改正原案の作成に着手したものの、現時点で憲法改正の見通しで説明不足
昨年:2.0
評価の視点
・憲法改正の案を政府として国民に示しているか
・憲法改正に向けた計画をしっかりと国民に説明しているか
2012年の衆院選後、安倍首相は2013年1月30日の衆院本会議で、96条の先行改正を推進することを示した。菅義偉官房長官も3月11日の記者会見で「政府としては96条の改正に全力をあげて取り組みたい」と延べ、憲法改正に向けて具体的に動こうとした。
しかし、野党のみならず、公明党や党内でも慎重論が噴出し、また、世論調査でも96条改正反対が多数を占め、2013年7月の参院選の際には、公約に96条先行改正を盛り込まないことになるなど、憲法改正に向けた政権が考える具体的な道筋は見えなくなった。
他方で、憲法改正の手続きを定めた改正国民投票法が2014年6月13日に参議院で賛成多数で可決、成立した。それまで日本では、国民投票に関する法律が存在していなかったが、この法案の成立で憲法改正するための手続きが整った。
今回の評価では、安倍政権3年目として、憲法改正に向けてどのような改正案を考えているのか、改正に向けた手続きをどのように考えているのか、それらを国民に説明しているか、といった観点から評価した。
【憲法改正】個別項目の評価結果
国民の理解を得つつ憲法改正原案を国会に提出し、憲法改正のための国民投票を実施、憲法改正を目指す。
【出典:2014年衆院選マニフェスト】
「憲法改正原案」の国会提出と憲法改正を目指し、国民の理解を得つつ、積極的に取り組む
2点 (5点満点)
昨年:2点
国民投票法は整備されたが、与野党の機運が高まらず、改憲は困難に
安倍政権は、2014年6月13日に改憲の是非を問う国民投票の投票権年齢を法施行から4年後に「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げることを柱とする改正国民投票法を成立させ、憲法改正するための手続きを整えた。また、2015年6月17日に改正公職選挙法が成立し、改正国民投票法で定められた選挙権年齢の齟齬の解消に取り組み、法整備を行った。
具体的な憲法改正案としては、安倍首相は当初、2013年1月30日の衆院本会議で96条の先行改正を推進することを示したが、野党のみならず、公明党や党内でも慎重論が噴出し、2013年の参院選の公約に96条先行改正を盛り込まれなかった。その後、政権として具体的な改正案は示されていない。また、憲法9条の改正については、2015年9月に解釈改憲によって安保関連法が成立したことを受け、与党内では9条改正は当面、不要との空気が強まっている。
他方で、衆議院憲法審査会で具体的な改憲案の議論が進んでいる。2015年5月に衆院憲法審査会では、共産党を除く、自民党、公明党、民主党、維新の党、次世代の党が「緊急事態条項」の議論が必要であるとの点で意見が一致している。安倍首相は2015年11月11日の参院予算委員会で、緊急事態条項について「国民の安全を守るため、国家、国民がどのような役割を果たしていくべきかを憲法に位置づけることは極めて重く、大切な課題だ」と述べているが、緊急時にどこまで行政の権限を強化するのか、国民の主権をどこまで制限するのかについては各党の間で意見の隔たりもあり、憲法改正に向けた具体的な道筋がまだ描けていない状況にある。
憲法改正原案を提出するための着手はしているが、現時点で憲法改正は困難な状況になっていると言わざるを得ない。
各分野の点数一覧
経済再生
財政再建
社会保障
外交・安保
エネルギー・環境
地方再生
復興・防災
教育
農林水産
政治・行政・公務員改革
評価基準について
実績評価は以下の基準で行いました。
・この3年間で未だに着手しておらず、もしくは断念した計画であるが、国民にその事実や理由を説明している
・着手して動いたが、目標達成は困難な状況になっている
・着手して順調に動いているが、目標を達成できるかは判断できない
・着手して動いたがうまくいかず、目標を修正し、実現に向かって努力している、かつ、国民に修正した事実や理由が説明された
・着手して順調に動いており、現時点で目標達成の方向に向かっていると判断できるもの
・この3年間で実現した。もしくは実現の方向がはっきりと見えてきた
※但し、国民に説明していなければ-1点
新しい課題について
3点
新しい課題に対する政策を打ち出し、その新しい政策が日本が直面する課題に見合っているものであり、かつ、目標や政策体系の方向が見えるもの。または、政策体系が揃っていなくても今後、政策体系を確定するためのプロセスが描かれているもの。これらについて説明がなされているもの
(目標も政策体系が全くないものは-1点)
(現在の課題として適切でなく、政策を打ち出した理由を説明していない-2点)
【旧管理ID: 8002】