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【毎日新聞】 マニフェスト選挙 どうつたえたか

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2003/12/5 毎日新聞
新聞・通信5社選挙担当座談会
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「マニフェスト(政権公約)」が焦点だった衆院選をメディアはどう伝えたか。毎日新聞など新聞・通信各社の政治部デスクらによる座談会が行われ、新たな選挙報道のあり方を議論した。そのポイントを紹介する。【木村旬】

 

 

政治に緊張感

座談会はマニフェスト選挙の定着を目指して政策評価活動を続けている「言論NPO」(工藤泰志代表)が主催し、朝日新聞、共同通信、東京新聞、日本経済新聞、毎日新聞の選挙担当デスク・キャップらが出席した。

マニフェスト報道にあたっては「従来の公約とどう違うのか。言葉が上滑りにならないように比較・検討した」(朝日)と、現場ルポやテーマごとのマニフェスト点検などで政党の思惑に踊らされない紙面化に努めたことが強調された。

また、「マニフェストで国民の生活がどう変わるかを分かりやすく伝えるため、影響を受ける一般の人に取材した」(東京)と有権者の身近な問題に引きつける報道も心がけたと説明された。

マニフェストの本場・英国とは異なり、内容のあいまいさも目立った。争点の一つ、年金改革は自民、民主両党とも肝心な給付と負担の水準に当初は触れていなかった。

しかし、政党間で論争し、メディアも問題視したことで不十分ながら自民、民主とも給付と負担の具体案に言及せざるを得なくなった、とメディアが一定の貢献をしたとの意見が出された。代表工藤も「政治に緊張感を持たせる紙面に一歩踏み出した」と評価した。

 


公平性とバランス腐心

日本の多くのメディアは「不偏不党」「客観報道」をうたい、選挙では各党の主張をほぼ同じスペースで同列に扱うのが通例となってきた。しかし今回の衆院選は自民、民主両党の「マニフェスト対決」が「政権選択」に絡んで焦点となり、両党にどこまでスポットを当てて報じるかがメディアの課題となった。

座談会では「当初は、議席の多い自民、民主を大きく扱ったが、加盟社からの指摘もあり、公平性に留意した」(共同)と選挙の焦点と公平性の両立に腐心した点は共通し、「手探りだった」と試行錯誤を認める声も出た。

その中で、毎日は全政党のマニフェストを丁寧に掲載した上で「日本の選択」というワッペンを積極的に活用しながら自民、民主だけを対象としたマニフェストの採点を実施するという特徴を出した。これに触れて担当者から「各党横並びの従来型の選挙報道で十分なのか。小選挙区制に伴う2大政党への流れの中、有権者に判断材料を提供したいと考えた」と趣旨の説明があり、牧野義司・言論NPO理事からは「メディアとして政策評価が問われていく中、記者自身が評価し、紙面化したのは新しい試みだ。若い官僚たちからも『先を越された』との声もあった」と評価する意見が出た。

その一方で「憲法問題は自民が改憲を掲げ、民主も創憲だが、世論は9条などの改憲に慎重だ。この雰囲気を2大政党の政治でどこまで反映させられるのか」との見方も出て、2大政党の意見ではない第三極の意見などにどう光を当てていくのかという宿題が残った。

 


実行を監視・検証

マニフェストの限界を指摘する議論も展開された。

「数値が明確な経済政策などはメディアも評価しやすいが、教育基本法改正などの理念の問題は評価が難しい」(日経)と、教育や外交・安保、憲法などマニフェストになじまない分野の争点分析が課題とされた。

最終的に「メディアは選挙期間のマニフェスト評価だけでなく、選挙後も政策の実行を監視・検証する責任がある」と、マニフェストを一過性に終わらせず、メディアが政治に緊張感を与えていくことが重要との認識で一致した。

 

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