次の日本をつくる言論

2009年 新対談 「世界の大変化の中で日本が考えるべきこと」

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第4話:2009年、私たちに何が問われているのか

工藤 2009年は経済危機の影響が本格化する中で、日本では間違いなく国政選挙があります。それからオバマさんも1月20日に大統領になります。日本も民主主義を問われ、日本の針路なりが問われる年になると思います。この新しい年を私たちはどのように迎えればいいのでしょう。

小林 僕は2009年、大部分の人の関心は、今の世界不況がどこまで進み、続いていくのだろうかということだと思います。どの辺で収束をみせるのか。どの辺までいけばそれなりに見通しが立つようになるのだろうか、ということは間違いなく最大の関心事です。また、身近に職を失った人がいれば、もっと切実な思いを持っている人も多くいると思います。その時、09年という長いスパンではなく、前半に限って言えば、先が見えないというのは別に日本だけではなく、世界中みんな迷っているわけで、気持ちの面ではイライラするとは思うけれど、やはり軽挙妄動しても結果はでてこない。表現が適切かわからないけれど、じっと我慢して、その我慢の中から、次にどういう方向でどれくらいのスピードで展開していけるのかを、それなりに示唆してくれる人、また、色々あるけれど、最悪の事態は起こさせないから任せてくださいといえる人、そういう政治的リーダーシップを求める声が、どんどん大きくなってくると思います。

ですが、現政権や自民党は、まったくそれに対して応えていないだけでなく、益々不安をかきたてる以上の何ものでもない。では民主党はどうかと。民主党は、個々に名前が挙がってきて、いい人がいるではないかという人もいます。確かに、いい人もいると思います。しかし民主党は政権をとったことがない、未経験だからやはり怖い。それでも、民主党に積極的魅力を覚えるのではなく、自民党があまりにも駄目だから、少しのリスクをとってでも、思い切って民主党に政権を任せてみるかという風になる。そういう選択を心に秘めている人がだんだん増えてきていると僕は思います。そして、その流れは変わりようがないのではないかと思います。本当に自民党の先生方には申し訳ないけれど、やはり麻生さんのリーダーシップのもとで、最低限この通常国会で何を成果としてあげるのか。その辺りはきちんとしないといけない。ただ、第二次補正は臨時国会にはあげず、政局論としてそういう話が優先してしまっています。選挙や政局ではなく、大事なのは政策で、今の状況を何とかしないといけないだろうと麻生さんは言っています。麻生さんは初心貫徹しないって言われているけど、自民党自身は最低の責任を果たすという意味できちんとやらないといけない。民主党について言えば、自分たちが政権を担わなければならなくなったとき、自民党が嫌だから仕方なく民主党にという受け皿ではなく、より積極的にこういうことをやり、多くの人に期待させるような提案を行ってほしい。

僕は当面の問題は、経済の問題を含め、そういう政治のリーダーシップというか、政治の安定をきちんとやることが、2009年における、最初の日本の最優先課題だと思います。

工藤 やはり国会の議論は言論の府でもありますし、今の政局だけを意識した行動は直さなければならないとおもいます。例えば、アメリカはビッグスリーへの支援の際に、公聴会で納得いくまで議論をしています。ブッシュさんにしてもエンロンのときは率先して、この危機は私が解決させると議会で言っています。現在の状況について政治がリーダーシップを発揮して取り組む意思を示す場が国会ですし、政治も多くの専門家に集めて取り組む局面でしょう。選挙はその延長線上にあるべきもので、しっかりとした議論とリーダーシップの循環が国会から始まらないといけないと思うのですが。

明石 おっしゃるとおり、政策論争を色んな場で行い、これを盛んにしていくことが必要だと思います。政党単位の議論は、行き詰った議論になりかねないと思います。そういう意味で、私はマスコミの役割も重要だと思っています。今の政治家の状況を情けないと一方的に批判するのでなく、政治家がいいアイディアを出し、いいことをするならばそれを褒め、是々非々でいくべきだと思います。マスコミは、自分のほうが偉いかのように距離をおき、どこか他の国で起きていることのように政局を批判するだけというのは、甚だ建設的ではないと思います。そういうのを修正する必要があると考えます。民主主義というのは、別に理想的な制度でもなんでもありません。これはチャーチルが言っていることばですが、「他のすべての制度に比べれば、まだマシ」だということにすぎないわけです。こういうのをきちんと扱えないと、1930年代40年代の始めに日本で起きたように、議会政治はダメだとか、民主主義はまどろっこしいことばかりやっている、という批判ばかりが出てきて、それ以外の絶対主義的・権威主義的なやり方を国民が選ぶようになることは大きな間違いになります。だからこそ、マスコミも態度を変えるべきだし、国民も単なる理想論ではなく、自分が考えていること、やってもらいたいことを実現するために、何が必要でそのためにどれくらいの予算が必要とされるのか、その予算を確保するために、どれくらいの税金を自分達が払えばいいのか、というようなことまで思いが及ばないといけない。そうしないと空理空論を繰り返すことだけで終わってしまう。民主主義というのは、理念であると同時に一つのプロセスでもあると思います。このプロセスにいかに多くの国民を巻き込み、単なる情緒や好み、趣向に基づく議論ではなく、みんなが納得できるような、それができれば日本国民のみならず、他国や、他国の人々が何を考え、何を心配しているのか、そういうことの推測をも交えた広い見地からの政策論議をやっていくべきだと思います。

工藤 まさに言論の役割が問われる局面でもあります。最後に、新年の言論NPOに何を期待されますか。

明石 いま私がいったことにつながりますけど、「世論」と「輿論」の違いということを言いたいと思います。単なる数字として現れた「世論」、これも大事ですが、これに留まらず、本当に一生懸命に物事を考えている人たちの流れといったものを「輿論」だとすれば、「世論」を「輿論」に高める努力をするべきだと思います。マスコミにすべてを任せずに、自分たちでものごとを考えていくことから始めようというのが、NPOの1つの理想だと私は思います。こういう動きをより幅広く、より進化させながら、日本国内の問題についても、外国との懸案についても、言論NPOがやっていただければ、大いに期待してよい日本になるのではないかと思います。

小林 僕は、言論NPOの年初にあたって、2009年は選挙の年だということを言いたいと思います。この選挙は非常に重要な選択で、ある程度、支持が決まったという人もいるかもしれないけど、自民党について、民主党について、それぞれの主要な政治家について、本当に一人一人がもう一度きちんと評価をし、その上できちんと責任のある決定をするべきだと思います。本当に我々が選ぶ人は、いずれ総理になるかもしれない、すぐになるかもしれない。そういう国を任せられる人を、我々が選ぶのだと。だからまさにsense of ownership。他人事ではない、本当に自己責任であり、当事者意識を持ち、選挙に臨むべきだと思っています。そういうことを言論NPOは強く呼びかけてほしいと思っています。

工藤 がんばります。本日はどうもありがとうございました。



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