【座談会】「外国人ジャーナリスト座談会」 海外から見た『小泉政権』

2001年12月27日

brooke_j011200.jpgジェームズ・ブルック (ニューヨーク・タイムズ東京特派員)
Brooke, James

イェール大学にてラテンアメリカ学学位 取得。UPI通信社、バークシャー・イーグル社フリーランス記者、タイムス社を経て、ニューヨーク・タイムス入社。ブラジル支局長を経て2001年より東京特派員。

gandow_a011200.jpgアンドレアス・ガンドウ (ハンデルスブラッド 特派員・北東亜局長)

高校卒業後、1971年-72年に来日し、身障者施設で指導・訓練にあたる。帰国後Berlin自由大学で経済学、日本学を学ぶ。ドイツ銀行に3年勤務後、Handelsblatt社に。国際経済部員、Japan Monitor誌編集長などを経て、1985年から現職。

sieg_l011200.jpgリンダ・シーグ (ロイター東京支局チーフ特派員)
Sieg, Linda L.

テンプル大学にて人類学学士号取得、東京大学法学部にて研究生、コロンビア大学にてジャーナリズム修士号、テンプル大学にて日米史歴史学博士号取得。フリーランス通 訳者、大学院助手を経て、ロイター特派員、東京支局チーフ特派員。

司会:
koll_j020710.jpgイェスパー・コール (メリルリンチ日本証券チーフエコノミスト)
Jesper Koll

ジョンズ・ホプキンス大卒。OECD、JPモルガン、タイガー・マネージメント・マネージング・ディレクターなど経て現職。著書に『日本経済これから黄金期』へ。

概要

日本を取材している海外ジャーナリストは小泉改革をどのように評価しているのか。第1回目の「外国人ジャーナリストによる言論NPO円卓会議」では、小泉改革の評価と課題をテーマに議論が行われた。小泉改革については、プラスの評価もあったものの、おおむね懐疑的な見方が示された。今後の課題としては、規制緩和など多岐にわたる課題が指摘されたが、なかでも外交戦略の戦略性の欠如が大きな問題であることを印象づけられた。

要約

国内的には、小泉改革に関しては賛否両論、さまざまな議論が戦わされているが、日本を取材している海外ジャーナリストは小泉改革をどのように評価しているのか、そして彼らは日本についてどのような記事を書いているのか。「外国人ジャーナリストによる言論NPO円卓会議」の第1回目は、このような興味深い論点から議論が始まった。

小泉改革のアジェンダについては、「(抵抗勢力に)徐々に乗っ取られ、先送りされ、あるいは減速している」(ガンドー氏)、「(首相には)ガッツもビジョンもなく、またもや『泥沼の10年間』に入っていこうとしている」(ブルック氏)、といった厳しい意見が寄せられた。一方でシーグ氏は、「改革に関しては懐疑的なままでいるのが正しい」としながらも、政策決定の面では大統領スタイルに近い形となっており、大きな前進を遂げたと評価している。また、米国中に蔓延している「中国熱」のせいで、日本に関する記事がいっそう書きにくくなっていると述べ、通商政策を変更し、日中自由貿易条約の締結に力を注ぐことが重要だと指摘している。シーグ氏によれば、日本が「真のリーダーシップの資質を実証するには、おそらくそれしか方法はない」という。

司会のコール氏は、現在の政策論争が現実的で建設的、そしてオープンな競争を伴うようになったことに着目し、「小泉首相は非常に正しい道をたどっているように思う」としている。また、この競争における最大の敗者の一人は既存のジャーナリストではないか、という指摘を行っている。

ジャーナリスト会議の第2の論点として、コール氏から「『ジャパニーズ・ドリーム』を蘇らせ、この国にもっと明るい未来をもたらすため」に何が必要か、という問題提起が行われた。この問いかけに対して、規制緩和、税制改革、選挙制度改革、中国との関係強化、社会保障システムの改善、移民受け入れなど多くの論点が出されたが、なかでも対中関係や靖国問題を含めた外交政策の戦略性の欠如に対する指摘は、日本人として危機感を募らせるものではないだろうか。全般的なビジョンをもたず、日々の政治的な都合を「機会便乗主義」で追いかけるような状況(シーグ氏)から、早く脱却しなくてはならない。


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 日本を取材している海外ジャーナリストは小泉改革をどのように評価しているのか。第1回目の「外国人ジャーナリストによる言論NPO円卓会議」では、小泉改革の評価と課題をテーマに議論が行われた。小泉改革については、プラスの評価もあったものの、おおむね懐疑的な見方が