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【朝日新聞】 特集・新聞の言論力

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2002/3/30 朝日新聞

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 昨春の「私の視点」欄創設から1年。この間、国際的には米同時多発テロとアフガン空爆、国内でも首相の靖国神社参拝、テロ対策特別措置法、一連の外務省問題と、大きな論点が相次いで浮かびあがった。掲載本数はテーマ別の特集紙面を合わせて620本あまりに上る。テレビとインターネットを媒体とする「情報」の時代、「言論の衰退」も言われる中で新聞はどんな役割を担うのか、5氏の論考を集めた。

工藤泰志(くどうやすし) 「言論NPO」代表

青森市生まれ。月刊誌「論争 東洋経済」編集長を経て、昨年11月、 各界の言論人が個人の資格で参加 し、ネット上で政策を論議する非営 利法人「言論NPO」を立ち上げ、 代表に就任した。43歳。


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当事者意識もち対案を示せ
出版社の編集者を経て、私は昨年11月、インターネットを主な舞台にした「言論NPO」という非営利法人(NPO)を仲間とともに立ち上げた。内外の政策課題について、ウェブサイトを使って随時議論し、有識者が参加したフォーラムで政策提言する。NPO組織で言論活動するのは海外では珍しくないが、個人が参加する質の高い言論空間をつくるためにはふさわしい形態だと考えたのである。

今、日本が陥っている難局を打開し、新しい国家像やシステムを生み出す議論や対応策をどれだけ主体的に生み出せるか、それが私たちに課せられた評価基準だと思っている。

本来こうした目的は、新聞にも課せられていたはずだ。私も数カ月前まではマスコミの一員だったが、バブル崩壊後の十数年間、日本が戦後構造の歴史的な転換期にある中で、議論の音頭をとるべき言論機関はその役割を十分に果たせたとはいえない。「言論不況からの決別」を運動のスローガンに掲げた背景には、そうした反省がある。

日本の「失われた10年」については、マスコミ関係者の著書を含めてさまざまな論評がなされている。だが、政府の政策運営や経営者行動に対する批判や総括はできても、マスコミの報道がその政策形成に与えた影響を論じたものはほとんどない。

日本がいまだに困難を克服できず、その傷を深めている中で、多くのマスコミの議論は、目の前の問題や傍観者的な批判に費やされ、俳句の季語のように関心は移っている。各分野で始まった挑戦に対する適正な評価もなされていない。

「言論NPO」の活動はまだ始まったばかりだが、驚いたのは現在約350人いる会員の大部分が、政策形成の現場に携わる政府関係者や、企業経営者、中間管理職、教員、自治体・労働界の関係者といった社会的地位にあることだ。しかも、個人の資格で参加していただいた。その人たちは日本の現状に危機意識を持ち、議論を通じて日本の改革に積極的にかかわろうとしている。

今、この国に問われているのは、ガバナンス(統治)の回復と、信頼を失った政治、官僚、市場などのシステムを再構築すること、そして個人の挑戦だと、私は考えている。

日本はこの間、責任やリスクの回避を優先する、すくんだ状態にあったと思う。政治家と官僚のもたれ合いの構造。そして、先のデフレ対策では経済関係省庁間と日銀が相互に動けない「囚人のジレンマ」現象がみられた。これらを打開するためには、首相が強力なリーダーシップを発揮するしかない。しかし、改革はガバナンスの回復だけでは動かない。私たち自らがこのゆがんだ依存関係から自立し、議論を戦わせ、自己実現に向けて挑戦していく中でしか、日本の将来は切り開けないからである。 人任せや、批判だけの議論が建設的な言論空間を縮小させ、今のような閉塞(へいそく)状況を招いているようにも思われる。私たちは自立する意識を持つ個人の議論を通じて、日本の改革に立ち向かおうと考えている。

日本の言論機関で圧倒的な影響力を持つ新聞に期待するのは、オピニオン形成者としての役割である。批判は対案を持って初めて意味をなす。そのためには、当事者意識を持って主張をし、他社と真っ向から論戦をしてほしい。中立性に隠れた無責任さと決別することが、特に大切だと思う。

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