トンと大幅に下方修正している。これは岩手県、宮城県に設置した31基の仮設焼却炉と22か所の破砕・選別施設で対応したものである。結果的に広域処理の必要がなかったわけで、環境省の当初の見通しの甘さが合った点は否めない。
原子力事故災害被災者の方々の一刻も早い帰還を実現するために、復興の動きと連携した効率的な除染を実施する
【出典:2014年衆院選マニフェスト】
被災者の帰還を実現するため除染を加速。除染の目標値を明らかにし、着実に実施できる体制に
【出典:2013年参院選マニフェスト】
3点(5点満点)
昨年:2点
2016年度末までに、居住制限区域と避難指示解除準備区域の解除を目指す方針
政府は2012年4月以降、(1)年間の線量が50ミリシーベルトを超え、立ち入りを原則禁じる「帰還困難区域」、(2)20ミリシーベルト超50ミリシーベルト以下で、原則として宿泊を禁じる「居住制限区域」、(3)帰還の目安の20ミリシーベルト以下だが、インフラが整っていないなどの理由で宿泊を禁止する「避難指示解除準備区域」の3つに区域を分け直した。そして、除染で年20ミリシーベルト以下になり、道路などのインフラがほぼ復旧すれば、国が自治体や住民と話し合って解除することとされている。
こうした状況下で政府は2015年6月、福島の復興指針を改定し、16年度末までに、居住制限区域と避難指示解除準備区域の解除を目指す方針を決め、8月31日から南相馬市など3市町村でも準備宿泊を始め、解除に向けた動きを加速させている。また、福島原発事故で全住民が避難している7町村のうち、事故から4年半を経た2015年9月5日、樽葉町では避難指示解除がなされた(避難指示解除は3例目)。しかし、町に帰る意思を示しめしているのは全人口約7400人の1割程度にとどまっている。
早期帰還ではなく、住民生活の基盤が整った上での帰還を目指すべき
楢葉町の帰還に先駆ける2014年4月1日、田村市の避難指示が解除され1年が経過した15年2月末までに帰還した住民は4割程度にとどまっている。除染に着手し、帰還自体も実現しつつあるという点では評価できる。
しかし、仮に早期に帰還したとしても、病院や学校、スーパーなど生活の基盤整備などはまだまだ不十分だと言わざるを得ない。一方で、福島の各自治体が復興計画を作っているが、本来であれば県や国、各自治体間が協力して被災地のなどが、この地域でどういう生活が成り立つか、ということを考えていく必要がある。
全体的に見て、早期帰還をめざし動き始めていることは評価できるが、現時点でどこまでの住民の帰還が実現できるかは判断できない。
政府は、除染の目標値は明らかにしていない
なお、除染の目標値について政府は、除染作業による放射線量の低減目標は設定しておらず、放射線防護の方針として、国際放射線防護委員会(ICRP)が勧告で示した通り、個人が受ける追加被ばく線量が長期的に年間1ミリシーベルト以下になることを長期目標としているのみであり、除染の目標値は明らかにしていない。
また、原子力規制委員会の田中俊一委員長は15年10月28日の定例会見で、帰還のための被ばく線量の目標値(参考レベル)は、政府が定めるのでなく、自治体ごとに設定すべきとの考え方を示しており、自民党が参院選時に「除染の目標値を明らかにし、着実に実施できる体制に」と示した目標とは相反しており、政府はこうした状況も踏まえ、国民に説明する義務があると考えるが、そうした説明はなされていない。
廃炉・汚染水対策を安全、着実に進める
【出典:2014年衆院選マニフェスト】
福島第1原発の廃炉は国が主導的な役割でより早く、安全、着実に進める。【出典:2013年参院選マニフェスト】、(汚染水など)福島第1原発の対策は国が前面に立って責任を果たす【出典:2013年10月15日所信表明演説】
1点(5点満点)
昨年:3点
溶融燃料(燃料デブリ)取り出しに向けた戦略プラン案を公表
本項目は安倍首相が2013年10月15日の所信表明演説で示し、13年参院選、14年衆院選のマニフェストとして約束されたものであるが、公約の立ち位置としては明らかに後退している。
まず、廃炉に向けてであるが、11年9月、原子力損害賠償支援機構は賠償資金を交付する組織として発足。政府は汚染水対策への国の関与を強めるため、機構に廃炉支援の機能を加えることを決め、14年5月に改正原賠機構法が成立し、廃炉や汚染水対策に詳しい専門家を集めて8月18日に発足した(機構の名称は「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」に変更)。2015年4月9日、東京電力福島第1原発の廃炉作業について、国や東電が取り組み状況などを自治体関係者らに説明する廃炉・汚染水対策福島評議会が開催され、炉心溶融(メルトダウン)した1~3号機に残る溶融燃料(燃料デブリ)取り出しに向け、「戦略プラン」案として公表し、①格納容器を水で満たす「冠水工法」で上から取り出す、②デブリがある底部だけに水を張る「気中工法」で上から取り出す、③「気中工法」で横から取り出すとする3工法を示し、2018年度中に工法を確定させるとしている。
廃炉完了の目標は変更しなかったが、燃料デブリの取り出し時期は後ろ倒しに
その後、政府と東京電力は15年6月12日、東電福島第1原発の廃炉に向けた工程表を2年ぶりに大幅改定し、廃炉完了は「30~40年後(2041~51年)」とする全体目標は変えなかったが、1~3号機の使用済み核燃料プールからの燃料取り出し時期を、最大3年程度遅らせ、プール内の燃料の回収開始時期を、最も早い3号機で「今年度上期」から「18年1月」に、1、2号機についても「17年度上期」「17年度下期」としていたが、それぞれ「21年3月」「20年8~11月」に延期した。但し、15年4月に福島第1原発1号機で、ロボットによる原子炉格納容器内の初の調査を行ったものの、廃炉の最難関となっている溶け落ちた燃料(デブリ)の位置を特定することはできておらず、現時点で目標達成できるかは判断できない。
2015年度の凍土壁の完成は困難になったと評価せざるを得ない
一方、汚染水については、東電が原発建屋につながる地下道(トレンチ)から高濃度の汚染水が海へ漏れるのを防ぐための有力な工法として実施していた「凍土壁」による止水工事が思うように進んでいない。さらに、原子力規制委員会は15年12月18日、東京電力福島第1原子力発電所の汚染水対策で計画中の「凍土壁」について、地下水の水位の変化で建屋内の高濃度汚染水が漏れ出る可能性があるとして、現時点では本格的な凍結を認めない考えを示し、規制委側は結論を年明け以降に持ち越した。政府と東電は2015年度中の凍土壁の完成を目指しているが、実現は非常に困難になったと評価せざるを得ない。
汚染水対策について何ら道筋は描けておらず、国は前面に立って説明すべき
さらに、事故を起こした原子炉建屋などに流入する地下水の量が2015年9月中旬以降、1日あたり約100トン減少している。建屋周辺の井戸「サブドレン」で地下水のくみ上げを始めた効果が出始めたとみられる。一方で、汚染された地下水が海に流れ出るのを抑えるため、15年10月に「遮水壁」を設置し、せき止めた地下水の多くは放射性物質を取り除いたうえで海に流す計画だった。
しかし、12月18日原子力規制委員会に報告した東電によれば、「遮水壁」の周辺などからくみ上げた地下水を、海ではなく建屋内に1日当たり400トン入れていることを報告した。汚染水の増え方がかえって早まるという新たな課題となっている現状では、汚染水対策について着手しているが、汚染水減少に向けた道筋は描かれておらず、困難な状況となっている。新しく就任した林幹雄経済産業相は15年10月12日、「国が前面に立ってしっかりやっていく」と述べ、国が廃炉・汚染水対策を主導していく方針を明らかにしているが、廃炉の工程の遅れや、汚染水対策について、政治からの説明は限られており、国が前面に立っているとは言い難い。
「国土強靱化基本法」に基づき事前防災・減災、老朽化対策を強力に推進する
【出典:2014年衆院選マニフェスト】
国土強靭化基本法や「首都直下型」と「南海トラフ」地震の措置法を制定し、事前防災や減災対策に取り組む
【出典:2012年衆院選マニフェスト】
3点(5点満点)
昨年:2点
「国土強靱化アクションプラン2015」を実現するために
政府は、2013年末に施行された国土強靭化基本法を基に大規模災害に備えた耐震化など、インフラ整備を進める国土強靭化基本計画を14年6月3日に閣議決定し、その達成目標時期を定めたアクションプランを国土強靭推進本部で決定した。その後、土砂災害や火山噴火などが相次ぎ、災害への備えが必要との判断から、15年6月16日、第4回国土強靱化推進本部を開催し、「国土強靱化アクションプラン2015」が取りまとめられた。その中で、各施策について、年度ごとの工程表を策定し、目標実現への道筋を明確化し、各プログラムの進捗度合を見える化し、取組を加速することとした。さらに、安全な地域づくりを進めるため、交付金等を活用し、地域ごとの国土強靱化計画の策定・実施を支援することも盛り込まれた。しかし、その全てを実現するためには多額の予算が必要になるが、その財源などはしめされておらず、現時点では困難と言わざるを得ない。
3大都市圏の都市機能を守るため、液状化対策など「都市防災」を強力し、行政機能の分散化なども促進
【出典:2012年衆院選マニフェスト】
【出典:2014年J-ファイル】
3点(5点満点)
昨年:3点
目標を示したが、それをどう実現するか示すべき
政府は、2014年3月28日の中央防災会議でこれまで5つの地域に分かれていた地震対策大綱を、大規模地震防災・減災対策大綱として統合した。昨年11月に策定した南海トラフ地震特別措置法と首都直下地震対策特別措置法に基づく防災対策推進基本計画も同時に定め、それぞれ推進区域・地域を指定した。とくに南海トラフの対策では、最大33万人と想定される死者を10年間で8割減らす目標を掲げ、被害を減らすため、計画は20項目以上の数値目標を盛った。全国の住宅の耐震化率を、今の約80%から2020年までに95%に高める。沿岸部の市町村すべてが津波避難ビルを指定する、などだ。
その後、国土交通省は2015年12月18日、南海トラフ巨大地震に伴う長周期地震動に関する内閣府の推計を受け、高層のマンションで揺れを抑える改修が必要となった場合、来年度から費用の一部を補助したり、超高層のビルやマンションを新築する際は、三大都市圏の沿岸部などで2~3メートルの横揺れに見舞われるとした推計を、設計に反映させるよう義務付けるなど、一部で対策は始まっているが、防砂対策推進基本計画との整合性などは曖昧なままである。また、中央防災会議も2014年3月28日の決定以降、1度しか開かれておらず、本目標実現のために、積極的に動いているとはいえないが、現時点で目標達成は判断できない。
住宅・建築物、道路、堤防等のインフラの耐震化を推進する
【出典:2014年衆院選マニフェスト】
学校、公共施設、民間建築物の耐震化加速など、社会資本を前倒し整備する
【出典:2012年衆院選マニフェスト】
2点(5点満点)
昨年:4点
目標達成に向けた施策を示す必要がある
①加速するインフラ老朽化、②切迫する巨大地震、激甚化する気象災害、③人口減少に伴う地方の疲弊、④激化する国際競争といった直面する構造的課題に係る状況変化に的確に対応し、これらを乗り越えるため、政府は2015年9月18日、2020年度までのインフラ整備の指針となる「社会資本整備重点計画」を閣議決定した。その中で、住宅・建築物の耐震化率を2020年度に95%(13年度82%)、緊急輸送道路上の橋梁の耐震化率を20年度に81%(13年度75%)、南海トラフや首都直下の巨大地震で震度6強以上が想定される主要鉄道路線の耐震化率を17年度に100%(13年度94%)に高めること、南海トラフ巨大地震・首都直下地震等の大規模地震が想定されている地域等における①河川堤防、②海岸堤防等の整備率(計画高までの整備と耐震化)、③水門・樋門等の耐震化率を、それぞれ①20年度75%(14年度37%)、②20年度69%(14年度39%)、③20年度77%(14年度32%)に設定した。道路などの効率的な維持管理・更新を進めることなどを目標として掲げた。
「住宅・建築物、道路、堤防等のインフラの耐震化」に向けて着手したものの、目標を実現するための具体化はこれからで、現時点でこうした目標を達成できるかは判断できない。また、閣議決定された「社会資本整備重点計画」についても、国会で目立った議論はなされておらず評価を下げざるを得ない。
各分野の点数一覧
経済再生
財政再建
社会保障
外交・安保
エネルギー・環境
地方再生
復興・防災
教育
農林水産
政治・行政・公務員改革
評価基準について
実績評価は以下の基準で行いました。
・この3年間で未だに着手しておらず、もしくは断念した計画であるが、国民にその事実や理由を説明している
・着手して動いたが、目標達成は困難な状況になっている
・着手して順調に動いているが、目標を達成できるかは判断できない
・着手して動いたがうまくいかず、目標を修正し、実現に向かって努力している、かつ、国民に修正した事実や理由が説明された
・着手して順調に動いており、現時点で目標達成の方向に向かっていると判断できるもの
・この3年間で実現した。もしくは実現の方向がはっきりと見えてきた
※但し、国民に説明していなければ-1点
新しい課題について
3点
新しい課題に対する政策を打ち出し、その新しい政策が日本が直面する課題に見合っているものであり、かつ、目標や政策体系の方向が見えるもの。または、政策体系が揃っていなくても今後、政策体系を確定するためのプロセスが描かれているもの。これらについて説明がなされているもの
(目標も政策体系が全くないものは-1点)
(現在の課題として適切でなく、政策を打ち出した理由を説明していない-2点)
【旧管理ID: 7998】