政治に向かいあう言論

民主党政権9ヶ月の実績評価(総論)

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財政 :  24点 /100点
実  績
実行過程
説明責任
12点 /40
9点 /30
3点 /30

【実 績】

 民主党のマニフェストの骨格は初年度7.1兆円、4年後には年間16.8兆円の主要施策を実現するため、国の総予算207兆円を徹底的に効率化し、財源を捻出することにある。この計画は、初年度の22年度予算で修正に追い込まれ、そのままの形で毎年マニフェストの支出を増加させていくのは不可能なことが予算面ではっきりした。だが、民主党政権はマニフェストの抜本的な修正を説明しておらず、現時点でも低い評価にならざるを得ない。その内容にもいくつか問題がある。22年度は7.1兆円に対して実行できたのは、子ども手当の半額分と高校の無料化など3.1兆円に過ぎず、廃止を約束していたガソリン税などの暫定税率は維持するなど多くの修正が行われた。これに対する財源のねん出は事業仕分けや概算要求段階での削減などで3.3兆円を集めたが、そのうち1兆円は公益法人等の基金等の返納で一回限りの財源である。

さらに4年後の16.8兆円のマニフェスト支出のうち無駄の削減で9.1兆円を賄う計画だが、初年度で公共事業は目標達成したが、7.2兆円の削減を計画化していた人権費や庁費、委託費、施設費、補助金は逆に5.5兆円増加しており、無駄削減の計画も実質的に破たんしている。

 22年度予算の国債発行額は44.3兆円となり、政府が示した上限額を何とか守れたが、税収の37兆円を上回る借金発散の深刻な事態となった。税収の大幅な落ち込みもその背景にあり、一回限りの税外収入を工面してようやく予算編成を行えたのが実態だが、債務残高の上昇に伴う国債費の膨張(前年度比4,000億円)や毎年1兆円前後とされる社会保障費の自然増分の歳出削減努力も行っておらず、22年度予算は財政規律面で極めて問題であり、持続可能性の乏しい予算と言わざるを得ない。

 菅新政権は、「強い財政」を掲げ、財政再建にも乗り出す考えを示し、消費税の増税にも言及しているが、中長期的な再建目標にこの数年を繋げるためには、増税と同時に23年度以降も増加を続ける民主党のマニフェストの見直しが避けられない事態になっている。この時点では近く公表される「財政運営戦略」「中期財政フレーム」の内容が明らかではないが、それらが決断され、長期的な経済成長の道筋が描かれ、そうした路線の修正に関して合理的な説明がなければ、財政運営や経済運営の信認は十分に確保されない。その場合は実質的な評価は表記以上に厳しいものとなろう。

【実行過程】

 国家戦略室や行政刷新会議の設置など、政治主導の予算編成を実現するための組織上の整備は迅速に行われたが、パフォーマンスは高くない。刷新会議は無駄削減に寄与したが、政府の全ての支出を検証したわけでなく、国家戦略室は国家ビジョン作成や予算の骨格作成で中心的役割を果たしていない。2010年度予算編成では従来のスケジュールを一旦壊す形となったが、それに代わる新たな予算編成プロセスの姿がはっきりしていない。予算編成過程においては、閣僚間の見解の相違が表面化して政府としての方針が定まらず、最終的には党からの重点要望でしか決着がつかなかったのは前首相のリーダーシップの欠如を如実に示した。

【説明責任】

 早期から予算編成でマニフェストの施策を実行する意思が示されたこと、事業仕分けの公開が行われたことなどは評価できる。しかし予算編成プロセスでは政権としての説明責任をほとんど果たしていない。党の要望を「国民の声」というならその根拠を示すこと、政府案が決まるまでの重点施策のブレやマニフェスト施策の修正の根拠などでは説明が極めて不十分。23年度の編成を考えれば、財政規律の維持とマニフェスト施策の両立は不可能な状況であり、マニフェストの抜本的な見直しと税制改革の組み合わせが必須である。菅新首相の所信表明演説では「財政運営戦略」「中期財政フレーム」の6月中に策定に言及はしたが、税制の改革でも一般的な表現にとどまった。その後、消費税の増税に言及はし始めたが、マニフェストの修正やその理由に関する合理的な説明はまだなされていない。

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